どんなところがどう違う?日本と海外の日本語学習者

こんにちは、SenSee Mediaライターの安達です!

私は現在海外で日本語を教えていますが、約10年程前に日本語教師としてのキャリアをスタートさせたのは日本でした。日本語学校で教えていたので、私にとって日本語学習者といえば、「日本の大学や専門学校に進学するつもりの18~19歳の中国人や韓国人(時々モンゴル人)」といったイメージでした。

そのため、初めて海外(シンガポール)に赴任する前は、一体どんな人が何の目的で日本語を勉強しているのだろう?と不思議に思っていました。結局何も分からないまま日本で使っていた教科書と教材だけを持って赴任したんですが、行ってみて初めて「私が日本で教えてきた人達と違う!」と衝撃を受けました。

そこで、今回は海外の日本語学習者について、シンガポールの語学学校や中国の大学を中心に日本の日本語学校の学生と比較しながら書いていきたいと思います。海外の学習者を指導する際に、特に気を付けた方がいいことなども具体的に説明するので、これから海外で教える予定の人は参考にしてください!

目次

海外の日本語学習者

N1やN2(当時は日本語能力検定試験でした)対策の教科書を抱え「めざせ!全員合格!」と意気込んでシンガポールに赴任した私を待っていたのは、「N1?試験?旅行で役立つフレーズさえ覚えられればいいんだけど」という学習者でした。

クラスには小学生から社会人、それに定年を迎えた60代以上の人など幅広い年齢層の学習者がいましたが、私が日本でずっと教えてきた「日本での進学を目指す学習者」はいませんでした。

その後、中国に渡り大学で日本語を教えるようになりました。大学には日本で進学するために日本語を勉強する学生がいましたが、それでも日本の留学生とはかなり違っていました。

どうして日本語を勉強しているの?

日本と海外の日本語学習者の大きな違いとしてまず説明したいのが、それぞれの学習目的です。

最近よくテレビ番組で日本に来た外国人や、世界各地で日本語を勉強する外国人が取り上げられるようになったため、「日本語は世界中で大人気で学習する人口も多い」と勘違いしてしまう人もいるかもしれませんが、世界的に見れば日本語はまだまだマイナーな言語です。英語やスペイン語を第二言語として学ぶ人が多い中、どうして日本語を勉強するのでしょうか?

日本の日本語学校の留学生は日本での進学を目標としている人がほとんどです。そのため彼らは大学や専門学校、あるいは大学院と、進学先はそれぞれですが入試に合格するために勉強しています。

海外でももちろん日本での進学を目指して勉強している人もいます。大学で日本語を専攻している学生がそうです。その他、現地の日系企業での就職が目標だという学生もいます。また、「特に目標はないけど英語科の試験に落ちたから仕方なく日本語を専攻している」という学生も少なからずいます(^^;

シンガポールの日本語学校には幅広い年齢層の学習者がいました。そのため「日本のサブカルチャーが好き」「日本に旅行に行きたい」「日系企業に勤めていて、会社から勉強するように言われた」等々、彼らの学習目的も様々でした。

では、どんなところが違うのでしょうか?

それぞれの日本語レベルは?

日本の日本語学校で勉強している人達は来日前に基本的な日本語を母国で学習していることがほとんどです。来日時点ですでにひらがなが読めたり、日本語で挨拶ができたりします。

一方、海外の学習者は初めて日本語を勉強するという人が多いです。そのため初級のクラスはひらがなの読み書きから指導することも。初めのうちは日本語での会話ができない人も多いので、直接法(日本語だけで日本語を教える)での授業は難しいかもしれません。

シンガポールでは英語を媒介語とした間接法で授業を行なっていましたし、中国では文法などの基礎的な項目は中国人の先生が中国語で教えていました。

しかし、「海外の日本語学習者は全員、日本語が全く分からない状態から始めるのか」というと、そうではありません。初級クラスの学生でも流暢に日本語が話せたり、またずば抜けて聞き取りができる人もいました。シンガポールでも中国でも、クラスに1人2人はいました。しかし彼らには日本語学習歴がありません。「日本語を勉強するのは今回が初めて」と言います。

一体なぜ勉強したこともない日本語を上手に話せるのでしょうか?答えは「アニメ(ドラマ)を見て覚えた」です。独学でそこまで上手に話せるようになるならいいじゃん!と思う方もいるかもしれませんが、そのような学習者を教える上で注意しなければいけないことがたくさんあるんです。具体的な注意点についてはまた後述します!

