みなさんこんにちは。大学生ライターの葵です。
私は現在3回生で、3年間大学生活を送ってきたわけですが、最初の半年間は、これといったことをせず、ただただアルバイトと友達と遊ぶことしかしていませんでした。
そんな無為な時間を過ごしていたとき、日本語専攻のグループLINEに先輩から「日本語専攻ツアー」に関する連絡がきました。内容は、毎年私の大学の日本語専攻が春休みに開催する、外国の日本語教育機関を訪れるツアーの参加者を募るものでした。
私は、「やっと日本語教育に関わる活動が出来る!」と思いすぐに先輩に連絡し、参加を決めました。こうして私は、1回生の春休み、2回生の春休みと、2回ツアーに参加しました。
「日本語専攻ツアー」は、私の大学生活の中で一番の、かけがえなのない思い出です。
あくまで私の通う大学独自のプログラムですが、日本語教育や、日本語専攻だからこそ経験できることについて知り、楽しんでいただけたら幸いです!
講義を受けてるだけじゃわからない!現地の学習者との交流内容を紹介
そもそも「日本語専攻ツアーって何?」と思う方、いますよね。
日本語専攻ツアーでは、外国のいくつかの日本語教育機関を私達日本語専攻の学生が訪れます。そこで日本語を学んでいる学習者の皆さんと日本語や日本文化、また、現地の文化を通して交流することが目的です。
主な教育機関として、高校や大学、様々な年代の日本語を学びたい人が集う、日本語スクールのようなものがあります。現地の高校や大学にも、日本と同様日本語学科があったり、選択言語として日本語を選べるようになっていたりするので、そこで日本語を学んでいる学習者に会いに行きます。
いくら大学で模擬授業など実践的な講義を受けているとは言え、外国では実際にどのような人が日本語を学んでいるのか、その人達はどのような環境で生活し日本語を学んでいるのか、学生の私達は想像することしかできません。
しかし、この日本語専攻ツアーで、実際に現地の学習者と話し、食事をし、数時間でも時間を共に過ごしたことで、生まれた国も、文化も違う私達学生と現地の学習者が「日本語」や「日本文化」、または「日本」を通して繋がっている、こうして交流しているという喜びを感じることができました。
以下では具体的な活動内容をご紹介したいと思います。
主な交流内容は、大きく二つ。
- 一つは日本人から日本の文化紹介をすること。
- もう一つは現地の学習者に街を案内してもらうなどして文化紹介をしてもらうこと。
まずは、一つ目の日本の文化紹介を見ていきましょう。
1:日本の文化を紹介!学習者に楽しんでもらうためにできること
日本語専攻の学生は、日本語専攻ツアーまでに数ヶ月ほど準備を行います。日本人からの文化紹介としては、毎年以下のようなことをしています。
- 日本語を使ったアクティビティ(アイスブレイク用)
- スキット
- 出し物(ダンスや民謡など)
- 授業では扱えないような文化紹介
以下で詳しく説明します!
伝言ゲームや提示した日本語の文字数の人数でグループを作るなど、誰でも気軽に楽しめる、簡単な活動をします。ここで自己紹介をする場合もあります。
私達日本語専攻の学生が一番力を入れて準備をする短い劇のことです。後ほど詳しくご説明します!
最近日本で流行っているダンスを学年ごとに発表するものです。私は「エビカニクス/ケロポンズ」や「パプリカ/Foorin」を踊りました。また、私が参加したツアーでは「うらじゃ音頭」という音頭を日本人も学習者も一緒に踊りました!この「うらじゃ音頭」をみんなで笑いながら踊るのが本当に楽しくて、私はこの時間がとても大好きでした。
例えば現地の高校を訪れたときには、日本から中学校・高校の制服を学習者のみんなに着てもらいましたし、年少者がいる教育機関では紙コップを使って雛人形を作ることもしました。
このように、日本語専攻ツアーでは普段日本語を学んでいる現地の学習者に、より日本語や日本を好きになってもらえるよう、楽しい時間を過ごしてもらえるように様々な文化紹介をしています。
続いては、スキットについて詳しくご紹介したいと思います!
1:スキットって?
私達のツアーに欠かせないスキットは、一言で表すと「教科書に載っていない日本文化」をテーマにした短い劇のことです。
テーマは、例えば以下のようなものがあります。
- 「当たり前」って何ですか?
- 「気が利きます」って何ですか?
- 日本人は察してもらいたがる?
- 日本人は周りの目を気にしがち?
このようなテーマで、留学生役や日本人役を設定し、日本語で短い劇を作ります。
①の「当たり前」や②の「気が利きます」は、日本人がよく使うけど教科書ではあまり出てこないような語彙をテーマに、具体的なシチュエーションを決めて劇にします。
③の「日本人は察してもらいたがる?」は日本人の「言わなくてもわかるでしょ!」をシチュエーションで表したものです。例えば日本人の会話では、誰かからの誘いを断るとき、「今日はちょっと…」や「行けたら、行きます…」とはっきりと断るのではなく、曖昧に言いますよね。その断り方に着目し、劇にしました。
④の「日本人は周りの目を気にしがち?」では、赤信号でも誰かが渡ったら自分も渡ってしまう…など、周りに合わせ、自分が逸脱しないよう気にする、といった日本人の内面的な特徴を劇で表現。他人の目を気にして慌てふためく日本人を見て、学習者からも笑いがおきました。
先ほど日本語専攻の学生はスキットに一番力を入れて取り組む、と述べましたが、スキットはメンバーで何度も試行錯誤を重ね、演じ方、声の出し方、一つ一つのセリフに関し、ああでもないこうでもないと何度も試行錯誤を重ね、作り上げます。
それは偏に学習者にスキットの内容をより理解してもらうためです。どんなに演技がうまくても、こちらの伝えたいことが学習者に伝わらなければ意味がありません。
ここで重要になってくるのが学習者の日本語レベルに合わせてスキットを作る、ということです。スキットは日本語で演じますから、ポイントになってくるのは学習者がそのセリフをどこまで理解できるか、なんですね。
訪れる日本語教育機関にいる日本語学習者の日本語レベルは様々です。私達が普段話しているような話し方、スピードで日本語を話せば、チンプンカンプンになってしまう学習者がほとんど…。
では、どのようにすれば良いでしょうか?
