【「~と」「~たら」「~ば」の使い分け】『みんなの日本語』ではこう教えよう!

皆さん、こんにちは。

突然ですが、皆さんは「~と」、「~たら」、「~ば」ってどのように教えていますか。
違いは何?って学習者から質問が飛んできたら…すぐに答えられますか。

「~と」「~たら」「~ば」って、日本語ネイティブは無意識のうちに使い分けている文型ですが、外国人学習者にとっては使い分けが難しい文型の代表格ですよね。

筆者は、中級クラスの授業中に、急に「~と」「~たら」「~ば」の使い分けを聞かれて、タジタジになったことが……。その日の授業内容とはまったく関係ない!とはいえ、その学習者にとっては、ず~っと気になり続けている日本語の疑問点だったんでしょうね。

教科書によって、学習の順序や教える内容に差があるかと思います。そこで、今回は『みんなの日本語』にしぼって、「~と」「~たら」「~ば」の教え方について考えてみたいと思います。

筆者の失敗談も、恥を忍んでご紹介しちゃいますね。

目次

「~と」「~たら」「~ば」『みんなの日本語』では何をどこまで教えるの?

「~と」「~たら」「~ば」って、それぞれいくつかの用法があります。でも、教科書によって提出順序(どの順番で学習するか)や教える内容(どの用法を教えるか)はいろいろ。

全部をいっぺんにご紹介はできないし、かえっていろんな情報があふれてごっちゃごちゃ…になりそう。そこで、今回はあくまでも『みんなの日本語』で教える場合に限定します!

『みんなの日本語』での「~と」「~たら」「~ば」の提出順序は以下の通りです。

  1. 「~と」(初級第23課)
  2. 「~たら」(初級第25課)
  3. 「~ば」(初級第35課)

「~と」、「~たら」、「~ば」の使い分けについて考える前に、それぞれの用法について、『みんなの日本語』ではどう扱っているのか、簡単に見ていきましょう。

「~と」の教え方―機械の使い方、道案内

「~と」の基本的な用法は以下の通りです。

・反復的・恒常的に成り立つ依存関係を表す。

具体的には自然現象、機械の使い方、習慣などなどを言うときに使える文型なのですが、『みんなの日本語』では、以下の2つの使い方にしぼっています。

①機械の使い方

例)この つまみを 右へ 回す、音が 大きく なります。

②道案内

例)銀行はどこですか。

…あの 交差点を 右へ 曲がる、左に あります。

「~と」の後には意志表現が来ないという制限があります。でも、「機械の使い方」や「道案内」だけを教えていると、学習者から意志表現を後件に持って来るような誤用は出てきません。

だから、ここであえて「~と」に使い方の制限があることを教える必要はないと思います。

「機械の使い方」や「道案内」で使う語彙をしっかり導入して反復練習をし、学習者が使えるようにしていくのが、第23課を教えるコツです。

「~たら」の教え方―仮定条件、確定条件

『みんなの日本語』の場合、「~たら」は以下の2つを教えます。

①仮定条件(もし)

例)お金が あったら、パソコンを 買いたいです。

②確定条件(後で)

例)授業が 終わったら、家に 帰ります。

実は、第23課で学習した「機械の使い方」や「道案内」も「~たら」で表すことができます。

例)この つまみを 右へ 回したら、音が 大きく なります。

例)銀行はどこですか。
…あの 交差点を 右へ 曲がったら、左に あります。

でも、『みんなの日本語』第25課の練習には「機械の使い方」や「道案内」は出てきません。

教えるクラスの状況によっては、「『~たら』は『~と』と同じように使える」ことを教えるという選択肢もアリかも……でも、筆者だったらこの段階でそこまで教えません。

「シンプル イズ ベスト」。教科書と違うことを教えて、学習者を混乱させたくないからです。

「~たら」は「動詞の『た形』+ら」、「い形容詞-かったら」、「な形容詞-だったら」のように、形が複雑。形の練習をしっかりして、「仮定条件」と「確定条件」にしぼって教えたほうがいいと思います。

