みなさん、こんにちは。鈴木コウジです。
学校でのJLPT対策となると、最近では、N3から始めるのが普通でしょう。
N4レベルの学生がN3の勉強を始めるのですから、最初のうちはわからないことだらけです。教師は、説明したいのをグッとこらえて、N4レベルの授業と同様に、やさしい言葉で始めていくことになります。
特に読解授業は、漢字・語彙・文法が入り組んでいて、ただでさえ説明が多くなってしまって、学生の発話が少ないと悩む先生もいるのではないのでしょうか。
また、問題の解説をすると、「理由はここに書いてある」「筆者の意見はここからここに書いてある」といった話ばかりになりがちですよね。
学生は、一生懸命理解しようと聞いていますが、問題文を読んだり、該当箇所を探したりで、大変苦労をしていると、みなさんも感じていると思います。
そこで、今回は、学生に少しでもわかりやすく、かつ、読解授業をスムーズに進めるポイントを紹介します。
ポイントの一つは、読解授業で学生が説明がわかりやすくなることばを紹介します。これらは、読解の授業の第1回にぜひ学生に教えておきたいことばです。
もう一つは、読解授業でこれがあると説明がしやすくなる教具を紹介していきます。
JLPT読解の初回授業でおさえておきたい!必要なことば
はじめにも書きましたが、N4までの初級の勉強がおわり、N3の試験対策を始めるようになっても、始めのうちは説明といっても、初級の授業とあまり変わりない説明になると思います。
読解では文法や語彙の説明は極力省いて、文章の内容や問題の答えになる部分を探すことに時間を使いたいですよね。
「読解」に集中するあまり、解説の時間についつい使って学生を置いてけぼりにしてしまうことばがあるって、お気づきでしたか?あまり説明しなくても、何度も使うので、学生もなんとなく覚えていきますが、やはり、始めに説明をしたほうが良いでしょう。
ここでは、N4の勉強が終わり、これからN3の試験対策授業を始める学生を前提に書いていきます。
行(ぎょう)
読解で解説をする時に必ずといっていいほど使うことばが「ぎょう」です。
この「ぎょう」、みなさん、思い出してください。適当に使ってはいませんか?
JLPTが日本語の試験だといっても、左から右に書いてるものがほとんどです。(例外は読解問題の中にある縦書きのものです。N2ではまれですが、N1ではほぼ毎回縦書きの問題が1問でてきます。)
読解の解説をするときに、
筆者の意見は、上から5行目に書いてあります
といったりしませんか?
日本語はカ行、サ行のように縦方向の並びを行(ぎょう)、ア段、イ段のように横方向の並びを段(だん)と読んでいます。
一方で、エクセルでは、「行・列」ということばを使います。ここで混乱ポイント。
「どっちが縦方向のことばで、どっちが横方向のことばか?」がわからなくなるんです。
じゃあどうすればいいの?
読解の解説をするときには、全部「行(ぎょう)」で統一しちゃいましょう!
前述した「行」「列」「段」は、教師として知っていればいいだけのことで、細かく説明する必要はないです。
学生に解説するときには、「下から3行目に書いてある」というような言い方で良いです。始めのうちは一緒に行数を数えてみせれば間違いもなくなります。
N2やN1レベルの授業では、「行(ぎょう)」などは語彙として既習のはずですので、授業中に使いながら覚えるようにしても大丈夫です。
本文・問題文・質問文
ちょっとだけ余談を。
授業中に学生が
先生、問題があります。
と。
国を問わず多くの学生が、このような間違った日本語をよく使います。先生方もよく耳にしているのではないでしょうか。
上のような使い方だと「プライベートなことや深刻なことを相談したいのか?はたまたクラスや学校で何か大きな事件が起きた?」と聞き手は思ってしまいます。
学生が意味する正しい日本語は、
先生、質問があります。
です。
日本語の「問題」と「質問」を、一つの言葉で表す国もあるでしょうし、単純に学生の覚え間違いかもしれません。日本語に翻訳している辞書や本の間違いかもしれません。
いろいろな原因があると思いますが、問題文や質問文ということばが出てきたのを機に、学生に上のフレーズの使い方を確認してみるのはどうでしょうか?
選択肢
このことばも使わないと、なんとなく指示が出しにくいので、覚えてもらいましょう。
「a,b,c,d,とか1,2,3,4とかを選択肢って言うよ」という説明でいいと思います。
上で挙げたものの他にも、「〜目(1行目や5問目などの目)」、「文章」などもあるとは思いますが、あとは学生のレベルに応じて適宜説明をすればいいでしょう。
JLPT読解授業であると便利なもの
説明のことばを学生が理解するようになったら、どんどん問題をやっていきましょう!
