精読と読解って何が違うの?中級の精読(読解)の授業方法

中級の「精読」や「読解」の授業方法に不安を感じている方、いらっしゃいませんか。私は初めて読解の授業を担当したとき、「どうやって本文を読んでいけばいいのだろう」と思っていました。

中級の授業って初級とは大きく違うので戸惑いますよね。

今回は「初級の授業はある程度経験を積んだから、中級の授業を担当してみたい!」とか、「学校側から中級の授業を担当しないかと打診されたけど、できるかどうか不安」。そんな方のために、中級の「精読」or「読解」の授業方法を説明しました。

これで、自信を持って中級の授業の担当をしてください!

目次

精読と読解の違い

カリキュラム書かれている「精読」と「読解」って、授業内容に違いがあるんでしょうか?

いいえ、違いはありません。カリキュラムに「精読」と書かれていても、「読解」と書かれていても、本文の内容を理解しながら読むという点では同じです。どちらも「教師が文章の内容を丁寧に解説し、内容を理解させる」授業です。

もちろん、試験対策の読解は授業で行う「精読」や「読解」とは違います。辞書に掲載されている「精読」と「読解」の意味も違いますよ。

精読or読解の授業方法

精読や読解の授業はどのように進めていけばいいのでしょうか。ここでは「本文を読む前」「本文の読み方」「本文を読んだあと」に分けて説明します。

精読・読解の授業準備:読む前にすること

教師が読む前に注意することは3つ。

  1. 本文中の「新出語」と「新しく勉強した文法や表現」の箇所をチェック
  2. 本文中の未習の語彙や文法、表現などをチェック
  3. 本文のテーマに関する話題を準備

以上の3つを読む前にしておきます。何のためにするのか?説明しますね。

①本文中の「新出語」と「新しく勉強した文法や表現」の箇所をチェック

本文を読むときに、新出語や文法に関する質問があるかもしれないので、答えられるように準備しておくのです。

「学習者は習ったものを全て覚えている・身についている」を前提に授業をしてはいけません。忘れていた時にするだろう質問を予測して、対応できるようにしておくと安心して授業に臨めます。

②本文中の未習の語彙や文法、表現などをチェック

語彙や文法につまずいて、内容理解ができないと困りますよね。本文中に未習の語彙や文法などがないか、チェックしておき、簡単に説明できるようにしておきます。

「簡単に」がポイントです。じっくり、ゆっくり説明していたら、本文を読む時間がなくなりますよ。

例えば、下記の文章の中に、「みんなの日本語」で習っていないものがいくつあるか、わかりますか?

日本に来たばかりのころ、右も左もわからず、苦労した。「牛乳」も「ミルク」もわからない私は、スーパーで牛乳を買うだけでも大変だった。

「みんなの日本語」で習っていないものは4つあります。

①「た形+ばかり+の+とき」

「みんなの日本語2」では「た形+ばかりです」を学習しています。教科書に掲載されている文法は下記の3つ。

  1. た形+ばかりです(から)
  2. た形+ばかりなのに~
  3. ~た形+ばかりなんです

しかし、「た形+ばかり+の+とき」は載っていません。もしかしたら、初級のときに学習していない可能性があります。接続の確認をする必要があるでしょう。

②「右も左もわからない」の慣用句

「みんなの日本語」に「右も左もわからない」という慣用句は載っていません。「右」と「左」がわかっても、「右も左もわからない」がわかると思ってはいけませんよ。きちんと意味の確認をしましょう。

③「苦労」は「みんなの日本語」では習っていない単語です。

④「でも」

「みんなの日本語」では接続詞の「でも」と「コーヒーでも飲みませんか」の一例を挙げる「でも」しか学習していません。「買うだけでも大変」の「でも」の意味を説明する必要があります。