「~ば」の教え方―『みんなの日本語』での用法を分析してみよう

「~ば」の用法ですが、『みんなの日本語』の教え方の手引きには「ある事柄が成立するためには『~ば』の条件が必要であるという関係を示す」とあります。

『みんなの日本語』ではどんな例文が提示されているのでしょうか。

①ロボットが 動かないんですが。→「動け」と 言え、動きますよ。
②まっすぐ 行け、スーパーが あります。
③機会が あれ、アフリカへ 行きたいです。
④秋に なれ、木の 葉の 色が 変わります。

あれ?何だか見覚えがありますね。そうです。①「機械の使い方」と②「道案内」は第23課「~と」の、③「仮定条件」は第25課の「~たら」と同じ使い方です。

第35課「~ば」は「~と」や「~たら」を含めた集大成と言えるんです。

第35課の教え方ですが、まずは条件形が初出なので、形の作り方をしっかり確認しましょう。

「~と」「~たら」「~ば」使い分け―『みんなの日本語』ではこう教えよう

「~と」、「~たら」、「~ば」の使い分けはいつ教えたらいいのでしょうか。

答えはズバリ、「第35課『~ば』を教えるとき」です!

『みんなの日本語』の場合、第23課「~と」と第25課「~たら」は用法がしぼられていて、この段階で学習者が混乱することはありません。

ところが、第35課「~ば」になると、「~と」や「~たら」と同じ用法がミックスされて出てきます。

「~ば」って「~と」や「~たら」とは何が同じで何が違うの?学習者がそう思ったところで、使い分けも一緒に教えるのがベスト。

それでは、どうやって教えたらいいの?ここからは「~と」、「~たら」、「~ば」の使い分けの教え方を一緒に見ていきましょう。

「~ば」は「~と」「~たら」の集大成―『みんなの日本語』本冊の導入

「~と」、「~たら」、「~ば」の使い分け、筆者の場合は第35課「~ば」の導入時から段階を踏んで教えていきます。

まずは文型の導入をしてから、『みんなの日本語』本冊の練習へ…というのが一般的な授業の流れだと思います。

『みんなの日本語』本冊第35課の練習は、動詞または形容詞・名詞という品詞で練習が分けられてはいますが、「機械の使い方」も「仮定条件」も「確定条件」も全部ミックスされているんですよね…

ですから、導入の段階で「~ば」の用法を、しっかり確認しておきたい。「~ば」の用法をしっかり確認してから教科書の練習をしたほうが、学習者も混乱しないだろうというのが筆者の考え。

そこで、筆者の場合は、『みんなの日本語』本冊の練習に入る前の文型導入時に、「~と」、「~たら」の復習をさらっとしつつ、「こんな言い方もあるんだよ」という感じで「~ば」の4つの用法を紹介します。

使い分け一覧表が便利!『みんなの日本語文型練習帳』を活用しよう!

『みんなの日本語』の補助教材『みんなの日本語文型練習帳』には、「~と」、「~たら」、「~ば」の使い分け一覧表があります。

どんな一覧表なのか、簡単にご紹介するとこんな感じです。

スクロールできます
~と~たら~ば
ボタンを押す、水が出ます。ボタンを押したら、水が出ます。ボタンを押せ、水が出ます。いつも
右へ曲がる、郵便局があります。右へ曲がったら、郵便局があります。右へ曲がれ、郵便局があります。
日本語で話したら、上手になります。日本語で話せ、上手になります。もし
休みになったら、国に帰ります。あとで

「いつも」、「もし」など、初級の学習者にも分かりやすい言葉遣いでシンプルにまとめられているのが嬉しい!

例文がないところは、その文型には該当する用法がないことを表します。

一覧表にすると、「~と」「~たら」「~ば」には重なる用法があること、でも完全に用法が同じではないことが一目瞭然。

実際は例文の一部がかっこで抜かれていて、学習者が書き込む欄があります。練習をしながら、「~と」、「~たら」、「~ば」の整理をしていきましょう。

最後は『みんなの日本語標準問題集』ー問題形式で使い分けをチェック!

