日本語教師のみなさま、上級クラスの会話の時間にはどんな授業をしていますか?
何かのテーマについて話すって言っても、初級や中級のときに使ったテーマと重複しては新鮮味がない。受験や就職を控えているからといって、受験や就職対策ばかりをテーマにするわけにもいかない…。
今回は私が過去の授業で扱ったテーマの中で、学習者に好評だったもの、教師も非常に楽しめたものをご紹介します。アレンジすることによって中級レベルの学習者にも対応できる内容です。いつもの授業プラスアルファの活動にもできますよ。ぜひ参考にしてください。
日本語中級~上級クラスで使える会話内容&活動4選
中級以上の授業では、アウトプットの時間を充実させることも大切になってきます。インプットばかりでは、実際に使うチャンスがなくて困ってしまいますからね。
下記に4つアウトプット中心の活動内容を載せました!私が今までの授業で実践して、盛り上がったもの4つを厳選しました。
活動1:旅行ガイドになる!
まず1つめにご紹介する授業内容はPowerPointなどを用いて、「旅行ガイドになったつもりで、クラスメイトの前で自分のふるさと(街)を紹介する」というものです。
この授業のポイントは「PowerPointなどの視覚教材を用いながら、日本語を話す」というところです。
なぜか?学習者が日本の大学や専門学校などに進学したら発表の時間はあるし、日本の会社に入るとプレゼンテーションする機会もあるでしょう。この活動は発表やプレゼンテーションをうまく行うための練習なのです。
それに、何かの動作をしながら外国語を話すって、意外に難しいんですよね。
ルールは簡単!
■学習者1人の持ち時間は3分~5分
■PowerPointなどを使い、資料や写真などをクラスメイト(観客)に見せながら、自分のふるさと(街)の魅力について話す
ルールはこの2つしかありません。
学習者の日本語がいくら上手でも発表の時間は最長5分。長すぎると話の内容も間延びしてしまうし、観客(クラスメイト)が集中力を保てなくなります。話の内容もただ単に「魅力」について話すよりも、「観客(クラスメイト)を旅行で訪れたいと思わせる」を目標にすると、話す内容も考えやすくなります。
学習者の日本語レベルが低くて、うまく発表できるかな、と心配な場合は下記の2つのことを発表前にしてみてください。
「私のふるさと(街)」のテーマはイマイチだなぁ、と思われる場合はテーマを変更すればいいのです。
テーマを「私のふるさと(街)」ではなく、「遠足で行きたい場所」や「学校に欲しい設備」などにして、実際に遠足で行けたり、欲しい設備を学校側に意見として提出できると、盛り上がりますね。
それに、「遠足で行きたい場所」や「学校に欲しい設備」がテーマだと、論理的な思考で相手を説得できる内容や話し方が必要になってくるので、レベルが上がります。
発表するだけでは物足りない…という場合は、録画して他の教師にも見てもらい、優秀賞を決める、というのもアリですね。例えば、「私のふるさと(街)」の発表を録画し、他の教師にも見てもらい、教師が実際に行きたいと思ったところに1票入れてもらう、という展開があってもおもしろいですよ!
この「旅行ガイドになる!」の活動では、言語能力以外にも学びたいことが2つあります。
■話すときの態度
■相手の話を聞く態度
この2つです。日本では話すときにポケットに手を入れたり、クラスメイト(観客)を指で指さしたりするのはあまり好印象ではありませんよね?相手の話を聞くときに、携帯電話を握りしめたままだったり、相手の発言にちょっかいを出したりするのもよくありません。
学習者が言語学習に余裕が出てきたら、言語能力以外の面にも意識を向けたいですね。
活動2:番組にナレーションを入れてみよう
次は、「日本を紹介する番組に日本語でナレーションを入れてみよう!」という活動をご紹介します。「ナレーション?録音設備なんて用意できない」という方でも大丈夫です。学習者は番組の映像に合わせて「話す」だけですので。
この活動で学習者がすることは下記の通り。
①母国での日本に関する番組をデータ保存する
②番組内のナレーション(母語)を日本語に翻訳する
③番組の映像に合わせながら、学習者が日本語でナレーションをする
学習者がこの活動が楽しめる理由は、自分の好きな番組で日本語学習ができるからです。私が以前にこの活動をしたときは、日本への旅行番組や学習者の母国で活躍するYouTuberが作る番組を選んだ学習者がいました。教師である私もいろいろな国の番組が見られて、楽しかったです。
この活動で必要な能力は大きく2つ。
■母語で聞いた言葉を日本語に翻訳する能力
(翻訳する授業ではないので、正確な翻訳でなくても問題ありません)
■番組が進むスピードに合わせて、日本語を話す能力
自宅学習が習慣になっている学習者なら、翻訳もナレーションの練習も宿題にしても問題ないと思います。自宅学習ができない学習者の場合は、翻訳する時間や発音練習の時間を授業時間内に設けると、発表するときの自信につながりますね!
活動3:クイズ番組に挑戦
日本には外国をテーマにしたクイズ番組、ありますよね?そのクイズに学習者と一緒に挑戦するのです。
みなさんはクイズ番組を日本語教材として、意識して見たことがありますか?クイズ番組って、視聴者が知らないと思われる内容は丁寧に説明してくれるし、肝心のクイズの部分は字幕で表示されることが多いんですよ。当然のことながら、クイズを読む人の滑舌はすばらしい。
それでも、学習者にとって日本語が難しい場合は事前に単語や文法の説明をしてから聞けば、内容理解の助けとなりますし、字幕でクイズが出題されたときに、画面をストップさせると、みんなで字幕を見ながら内容確認ができます。
解答するときは、解答のみを発言するのではなく、その理由も答えさせれば、かなり高度な発話練習になります。
この活動をする上で配慮しなければならないことは、学習者の出身国が異なる場合、特定の国のみのクイズをしないことです。外国をテーマにしたクイズ番組でなくても、学習者が住んでいる日本の地域のものでも同様の練習ができますね。
活動4:地域の人との交流会
学習者って、日本語は勉強しているけれど、教師以外の日本人と日本語で話すチャンスって少ないですよね。そんな学習者のために、教師が交流の時間を設けるのです!
え?どうやって交流会の時間を設けるの?と思いますよね?教師が交流したい人や団体に直接交渉するのです。もちろん、学校側の許可も必要です。
どんな交流会を設けることができるのでしょうか?
学習者が日本在住の場合
- 小学校・中学校・高校・大学との交流会
…学生との異文化交流会を提案する - 会社との交流会
…社員の方に、外国人人材や外国人の就職活動について講演をしてもらう - 福祉センターとの交流会
…老人ホームなどを訪れて、歌を歌ったりおしゃべりしたりする時間を設ける
学習者が母国在住の場合
- 日系企業との交流会
…日本人の社員の方に、働くときに必要な日本語能力などをテーマに講演をしてもらう - 海外在住日本人との交流会
…海外に住んでいる日本人と季節のイベント活動などを行う - 日本関係のイベントに参加する
…学習者がボランティアとして参加する
交流会に関しては、相手側の都合や人数制限などもありますので、必ずしも授業時間内にできるとは限りませんが、希望者のみ参加したり、日本語学校全体の取り組みとして行う価値はあるでしょう。
まとめ
以上、4つの活動内容をご紹介しました。どの内容も私が過去に実践したもので、学習者にも好評だったものです。
会話カリキュラムの作成にお困りの方、いつもの授業内容にちょっとプラスアルファの時間を設けたい方、どうぞ参考にしてみてください。
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