教師も学生も練習をたくさんやることで、レベルアップをしていきます。
教師としては、解説の時間は短くし、練習時間を多くとってあげたいと思いますよね。
しかし、読解問題でも語彙や文法の説明には時間も取られますし、例文を板書する時間もあります。ここを短くするのはちょっと危険かもしれません。
それでは、どこで時間が節約できるでしょうか?
それは、答えの該当箇所を指摘し、学生にチェックさせる時間です!
教師:この答えの理由は、上から5行目の…左から…
学生A:先生、どこですか?もう一度お願いします。
教師:上から5行目の…左から…
(これが1回で終わらない。学生B、Cと何度も聞いてくる。)
このやり取りの時間、本当に時間の無駄ですね。
これから紹介する教具をうまく使って、時短テクニックを磨いていきましょう!
大画面モニター
最近の教育業界では、どこもICTをキーワードに、環境を整えたり、授業を行ったりしています。
日本語学校でも、教室にモニターやPCを設置したり、学生にタブレットを配布して電子書籍の教科書を使用したりしているところが増えてきました。
読解の授業の話に戻りますが、「答えの該当箇所を指摘し、学生にチェックさせる時間」というのは、なかなかうまく進まない時間といえます。
原因は、教師が指示した該当箇所を、学生が文章中から見つけ出せないからです。
これを解決するのに役立つのが、大画面モニターです。(できれば大画面がいいです。)
[大画面モニターの使い方]
1)教師は、解説用に下線や色を付けた問題用紙をPCやタブレットやスマホに、画像として取り込んでおく。
2)モニターで、解説用の問題用紙を映す。
3)解答の際に、画像を拡大し、説明する。
これだけです。
これによって、解説の必要な該当箇所を指摘しやすくします。
今までは、「これは、上から何行目に書いてある」とか「本文の真ん中らへんの…」と言いながら、学生に問題用紙を見せて、指を差して説明をするしかありませんでした。
学生は「どこ?どこ?」といって、周りの友達に聞いたりして、なかなか授業が進みませんでした。
大きい画面に、該当箇所を映して、指摘することで一目瞭然になります。何行目とか何文字目とかいう言い方も減っていきます。
蛍光ペン
いくらICTを推進してもすべての学校に大画面モニターがあるとは限りません。または、教室ごとに設置してある教具が違う学校もあると思います。
そんな場合に使える方法が、こちら。以下で紹介する方法は、大画面モニターが教室に配備されるよりも昔にやっていたやり方です。
時短になるか?と言われれば難しいですが、教師が該当箇所を指摘し、学生がチェックしやすくなるやり方なので、おすすめですよ。
蛍光ペン(ピンクやイエロー)を使ったやり方をご紹介します。
モニターがない場所で読解問題の解説をするのに役立つ方法の一つといえるでしょう。
[やり方]
1)問題文をA3サイズに拡大してコピーする。(大抵の場合、問題集の見開きはB4。)
2)解説用として、該当箇所に色(蛍光ピンクやイエローなど目立つ色)を付ける。
3)解答の際に、色付けした箇所を学生に見せながら、説明する。
A3サイズに大きくしていることと、蛍光ピンクやイエローで該当箇所を塗っているおかげで、学生は教師が指しているところが、遠くからでもある程度把握できるので、チェックができます。
解説用の問題用紙を作るときも、最近は消せる蛍光ペンもあるので、書き間違えたりしてもすぐに直せるので、作業がはかどります。
10年ぐらい前までは、私はこのようなやり方をしていました。iPadを持ったことや、教室の設備が少しずつ変わってきたため、今はモニターに映すことにしていますが、この蛍光ペン方式でも学生のチェックするスピードは変わってきます。
まとめ
初級が終わってすぐにN3の勉強を始めて、わからないこともまだまだ多い時期の学生に、読解授業を行うのってかなり難しいですよね。わからないことだらけだからこそ、まず教えておきたいことを書きました。
教師の解説に対して、学生は解説することばを理解しておかなければいけません。
- 行(ぎょう)
- 本文、問題文、質問文
- 選択肢
などのことばを理解していれば、教師の解説に集中できます。
教師も授業をスムーズに進めるのには、学生が解説のことばをわかっていることはもちろんのこと、大画面モニターなどを使い、解説のやり方や進め方を変えていくのが大切でしょう。
私がおすすめすることや今までやってきたことを紹介しましたが、これ以外にもみなさんも色々な工夫をされていると思います。
機会がありましたら、みなさんからのアイディアもぜひ教えてくださいね。
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