「~と」、「~たら」、「~ば」最後のまとめにはぜひ『みんなの日本語 標準問題集』を。

『みんなの日本語 標準問題集』には「~と」、「~たら」、「~ば」の使い分けをチェックする問題が設けられています。

例)国に{( )帰ったら、( )帰れば}、友達に会いたいです。

使い方が正しければ〇を、誤用であれば×をつけるという練習です。

『標準問題集』の練習をするためには、「~ば」の使い方の制限を学習者に教える必要があります。

「~ば」の使い方の制限

確定条件(あとで)以外は「~たら」と同様の使い方をするように見える「~ば」ですが、使い方には制限が。「~ば」の使い方の制限とは、以下の2点です。

  1. 後件に意志表現が使えない
  2. しかし、例外的に後件に意志表現が使える場合がある

「~ば」①「後件に意志表現が使えない」ので、例えば次のような例文は誤用となります。「~たら」は後件に意志表現を持って来ることができます。

  • ×日本へ行け、すしを食べたいです。
  • 〇日本へ行ったら、すしを食べたいです。

②「例外的に意志表現が使える場合」とは次のような場合です。

1)前件と後件で主語が違うとき

  • バスが来なけれ、歩いて行きましょう。
  • バスが来なかったら、歩いて行きましょう。

  ※後件の主語は「私たち」

2)前件が「状態」を表しているとき

  • お金があれ、旅行がしたいです。
  • お金があったら、旅行がしたいです。

「~ば」の使い方の制限を教え、例文を提示したら、『みんなの日本語標準問題集』の確認問題を解いていきましょう。

『みんなの日本語』ではここに注意!「~ば」の例文の落とし穴

ついこの間も『みんなの日本語』で「~ば」を教え、『みんなの日本語標準問題集』の練習を念頭に授業を組み立てていった筆者ですが…あるミスを犯してしまいました。

筆者が引っかかったのは、文法書にあったこんな例文です。

例)ワンさんが来れ、パーティーを始めましょう。

前件の主語が「ワンさん」、後件の主語が「私たち」で主語が違うので、後件に意志表現が来ていても正しい文であるという説明だったのですが…

実は『みんなの日本語標準問題集』にも似たような問題があります。

例)ミラーさんが{( )来れば、( )来たら}、会議を始めましょう。

正解は「来れば」は誤用、「来たら」は正解。う~ん、文法書と違う。

以前、チームティーチングで他の先生が前日に「~ば」の導入から練習までしてくださり、その翌日に筆者が『みんなの日本語標準問題集』の答え合わせをしたことがあります。そのときは迷いなく「『来れば』は誤用!」と思っていた筆者…

それが、1年後にやはりチームティーチングで今度は筆者が「~ば」の導入から練習までをすることに。いざ「~ば」の導入から授業を組み立てて教えてみると、まんまと文法書の例文に引きずられてしまいました。

『みんなの日本語』では、「ミラーさんが来たら~」は確定条件(あとで)の用法で、「来れば」は誤用ということになるのでしょう。

筆者の説明をしっかり聞いていた学習者たちは、『みんなの日本語標準問題集』の答え合わせでもちろん大混乱…

「先生の話を真面目に聞いてくれてありがとう。でも、今回は先生が間違えました。ごめんなさい。もう一度正しい例を言うから、メモを直してね。」

素直に謝ってその場を乗り切り、しっかり教科書分析をして授業を組み立てなければ、文法書を参考にしても鵜呑みにはせず、自分でもきちんと考えなければと反省したのでした。

「~と」、「~たら」、「~ば」の教え方と使い分け、いかがだったでしょうか。教科書ごとに教え方も変わってきますよね。『みんなの日本語』で教える場合の一例として、ぜひ参考にしてみてくださいね。

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる