使役の教え方―自動詞と他動詞に気をつけて効果を上げる!

日本語教師の皆さん、こんにちは。

皆さんは使役ってどんなふうに教えていますか。

『みんなの日本語』であれば第48課で学習する、初級日本語の中でも難易度の高い学習項目だから、「教えるの苦手だなあ」と思う方も多いはず。

筆者もチームティーチングで使役を教える日が当たってしまうと、きゅっと身が引き締まり、肩の荷がずーんと重くなるのを感じます(笑)

中級以降の日本語教育能力試験対策問題で、必ず出題されるのも、使役。

初級の段階で確実に教えておかなければ……。その重圧たるや、もう(笑)

そこで今回は、筆者が何度も教えて検証した、使役の効果的な教え方をご紹介しちゃいます。

ポイントを押さえれば、使役の教え方はばっちり!ですよ。

では、さっそく筆者と一緒に使役の教え方を見ていきましょう。

目次

動詞の使役形の作り方:教え方の順番とは?

使役の導入を考える前に、動詞の使役形の作り方を見ておきましょう。

学習者にとって、使役形ってこういうところが難しいんです。

  • ①Ⅰグループ動詞を「さ入れ」化してしまう
  • ②使役形「~(さ)せる」と受身形「~(ら)れる」が混ざる

このような事態を招かないためには、以下のような方法が効果的です。

  • 動詞のグループごとに、難易度の低い順から形を教える
  • 形を教えた後は、口頭練習をしっかりする

それでは、それぞれのポイントについて、見ていきましょう。

動詞の使役形、Ⅱグループ、Ⅲグループ、Ⅰグループの順に教えよう

動詞のグループごとの使役形の作り方は、以下のようになります。

『みんなの日本語』にならって、動詞のます形からの作り方をご紹介します。

こうやってまとめてみると、Ⅰグループ動詞の使役形は母音も変化して、他のグループより難易度が高いのは一目瞭然。

Ⅲグループ動詞は「来ます」と「します」の二つなので、丸覚えですが、こちらも「ます」の前の母音が変化していますね。

いちばん難易度が低いのがⅡグループ動詞。「ます」を取って「させます」に変えればOKです。

新しく動詞の形を教えるときは、学習者の負担を軽くするために、難易度の低い順番に教えるのが効果的。

ですから、①Ⅱグループ→②Ⅲグループ→③Ⅰグループの順に教えていきましょう。

Ⅰグループ動詞を教えるときは、次のことにも注意。

※ます形の「ます」の前の母音が「い」の場合、母音は「あ」ではなく「わ」に変化します。

例)「てつだいます」→×「てつだあせます」
           〇「てつだわせます」

これは、動詞のない形も同じですね。

動詞の使役形、形を定着させる方法

一通り形の作り方が分かったら、使役形がすぐに口をついて出るように、練習をしていきましょう。

使役形って、ます形よりも形が長くなって学習者の口がまわらなくなるうえに、受身形とも形が似ていて混ざりがち。

使役形のフラッシュカードを準備しておき、授業では何度も何度も繰り返して練習をしましょう。

  1. まずはⅡグループ→Ⅲグループ→Ⅰグループの順に使役形を作る練習
  2. 動詞のグループを混ぜて、ランダムに使役形を作る練習

クラス全体で言う練習をしたり、一人一人当てたり、いろいろ試してみてください。

使役表現、助詞のポイントは自動詞・他動詞

ここからは、使役形を使った文について見ていきます。

例文(1) 部長は Aさん 出張させました。
例文(2) 部長は Aさん 資料を コピーさせました。

どちらも使役形を使った文ですが、「Aさん」の後に来る助詞が違いますね。

使役形を使った文では、このように助詞が「を」になる場合と、「に」になる場合があります。

じゃあ、どういうときに「を」を使い、どういうときに「に」を使うの?

答えは「自動詞と他動詞の違い」です。

自動詞・他動詞の復習から始める理由とは?

筆者の場合は、少しだけ使役文の意味を導入した後に、自動詞・他動詞について触れることにしています。

その理由は、学習者が自分でルールに気づくように、授業の流れを持って行きたいから。

そうすることで、できるだけ学習者主体の授業ができるように、学習者が自分から目的を持って学習に臨めるようにできるのではないかな、と考えているからです。

それに、教師が一方的にルールを教えるよりも、学習者が自分でルールを見つけたほうが、きっと学習者の中でルールが定着しやすいはず!

