日本語教員試験の内容は?試験対策は?日本語教育能力試験との違いを解説!筆者の受験結果も掲載!

日本語教師の鈴木コウジです。

久しぶりの記事執筆です!

今回の記事は、日本語教師の今後を左右するといっても過言ではない「日本語教員試験」についてです。

試験問題の分析をするのが好きな私が、2024年の秋から実施される「日本語教員試験」の試行試験を受けてきました。

みなさんが一番気になるのは、日本語教員試験って難しいの?どんな内容なの?という点ではないでしょうか?

以下、12月10日に行われた「令和5年度日本語教員試験(試行試験)」を受けてきた感想と試験内容について解説していきます。

この記事の最後に、私の受験結果を載せておきます。

目次

日本語教員試験とは?

 これを読んでいる方は、日本語教員試験=登録日本語教師になるための試験ということは、ご承知のとおりです。

 2024年(令和6年)4月1日以降は、文科省が認める日本語教育機関(認定日本語教育機関)で働く場合は、登録日本語教員であることが必須になります。(※民間の日本語教育機関やボランティアで働く場合は登録日本語教員であることが必須とは限りません。)

 現在働いている日本語教師は、経過措置期間(令和6年4月1日〜最大令和15年3月31日まで)に、日本語教員試験に合格し、登録日本語教員にならなければなりません。

 つまり、日本語教員試験は、認定日本語教育機関で働きたい日本語教師にとって、受験必須の試験ということになります。

 保有する日本語教師の資格を示すもの(主専攻・副専攻、420時間以上の養成講座修了、日本語教育能力検定合格など)のうち、何をいつ取得したのかによって、基礎試験・応用試験・実践研修のうち免除される試験があります。(詳しくは、文化庁の発表をご覧ください。)

 なお、日本語教育能力検定は続いていくとの話が有力です。日本語教育能力検定は文化庁の資料では、民間資格というくくりで扱われています。

日本語教員試験合格=国家資格取得

日本語教育能力検定試験合格=民間資格取得

ということになります。

それでは、具体的に日本語教員試験の内容について見ていきましょう。

日本語教員の試験内容

今回の試験が行われるに際して「日本語教員試験試行試験要項」が発表されました。ここにあるように、試験内容は、

1.基礎試験

2.応用試験1(聴解)

3.応用試験2

出題範囲についても、要項にかかれていて、日本語教育能力検定試験と大きな違いはないように見えます。

つぎに、実際に試験を受けてみてわかった細かい違いと試験対策を書いていきます。

日本語教員試験と日本語教育能力検定試験との違い

基礎試験 120分100問

 1)選択肢について

  これは、大きな違いです。

  日本語教育能力検定試験(以下、検定)は選択肢が5つ。

  日本語教員試験(教員試験)は選択肢が4つ。これは応用問題1、2も同様。

  正答率は上がりそうですね。

 2)出題内容について

  私は、検定対策の授業を担当していたことがあります。検定は長年実施されてきているため、ジャンルによっては出題内容がかなりマニアックなものがあったり、正解は基本的なものであるのに、非常にわかりにくい質問の仕方をしてきたりということがありました。

  今回の教員試験では、問題数は100問ありましたが、解答選択肢にならんでいる語彙は、マニアックなものはなく、質問の仕方も普通の印象でした。(あくまで私の感覚です。)

  その他、

  CEFRや日本語教育の参照枠に絡めた問題が4、5問ありました。

  検定の問題1の「仲間はずれ問題」は健在。でも、とても易しい。

  教授法の歴史で、誰が何を提唱という問題も出ませんでした。

  試行試験ということもあり、選択肢内に解答がでないもの、解答が複数生じるものがありました。(←これは帰り道同じことを話している方がいたので、私だけじゃないと思います。)

3)試験対策

 検定試験用の本をよく読み、太字になっている基本的な言葉を覚えることをおすすめします。

 同時に「日本語教育の参照枠」および「日本語教育の参照枠の活用のための手引」を読んでおくこともおすすめします。

応用試験1(聴解)45分50問

 1)出題の仕方

  検定の試験問題の種類(イントネーション・アクセントの有無・高低・プロミネンスの違いを聞く問題や、日本語母語話者と学習者の発音の違い、学習者の発音の間違いの原因を聞く問題)をほぼ網羅しており、問題順をばらばらにした印象があります。