③本文のテーマに関する話題を準備

本文を読む前のウォーミングアップの時間には、本文に関連するテーマについて話します。

例えば本文が「異文化コミュニケーション」をテーマにしたものなら、ウォーミングアップの時間には「異文化コミュニケーション」をテーマに話します。5分ほどの時間で大丈夫です。

ここで注意したいのが、テーマが大きすぎる質問はしないこと。いきなり学習者に「日本に来て異文化を感じたことはありますか?」なんて聞いても話は弾みませんよ。

例えば学習者がベトナム人なら、「私はこの間フォーを食べたけど、フォーの中にはたくさんの香草が入っているのね。日本に来たら、香草が少ないから残念でしょう?」という感じで、日常の何気ない話をする。そして、日常会話から食についての異文化の話につなげるほうが学習者も話しやすいですよ。

精読・読解の授業の進め方:学習者に問いかけながら行う

本文は少しずつ読みすすめながら、内容の確認をします。「少しずつ」がポイントです。一段落を一気に読んで内容確認なんて、もってのほかです。ひとつの文を少しずつ確認するのです。

主に確認することは下記の3つ。

  • 学習した語彙や文法の確認
  • 登場人物の確認
  • 誰が・どこで・何をしたのか の確認

例えば下記のような文章を読むとしたら、みなさんは学習者に何を確認しますか?

日本に来たばかりのころ、右も左もわからず、苦労した。「牛乳」も「ミルク」もわからない私は、スーパーで牛乳を買うだけでも大変だった。

私が学習者に確認することはざっと9個あります。

1)登場人物は何人ですか?
2)登場人物はどんな人ですか?
3)「日本に来たばかりのとき」とありますが、「ばかり」はどういう意味ですか?
4)「ころ」を他の言葉に変えるなら、どんな言葉がありますか?
5)「右も左もわからず」とありますが、「わからず」の「ず」はどういう意味ですか?
6)「右も左もわからず」とはどういう意味ですか?大人だけれど、右と左がわからないという意味ですか?
7)「私」はどうして「牛乳」と「ミルク」がわかりませんでしたか?
8)「牛乳」と「ミルク」にはどうして「  」がついているんですか?
9)「買うだけでも」とありますが、「でも」はどういう意味ですか?

9個の質問は多いでしょうか?文章を読むときは、たくさんの質問をしなが、内容を確認するのがおすすめですよ。

学習者は少しでもわからない部分があると、わからない部分以降の内容が理解できません。ですので、少しずつ確認して、わからない部分がないように読み進めるのです。

精読・読解の授業:読んだあとにやるべき活動

文章を読んだあとには、どんな学習をしますか。読んで終わり、なんてことはないですよね。

本文を読んだあとにすること ~よくあるパターン~

①本文に関する質問に、◯✕で答える問題を解く
②本文に関する質問に文章で答える問題を解く
③本文を要約する
④作者の意見や考えをまとめる
⑤本文に対する自分の意見をまとめる

比較的簡単で時間をとらないのは
①本文に関する質問に、◯✕で答える問題を解く
②本文に関する質問に文章で答える問題を解く

この問題の形は試験にもよく出題されるし、授業時間もあまり使わないので、カリキュラムに時間的余裕がないときでもできますね。

難易度が上がり、実施するのにもフィードバックするのにも時間がかかるのは、
③本文を要約する
④作者の意見や考えをまとめる
⑤本文に対する自分の意見をまとめる

③~⑤は穴埋め問題にすると少し難易度が下がりますので、チャレンジするなら、穴埋め問題から始めるといいでしょう。

まとめ

精読(読解)の授業は、ひとつひとつ単語や文法、表現などの意味を理解をしながら、文の意味を理解していく方法がお勧めです。

なぜ、ひとつひとつの意味理解が大切なのか?単語や文法を理解していても、文化的背景や言語表現の違いから、スムーズに内容が理解できない場合があるからです。

授業時間は限られていますが、文章のどの部分で理解ができなくなったのかをはっきりするため、急がずゆっくり読み進めるのがいいですよ。

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