使役受身って何?―わかりやすく教えるポイントは「意味」と「形」!

日本語教師の皆さん、こんにちは。

皆さんは、使役受身って教えたことありますか。

筆者の場合は、『みんなの日本語』第48課で使役を教えた後、クラスのレベルとかカリキュラムの状況によって、教えるときあり、教えないときあり……。ケース・バイ・ケースです。

でも、N3以降の日本語能力試験対策でも使役受身は出題されます。そのときになって、「使役受身、初めて見ました」状態では、教師も学習者も一苦労。

『テーマ別 中級から学ぶ日本語』第8課でも、使役受身は学習しますが、中級の段階で他の文型と一緒にやろうとすると、どうも学習者の理解度がいまいち。

「『みんなの日本語』時代のほうが、みんな使役受身上手だったよね?」って、授業中に思ったこともあります。

やっぱり、初級の使役が終わった段階で、使役受身も入れておくに越したことはありません。

そこで今回は、使役受身の形の作り方から意味と練習方法まで一気にご紹介しちゃいます。

目次

使役受身とは?知っておくと得な理由

皆さんは使役受身って聞いたことがあるでしょうか。使役受身って一体何?

使役受身とは、簡単に言うと、「使役に受身を足したもの」

ということになります。

使役を使った文とは、例えばこういったものです。

・先生は 学生に 漢字を 10回ずつ 書かせました

これに受身をプラスすると、こうなります。

・学生は 先生に 漢字を 10回ずつ 書かせられました。(「書かされました」も可)

これが使役受身文です。

どうでしょうか。日本語話者であれば、日常的によく使う表現ですよね?

「私が子供のときは、毎日塾に行かされて、大変だったよ。」とか、「アルバイト先では、いつもそうじばかりさせられるんです。」とか、「飲み会で、無理やりお酒を飲まされたり、歌を歌わされたりしました。」とか。

日本語話者がよく使い、日本語能力試験にも出題される使役受身。外国人学習者にとっても、重要な学習項目ということになりますね。

使役受身形どうやって作るの?使役受身形の作り方徹底解説

では、使役受身形ってどうやって作るのでしょうか。

使役受身形が外国人学習者にとって難しい理由は2つです。

  • ①形が長くて、うまく発音できない
  • ②縮約形が複雑

でも、大丈夫。学習者の負担が少なくなるよう、順を追って教えていきましょう。

使役形を教えるときにも、学習者にとって負担の少ない順番がありましたよね?

使役形の場合は、Ⅱグループ動詞→Ⅲグループ動詞→Ⅰグループ動詞の順番に教えるのが、学習者にとって負担が少ないです。くわしいことは、筆者の記事『使役の教え方―自動詞と他動詞に気をつけて効果を上げる!』を参考にしてください。