  口腔断面図を選ぶ問題や、音声記号表が頭に入っていないと(または表をすばやく書けないと)解けない問題は、2つ程度だったと記憶しています。

 2)新しいもの

  一番印象に残った新しいものとしては、高低アクセントの形を答える問題の選択肢の表記です。

    検定) ◯/◯◯\◯

  教員試験) あ/たらしい\くつ

のように、検定では「◯を棒線でつなげたもの」だったのに対して、教員試験では、「文字表記があり、上がり目と下り目をスラッシュをいれたもの」にしてありました。

 この種類の問題が苦手な人には朗報ではないでしょうか。

 3)試験対策

  応用試験1については、検定の聴解問題を練習しておけば、対策として問題はないと思います。

応用試験2 120分60問

 1)出題内容について

  こちらに関しても、検定の試験3と同様の印象でした。

  具体的には、「新人教師とベテラン講師が授業後に相談をしたり」、「授業中に実施する活動に対して教案を見ながら、問題点や改善点について話し合ったり」している問題です。

  検定でもそうですが、実際に日本語教師として働いていれば、イメージができて、解きやすい問題だと思います。

 2)新しいもの

 2)‐1 問題内での設定

  出題形式は検定とあまり変わらない印象ですが、問題の中で出てくる教育環境が、現在の日本語教育の大きな3つの柱(留学生、就労者、生活者)に即したものになっていることです。

  問題に出てくる教案例の設定が、「クラス授業」であったり、「ボランティア教室」であったり、「週に◯回」と勉強できる時間が決まっていたりと、日本語教師として様々な環境について考えられ、対応できることが求められてくることを試験が示しているといえるでしょう。

 2)−2 選択肢の内容

  通常は、正しいものを選ぶ場合が多いですが、今回の試験では「間違っているもの」「正しいとはいえないもの」という聞きかたをしてくる問題が多かった気がします。この辺は検定とは違いがあります。

 3)試験対策

  これも、検定対策の問題3をやることで、対策ができると思います。しかし、上に書いたとおり、留学生向けの授業だけでなく、就労者や生活者のための授業も意識しておくことが良いと思います。

  文化庁の日本語教育のページには、就労者や生活者への日本語教育の養成講座のようなものもあるので、参加してみるのも良いと思います。イメージだけでなく、実践的な教案が作れるようになるはずです。

感想

 ざっと思い出したものを書いて、検定と教員試験をくらべてみました。

 上には書きませんでしたが、基本試験も応用試験2も、時間は十分足り、どちらも1時間近く余りました。

 検定対策の参考書や問題集や用語集を勉強することで良いと思います。それも、細かいことを覚えるよりも、太字で書いてある基本的なことだけでいいと思います。

 私は、5年前に検定を受験し合格しました。5年ぶりに上記の参考書(ただし第3版)を開き、2日合計8時間位で1冊を読み直しました。

 試験勉強のしかたについては、別の記事を書きたいと思います

 それでは、みなさんの気になる私の試験結果です。

試験結果

 

 こんな感じでした。158点/220点で正答率71.8%。聴解問題の練習が不十分だったので、こんなもんかと思っています。

 ググってみると、日経新聞の中では、合格率は約6割とありました。

 合格率6割というと、受験者の6割が受かるという感じがしますが、どうなんでしょうか?

 検定は、得点上位から20%に入れば合格という考え方です。正答率に関しては最低でも75〜80%無いと合格は難しいと言われています。私が合格したときの自己採点は75%でした。

 教員試験は、試行試験を受けた印象では、基本的なことしか訊かない試験だと思います。

 落とすための試験でなく、日本語教師としての知識と実践をイメージする能力があるかを測る試験のはずです。それは、日本語教師を増やすための試験のはずだからです。

 ここまで、いかがだったでしょうか?

 日本語教師を続けていくためには、教員試験合格が必須であること、同時に登録日本語教員の登録料がかかること、この2つがネックになるため、年輩の日本語教師から「経過措置期間まで続けて、あとは引退しようかしら」という話をよく聞きます。

 みなさんはどうお考えでしょうか?

 私は、経過措置の期間中にまだまだ変更があるのではないかと思っています。日本語教師の高齢化や、ニーズに対して全く足りていないという教員不足の現状をどう改善していくのか、今後の文科省の動きを見ていきたいと思います。

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