筆者は、最初に使役文を導入するとき、わざと助詞「を」と「に」を混ぜて、使役文を導入します。

すると、

どうして助詞が『を』のときと『に』のときがあるんですか?

学習者のほうから質問が飛んできます。

そこで、動詞に注目させると、勘のいい学習者は

自動詞と他動詞ですね!

となるわけです。

この作業を飛ばして使役文の練習に入ってしまうと、助詞がぐちゃぐちゃになってしまいます。

使役文の練習をするとき、前作業として自動詞・他動詞の復習は必須です!

自動詞・他動詞の見分け方とは?

自動詞・他動詞の復習といっても、例えば『みんなの日本語』第29課にさかのぼって、「開く―開ける」のような動詞を一つ一つ復習ということではありません。

例文(3) 私は 子供に 窓を 開けさせました。(「開ける」の使役文)
例文(4) 私は 窓を 開きさせました。(「開く」の使役文)

例文(3)のような使役文は可能ですが、例文(4)のような使役文は存在しません。

存在しないのに、「開ける―開く」なんて復習しても、授業の流れがそれていくだけ、ですよね……

使役文の練習のための復習ですから、それに適切な自動詞・他動詞を選ばなければなりません。

使役文の練習に適切な自動詞と他動詞なんて、どうやって選べばいいの?

答えは簡単、これから使役文を練習する教科書を見ましょう!

『みんなの日本語』第48課であれば、例えば練習Aから「出張する」、「出席する」、「読む」、「そうじする」、「結婚する」、「行く」……このように、練習で出てくる動詞をピックアップしていけばいいんです。

ピックアップしたら、それぞれの動詞が自動詞なのか他動詞なのか、学習者と一緒にグループ分け。

ここでの自動詞・他動詞の見分け方は、実はとてもシンプルです。

それは、その動詞が助詞「を」を取るかどうか。

①アメリカへ 出張する
②会議に 出席する
③本を 読む
④部屋を そうじする
⑤好きな人と 結婚する
⑥大学へ 行く

①、②、⑤、⑥は助詞「を」を取っていないので自動詞、③と④は助詞「を」を取っているので他動詞になります。

使役文のなかで助詞「を」と「に」を正しく使えることが目標なので、複雑にしすぎないように。このように前作業をしておくことが大切なのです。

自動詞にも他動詞にもなる動詞もあるってホント?

自動詞と他動詞の見分け方のポイントは、助詞「を」を取るかどうかでしたね。

それでは、次のような場合はどうでしょう?