そこで私達が使うのが、フォーリナートークという話し方です。
2:フォーリナートークって?
フォーリナートークとは、その言語が十分に話せない人に対し用いる話し方のことで、具体的には
- ゆっくり話す
- できるだけ一文を短くする
- 簡単な語彙を用いる
などが挙げられます。
それでは、普通の日本語とフォーリナートークを比べて見てみましょう。
「明日の朝早起きするから今日は早く寝ないといけないの。」
↓
「明日の朝、早く起きます。ですから、今日は早く寝ます。」
フォーリナートークを用いると、日本語レベルがそれほど高くない学習者でも、日本語で意味を理解できるようになります。
そのため、私達は学習者の日本語レベルに合わせてこのフォーリナートークを使い、スキットを作り上げています。
2:学習者のみんなからの文化紹介!食べて見て学ぶ現地の文化
これまでは日本人からの文化紹介について説明しました。ここでは、現地の学習者からの文化紹介についてご紹介したいと思います。
現地の学習者はとても勉強熱心で、私達のスキットも真剣に聞いてくれますし、私達が用意したアクティビティにも真剣に取り組んでくれます。私達の文化紹介が終わると、学習者も彼らの文化でスキットを即興で作ってくれたこともありました。
ツアーでは、私達が日本の文化を紹介するだけでなく、現地の文化紹介も通して、私たちはお互いの文化を学んできました。
以下では、学習者からの文化紹介の中でも、私が毎回特に楽しみにしていた、エクスカーションについて説明したいと思います。
みんなのお楽しみエクスカーション
日本語専攻ツアーでは、毎回のツアーでエクスカーションという、現地の学習者に名所や屋台など彼らの街を案内してもらう活動があります。
学習者のみんなが一生懸命日本語を使いながら、時にはスマホで調べながら場所や食べ物の説明をしてくれるのは、見ていてとても微笑ましく、感動するものがありました。
エクスカーションは、スキットを含む文化紹介の後行います。少し打ち解けた後なので、みんなそれぞれ色々な人と、色々な話をすることができます。その話の中で、彼らが本当に日本が好きであること、日本語を話せるようになりたいと思っていることが伝わってきて、話を聞いているだけで私もとても嬉しい気持ちになります。
3:交流だけが目的じゃない!現地で「生活する」ことも勉強の一つ
これまで、主な交流内容について説明してきましたが、日本語専攻ツアーの目的は、学習者と交流することだけではありません。現地で「生活する」ということも私達が学べることの一つです。
「生活する」とは具体的にどういうことでしょうか。
みなさん、海外旅行に行くときはどのように過ごしますか?タクシーを使って移動し、綺麗なホテルに泊まり、美味しいレストランでご飯を食べる…。それはそれで楽しい旅行ですが、現地に住んでいる人と同じように生活しているとは言えません。
日本語専攻ツアーでは、できるだけ現地の人の日常生活と同じように生活することを心がけて旅程が組まれています。
例えばタイではトゥクトゥク、ミャンマーでは寝台列車など、現地の公共交通機関を使って移動し、食べ物は屋台や地元の人に人気のレストランで食事をしました。
公共交通機関も、ホテルも、快適とは言えませんが、私はこれがツアーの醍醐味であり、「生活する」とはこういうことなのだと考えています。
楽しいだけではないのがツアーです。だからこそ学べることの多い充実した時間でもあります。
まとめ
今回は日本語専攻ツアーについてご紹介してきました。
このツアーは、私の大学生活の中で一番充実した時間であり、一番の思い出です。
私は、ツアーを通して、日本語教師という仕事に対する考え方が変わりました。ツアーに参加するまで持っていた日本語教師に対するイメージは、外国人に日本語を教えること、それだけでした。しかし、実際に外国で日本語を学んでいる人達と出会い、交流したことことで、日本語教師はただ日本語を教えればいいのではなく、相手を理解し尊重しながら、日本や日本語、日本文化の魅力を伝えることが大事なのだと思うようになりました。
実は、私は将来日本語教師になるか、まだ決めていません。ですが、ツアーに参加したことにより、将来の選択肢の一つとして、より真剣に考えるようになりました。
このツアーに参加した全ての人が、行く前までとは違った自分になれたのではないかと私は思っています。
また、正式な日本語教師として働いたことのない私が言うのも恐縮ですが、このツアーには日本語を教える上でとても大切なことが詰まっていると感じています。
残念ながら、この日本語専攻ツアーは私の大学の日本語専攻が行っているものなので、他の大学の日本語専攻でこのような活動が行われているかは分かりません。ですが、日本語専攻に入ってできることは講義を受けるだけの勉強ではないはずです。
きっとどの大学の日本語専攻でも、自らが望めば、このような素晴らしい経験ができると思います。
日本語教師に興味がある方、外国人と関わることに興味がある方はぜひこのような活動にも目を向けてみてくださいね。
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