海外の日本語学習者:どんな授業が効果的?

私たち日本語教師は学習者のニーズに沿った授業を提供しなければなりません。日本の大学進学が目的の学生に対しては日本留学試験やN1・N2などの試験対策、また面接対策の授業をすることが多いと思います。

では、海外の学習者に対してはどんな授業を行なえばいいのでしょうか?先ほども書いた通り、日本の留学生に比べると彼らはより多様な目的を持って日本語を勉強しています。個人レッスンなら個別にカリキュラムを組んで個々人に合った授業ができますが、クラス単位の授業だとそうはいきませんよね。

そこで、学習者の多様なニーズに応えられる授業を作るためのポイントを説明したいと思います!

海外で日本語指導:ポイントは「インプット」

これまで海外の日本語学校や大学で日本語を教えてきて私が感じたのは、「日本語を習得したらできること」を紹介することが重要だということです。学習者の中には日本に行ったことがない、日本人と接したことがない、日本について何も知らない、という人も多くいました。私たち日本語教師は、彼らにとって「日本についての情報源」なのです。それも、正しくリアルタイムな情報です。

と言っても、何も通常の授業を大幅に変更して特別に日本情勢や日本文化についての授業をしろということではありません。

例えば、例文や練習問題などを作る時に日本の観光地の名前を入れたり、新しい文法を導入する際の設定場面にアニメのキャラクターを使ったり、そういった小さいことで十分です。それについて詳しく掘り下げる必要はありません、「学習者が知らない情報をちょっとだけ紹介する」という気持ちでさらっと説明しましょう。

観光地やアニメなど、元々興味があって知っていたという学習者にとっては強く印象に残るでしょうし、全然知らなかった学習者にとっては日本の好きなものが増えるきっかけになるかもしれません。

私も海外の初級クラスでは特にこのインプットに気をつけて授業をしています。学習者のアウトプット(主に発話)ももちろん重要ですが、学習を始めたばかりのクラスでは学習者のアウトプットは「意味が通じればOK!」ということにしています。初級ですから話す時に小さな間違いは当然あります。が、厳しく指摘をしたり訂正をしたりせずに、インプットに重点を置いて指導しています。

ですが、1つだけあえて訂正していることがあります。それは先ほど少し書いた「アニメやドラマを見て覚えた日本語」です。

彼らの日本語は一見上手に聞こえますが、基礎的な文法から勉強したわけではないので時々不自然な発話をすることがあります。例えば、日本のドラマで「~って(例:やっぱり映画って面白いね)」という言葉を聞き、”は”を使うべき場面でも”って”を使っている学生がいました(「私は学生です」というところを「私って学生です」のように)。

もっと極端な例だと語尾にいつも「~ってばよ」をつけて話していた学習者もいました。NARUTOですね。冗談のように聞こえるかもしれませんが、彼らのようにドラマやアニメでしか日本語に接する機会のなかった人達は、そこでの日本語は絶対的に正しいと思って使い続けてしまうんです。

そのような学習者の発話に対してはなあなあにせず、どうしてそれが不自然なのか、正しい言い方は何なのかを説明しています。

海外の学習者がインプットを増やすために日本語教師がすべきこと

海外で日本語を教えていると、時々その地域に日本人は自分しかいないという状況になることがあります。その地域でたった一人の”外国人”ということもあります。

そう言われると責任重大だと感じてしまうかもしれませんが、まずはご自身のアンテナを広く張って、自分でも好きになれるものをたくさん見つけましょう。自分の好きなものを学習者におススメする、といった感じで紹介しましょう。

どんなに小さなことでも、海外の学習者にとっては貴重な情報です。彼らにとってそれが日本語を学ぶ大きな目的につながるかもしれません。

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