例文(5) 私は 病気の子供 部屋で 休ませました
例文(6) 私は 病気の子供 学校 休ませました

これらの例文は二つとも「休む」の使役文です。

同じ動詞を使っているのに、例文(5)は「病気の子供」、例文(6)は「病気の子供」となっていますね。

例文(5)の「休む」は自動詞、例文(6)の「休む」は他動詞です。

このように、同じ動詞を使っていても、自動詞にも他動詞にもなる場合も、少しですが存在します。

ここでもポイントはただ一つ。その動詞が助詞「を」と取っているかどうかです。

使役の意味は3つ!それぞれの例文と導入方法

使役形の作り方が分かった、自動詞・他動詞の見分け方もOKとなれば、残りはこれ。いよいよ使役文の意味です。

例文(7) 先生は 学生に 漢字を 10回ずつ 書かせます
例文(8) 私は 息子に 好きなものを 買わせました
例文(9) 私は 恋人を 怒らせました

3つとも使役文ですが、それぞれに意味が違います。

使役文の意味は次の3つに分けることができます。

  1. 強制
  2. 許可
  3. 感情の誘発

ここからは、それぞれの意味、例文と導入方法についてご紹介します。

使役の効果的な導入方法①「強制」の「~(さ)せる」

使役文の1つ目の意味は「強制」です。

直接法で教えるとき、学習者に「強制」と言っても通じないので、筆者は「嫌なのに…」なんて言っています。

例文:私は 息子に 野菜を 食べさせます

導入はこんな感じです。

教師:息子は野菜が嫌いです。
   私は言います。
   
  「野菜を食べなさい。」

   息子は野菜を食べます。
  
  「私は息子に野菜を食べさせます。」

ポイントは、
目上の人(親、教師、会社の上司など)が目下の人に」「命令して」「させる」というところです。

目下の人は「嫌なのに」しなければなりません。

教師を主語にすると、いくらでも例文が作れますね。

・先生は 学生に 漢字を 10回ずつ 書かせます。
・先生は 学生に みんなの前で 発表させます。
・先生は 学生に 宿題を させます。

両親を主語にして、子供のとき嫌だったことを話すこともできます。

・母は 私に 部屋の そうじを させました。
・父は 私を 塾へ 行かせました。

どうでしょうか。やはりいくらでも例文が作れますね。

使役の効果的な導入方法②「許可」の「~(さ)せる」

使役文の2つ目の意味は「許可」です。

これも直接法で教える場合は、学習者に「許可」といっても通じないので、筆者は「OKする」と言っています。

例文:私は 息子に 好きなものを 買わせました

「強制」が嫌なのにしなければならなかったのに対して、「許可」の場合は、息子が好きなものを買いたがっているのを、私が「いいよ」と許可しています。

導入はこんな感じです。

教師:昨日は息子の誕生日でした。
   息子は好きなものを買いたいです。
   息子は私に言いました。

  「好きなものを買ってもいい?」
   
   私は言いました。

  「いいよ。」

  「私は息子に好きなものを買わせました」

「許可」の場合も、「目上の人が目下の人に何かを許可する」場合に使役文を使います。

教室で学習者が教師に許可を求める場面を設定して、例文を作ってみてもいいでしょう。

・先生は 学生を トイレに 行かせます。
・先生は 病気の学生を 早退させます。

このような例文を作ることができます。

使役の効果的な導入方法③「感情の誘発」ポイントは自動詞

使役文の3つ目の意味は「感情の誘発」です。

例文:私は (友達と けんかして) 友達を 泣かせました

友達が「泣く」という感情が、「私の行為」によって誘発されています。

この使役文で使われる動詞は限定的です。感情を表す動詞だけが使われます。

・安心する(『みんなの日本語』第39課)
・困る(同35課)
・心配する(同17課)
・楽しむ(同48課)
・泣く(同44課)
・びっくりする(同39課)
・笑う(同44課)

『みんなの日本語』第48課までに出てくる、感情を表す動詞を抜き出すとこのようになります。

これらの動詞、実は全部自動詞なんですね。「感情の誘発」の使役文は、自動詞だけとなります。

『みんなの日本語』第48課の練習問題に直接「感情の誘発」の使役文が出てくることはありません。

でも、既習の動詞が使えますし、中級以降改めて学習する機会もないので、一緒に学習してしまってもいいと思います。

筆者は、「感情の誘発」のかわりに「気持ち」と言い換えて教えています。

これで完璧!使役を使いこなすための練習のポイント

ここまで、使役形の作り方、自動詞・他動詞の復習の話、使役文の意味と導入方法を見てきました。いかがでしたでしょうか。

ここまで来たら、後は実際に学習者が使役文を使えるように練習するのみ!ですね。

最後に簡単に使役文の練習方法をご紹介します。

使役の練習方法①学習者に身近な話題を使って定着させる

やはり学習者自身のことを話すというのは、実際に学習項目が使えるようになるための近道だと思います。

使役文の場合は、次のような練習が考えられます。

  1. 「厳しい先生」について話す。
    1.   例)学生に毎日たくさん宿題をさせます。
  2. 「両親の思い出」について話す。
    1.   例)母は私にピアノを習わせました。

①は「強制」の使役文限定の練習ですが、②は「強制」、「許可」両方の練習が可能です。

また、「両親の思い出」のかわりに、「私が親になったら、自分の子供にさせたいこと」について話し合ってもいいと思います。

使役の練習方法②架空の話で楽しく練習!

時には架空の話を学習者と一緒に作って、楽しみましょう。

例えば「何でもできるロボット」が私たちの家にいるとします。そうしたら、一体何をさせたいですか。

  • 料理を作らせたい
  • そうじをさせたい
  • 車の運転をさせたい

などなど……。

学習者と一緒に想像の翼を広げてみてください。

今回は使役の教え方についてご紹介してきましたが、いかがでしたか。

教師にとっても、学習者にとっても難しい学習項目ではありますが、だからこそ授業を楽しんじゃいましょう。

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コメント

コメント一覧 (2件)

    • 程晓萍様、こんにちは。

      コメント、ありがとうございます!

      何よりもうれしいお言葉です。
      これからも初級文型の教え方について記事を載せていく予定です。
      よかったらまた読んでくださいね。

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