使役受身形の場合は、次のような順番で教えます。

STEP
Ⅱグループ動詞とⅢグループ動詞
STEP
Ⅰグループ動詞
STEP
特別な動詞

それでは、早速この順番にしたがって、使役受身形の作り方を見ていきましょう。

使役受身形の作り方①Ⅱグループ動詞・Ⅲグループ動詞編

使役受身形の作り方の中でも、いちばん難易度の低いのが、Ⅱグループ動詞とⅢグループ動詞の使役受身形です。

ここでは、『みんなの日本語』にならって、動詞のます形をもとに、使役形、使役受身形を一覧表にしてみます。

使役受身形を教えるときは、同時に使役形の復習をすることをおすすめします。

使役形が作れれば、Ⅱグループ動詞とⅢグループ動詞の使役受身形は簡単ですね。

使役形の「ます」を取って、「られます」を足せば使役受身形になることがわかります。

使役受身形の作り方②Ⅰグループ動詞編

それでは、Ⅰグループ動詞の場合は、使役受身形をどうやって作るのでしょうか。

Ⅰグループ動詞の使役受身形がⅡグループ動詞・Ⅲグループ動詞に比べて難しい理由は、「縮約形が存在するから」です。

Ⅰグループ動詞の場合、使役形の「~せます」を「~せられます」に変えれば、使役受身形になります。
さらに、「せられます」は「されます」に縮約することができます。

それで、Ⅰグループ動詞の場合は、「書きます」→「書かせられます」、「書かされます」のように、使役受身形が2通り作れるのです。

ただし、例外として、「ます」の前が「し」であるⅠグループ動詞の使役受身形には縮約形がありません。

例えば、「話します」の使役受身形は「話させられます」だけです。「話さされます」とは言いません。

使役受身形の作り方③特別な動詞編

Ⅰグループ動詞、Ⅱグループ動詞の中には、使役受身形にしたときに特別な動詞がいくつかあります。

使役受身形が特別というよりは、「起きます―起こします」のようにペアになる使役動詞があるといったほうが正確ですね。

これらの動詞が『みんなの日本語』の第何課の語彙なのかを見ておきます。

  1. 起きます(『みんなの日本語』第4課)
    1.  起こします(未習語彙)
  2. 寝ます(『みんなの日本語』第4課) 
    1. 寝かせます(未習語彙)
  3. 着ます(『みんなの日本語』第22課)
    1.  着せます(未習語彙)
  4. 見ます(『みんなの日本語』第6課)
    1.  見せます(同第14課)

④の「見ます―見せます」以外の使役動詞は、『みんなの日本語』では未習語彙です。

使役受身形を『みんなの日本語』の学習段階で教える場合は、「こんなのもあるよ」くらいで、簡単に紹介するのにとどめておいたほうがよさそうです。

使役受身っていつ使うの?意味と形を紹介します

それでは、使役受身文って一体どんなときに使うのでしょう。

使役受身文を使うときとは、ズバリこんなときです。

他の人からの圧力をうけて、自分がした「嫌なこと」について話したいとき

ここでは、使役文と使役受身文の違いから、使役受身文の構造まで、解き明かしていきます。

使役と使役受身の違いとは?答えは「ヴォイス」にあり

次の3つの例文を比べてみてください。

  • ①Aくんは 野菜を 食べました
  • ②母:私は 息子に 野菜を 食べさせました。(使役文)
  • ③息子:私は 母に 野菜を 食べさせられました。(使役受身文)

まず、①の例文と②の例文を比べてみましょう。

①の例文は「野菜を食べた」という事実だけを言っているのに対して、②のように使役文にすると、「ああ、『私』(=母親)の息子は野菜が嫌いなんだろうなあ」ということまで伝わってきます。

野菜嫌いの息子の健康を考えて、無理やり野菜を食べさせる母の苦労がしのばれますね。

③の例文は②の「母」と「息子」の立場が入れ替わっています。

それだけのことで、今度は「息子」の心情が手に取るように伝わってきませんか。

息子は「野菜が嫌いなのに」、「母に言われてしぶしぶ」食べたんだろうなあ…なんていう。

②と③の違いとは、「野菜を食べる」という事実を「母」の立場から捉えるか、「息子」の立場から捉えるかによって生じる違いです。

このような立場を表す表現のことを「ヴォイス」といいます。

使役受身文は、③の息子のように、「自分はしたくないのに、他人(ここでは母親)の圧力を受けて、いやいや行動したこと」を表現したいときに使います。

使役受身にできる文VSできない文―鍵は「強制」

使役文には、「強制」のほか、「許可」や「感情の誘発」という意味もあります。

  • ①先生は 学生に 漢字を 10回ずつ 書かせました。(強制)
  • ②母は 子供に 好きなおもちゃを 買わせました。(許可)
  • ③(待ち合わせの時間に遅刻して、)彼氏は 彼女を 怒らせました。(感情の誘発)

①~③のうち、使役受身文にできるのは基本的に「強制」だけです。

  • ④学生は 先生に 漢字を 10回ずつ 書かせられました。(縮約形:書かされました)
  • ⑤子供は 母に 好きなおもちゃを 買わせられました。(縮約形:買わされました)
  • ⑥彼女は 彼に 怒らせられました。(縮約形:怒らされました)

⑤の例文と⑥の例文は変な感じがしますね。

⑤の例文は、「好きなおもちゃ」って言っているのに、使役受身文にすると、「しぶしぶ買わされたのかな」という感じになってしまっています。

⑥の例文のように、「怒る」は使役受身文にはできません。

ただし、「君にはびっくりさせられたよ」の「びっくりする」のように、「感情の誘発」のうち、なかには使役受身文にできる動詞もあります。

  • 「強制」は使役受身文にできる
  • 「許可」は使役受身文にできない
  • 「感情の誘発」は動詞によって使役受身文にできる場合とできない場合がある。

使役文が全部使役受身文にはできないことを押さえておきましょう。

使役受身の教え方―助詞もセットで覚えよう

使役文の場合は、動詞が自動詞か他動詞かによって、助詞が違うということを、先日の記事(『使役の教え方―自動詞と他動詞に気をつけて効果を上げる!』)でご紹介しました。

例文(1) 母は 息子 歯医者へ 行かせました。(「行く」は自動詞)

例文(2) 彼女は 彼氏 荷物を 持たせました。(「持つ」は他動詞)

これらの例文を使役受身文にすると、どうなるでしょうか。

例文(3) 息子は 母 歯医者へ 行かせられました。(縮約形:行かされました)
例文(4) 彼氏は 彼女 荷物を 持たせられました。(縮約形:持たされました)

そうです。使役受身文になると、他動詞、自動詞関係なく、助詞は「に」を使うのです。

これは学習者にとっても、教師にとっても朗報ですね(笑)

使役受身文を教えるときは、このように助詞「に」とセットで教えましょう。

使役受身どんな練習が効果的?3つのステップ大公開

ここまで使役受身形の作り方と意味について見てきました。

最後に、どんな練習をしたら、学習者は使役受身文を作れるようになるのかをご紹介します。

使役受身文の難しいところは、以下の2点です。

  • 使役受身形が難しい(形を作れても、長くて発音するのが大変)
  • 「だれがその行為をするのか」行為者が分かりにくい(使役文をさらに受身文にしていることからくる混乱)

ここでは、この2点を押さえた練習方法をご紹介します。

使役受身の練習①まずは口慣らしをしっかりしよう

何をするにしても、準備は大切です。準備体操をしないで、いきなり水に飛び込んだら、おぼれますよね?

学習者が使役受身文の海でおぼれてしまわないように、まずは使役受身形が着実に作れるように練習しましょう。

STEP
①使役受身形を難易度順に作る練習

 Ⅱグループ動詞・Ⅲグループ動詞→Ⅰグループ動詞

 ※特別な動詞については、無理に練習しなくてもいいと思います。

STEP
②慣れてきたら、①の動詞をランダムにして練習

クラス全員で言う練習をしたり、一人一人当てて練習してみたり、バリエーションをつけてみてください。

使役受身の練習②絵カードを使って行為者・非行為者をはっきりさせよう

今練習している文法が一体どんな場面で使われるのかを理解するためには、絵カードを使うのが効果的です。

練習(1) ( ① ) は ( ② ) に 教室の そうじを させられました。

解答例 ①:学生
    ②:先生

練習(2) ( ① ) は ( ② ) に 1時間も 待たせられました。

解答例 ①:彼氏
    ②:彼女

このように絵カードを使えば、使役受身文が使われている場面がよく分かります。それに、学習者が行為者と被行為者がそれぞれ誰なのか、きちんと理解できているかどうかも確認できます。

使役受身の練習③学習者の体験を聞き出そう

使役受身の練習のハイライトは、「学習者の体験を話す」練習です。

やっぱり「自分の体験を習いたての文法を使って話す」って、学習者にとって「日本語が話せるようになっている」という達成感が味わえて、文型練習のまとめにぴったりの練習だと思います。

使役受身文の場合は、「他人の圧力によって嫌々やったこと」という、嫌~な実体験を話すことにはなってしまうのですが(笑)

教師:子供のとき、両親(または先生)に言われて、嫌だけどしたことはありますか。

学習者:はい、私は毎日お風呂のそうじをさせられました

このように、自分の体験を使役受身文で話すという練習を、使役受身の練習のまとめにしてみてはいかがでしょうか。

今回は使役受身について、ご紹介してきました。

ぜひ皆さんも授業の参考にしてくださいね。

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