こんにちは。おおたです。
最近、我々ライターはそれぞれ自分にキャッチコピーを付けたのですが、私は「420H言語学系のせんせー」です!その通り、私は420時間日本語教師養成講座で主に、言語学系の科目(音声学音韻論、言語学、社会言語学、対照言語学など)を教える講師です。まんまです(笑)
音声学を一通り学び、日本語教育能力検定試験の受験を考えている方々のために、音声学の復習ができる記事を書き始め、今回は第2回目です。
第1回目は母音の話がメインだったので、今回は子音です。子音は、音声学の項目の中でも覚えることが沢山あって大変なので、インパクトがあるのではないでしょうか(^^;
子音はやはり盛りだくさんなので、2回に分けて書こうと思います。
音声学の復習①の母音では、母音の分類基準など確認した後、簡単な試験対策として、2つの発音を比べて、両者の違いを考える練習をしてみました。
試験対策的なことは次の記事でやりましょう。
子音の分類基準
子音は息の妨害がある音です。母音と同じく、子音も分類基準は3つあります。
(音声学の復習①の記事で、母音と比較しながら子音についても少し説明してあるので、読んでみてください。)
子音の分類基準
- 声帯振動の有無:有声音・無声音
- 調音点:息を妨害する場所(両唇、歯茎、歯茎硬口蓋、硬口蓋、軟口蓋、声門)
- 調音法:息を妨害する方法(鼻音、破裂音、摩擦音、破擦音、弾き音、半母音)
子音の場合は上記3つのどれかになります。
①声帯振動の有無
子音は有声音も無声音もあります(母音はすべて有声音ですね。)日本語では、カサタハパ行の子音が無声音、それに対応する濁音(ガザダバ行)それ以外の行(ナマヤラ行)と「ワ」が有声音です。
②調音点
日本語の子音の調音点、6つ「両唇、歯茎、歯茎硬口蓋、硬口蓋、軟口蓋、声門」は最低でも覚えておきましょう。
それぞれの場所は、口の中で舌を動かして触って確認してありますね。息を妨害する「場所」ですから、「どこで」妨害するのかです。
他に、この記事には詳しく書きませんが、語末の「ン」(「ほん」「パン」など)の「口蓋垂」、更にできれば、英語などにある「唇歯」「歯」「硬口蓋歯茎」も知っておきましょう。
③調音法
息を妨害する「方法」つまり、「どうやって」妨害するのかです。
日本語の子音には「鼻音、破裂音、摩擦音、破擦音、弾き音、半母音」があります。
こちらもこの6つは必須です。
また、この6つの中で、有声音と無声音があるのは「破裂音、摩擦音、破擦音」の3つで、それ以外「鼻音、弾き音、半母音」は有声音のみです。
調音法によって、調音点を「閉鎖」する場合、完全に閉じずに「狭め」を作る場合があります。こちらは口腔断面図の見方を説明する記事で詳しく書く予定ですので、お楽しみに。
この他、「震え音」「側面音」がありますが、特に「側面音」のほうは知っておくといいでしょう。英語の「l」(エル)の音はこの側面音になります。日本語のラ行の子音の調音法である「弾き音」を含め、3つ合わせて流音と言います。
以上、子音の分類基準をおさらいしました。
聞き取りの問題で2通りの発音を聞いて、例えば「舌が付いている『位置』が違う!」と思ったのに、選択肢の中から「調音法」を選んだりしないでくださいね。
子音を表で整理しながら覚えよう
子音の表の書き方は、ヒューマンアカデミー『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド第4版』(2019翔泳社)の「表6-1-3 子音の調音点表の書き方」(pp406~407)を参考にしています。このテキストは持っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。ぜひ見てみてくださいね。
ただ、上記のテキストの表は、「調音点」の説明のところで紹介されているので、表の中に「調音法」の種類の記載がなく、また、調音法は大雑把にしか分けられていません。
この記事を読んでいる人は、一通り音声学を学び終えていると思うので、調音点、調音表、さらに有声無声、の3つの基準で分類した表を書いてみましょう。これが書けると便利ですからね。
最終的にこのような表になればいいのであって、書く順番などに決まりはないので、ご自分の好きなように書けばいいです。ここでは、私が整理しやすいと思った方法を紹介します。上記の、ヒューマンアカデミーのテキストとは若干順番が違います。
・まずは、7×7の表を作り、
・6つの調音点(両唇、歯茎、歯茎硬口蓋、硬口蓋、軟口蓋、声門)を横に、
・6つの調音法(鼻音、破裂、摩擦、破擦、弾き、半母音)を縦に
並べて書いてください。
破裂、摩擦、破擦の3つには有声音と無声音の区別がありますから、真ん中に点線を引いて分けてください。上記の表ではそれぞれ上が無声音、下が有声音となっています。
日本語の音を書き入れていってください。
仲間が少ないもの(破擦音、弾き音、半母音)
表でもピンクで色付けしたところですが、まず、調音法「破擦音」「弾き音」「半母音」は種類が少ないので先に片づけてしまいませんか(笑)
- チ: 無声 歯茎硬口蓋 破擦音
- ツ: 無声 歯茎 破擦音
- ラ行:有声 歯茎 弾き音
- ヤ行:有声 硬口蓋 半母音
- ワ: 有声 軟口蓋 半母音
この5つをまず書き入れます。
破擦音は「チ」「ツ」、そして後述する語頭のザ行、弾き音はラ行のみ、半母音はヤ行と「ワ」のみです。これらの調音点は特に覚えにくいかもしれませんが(特にヤ行が硬口蓋、「ワ」が軟口蓋というのが不思議に感じるかもしれませんね。)、一度表を作ったら「この辺」ということを目と手が覚えてくれるでしょう。
(もちろん、自分で発音して体感してほしいですが!)
「チ」「ツ」は無声音なので、破擦音の上の段に書きます。
少し複雑なハ行について
ハ行はいくつかのエリアに分散されていますが、全て「無声音」で、「摩擦音」です。調音点が3つに分かれるのです。
- ハヘホ: 無声 声門 摩擦音
- ヒ: 無声 硬口蓋 摩擦音
- フ: 無声 両唇 摩擦音
「ヒ」が硬口蓋であるということが、覚えにくいかもしれません。
残りのカ、サ、タ、ナ、マ行、パ行
さて、次は残りの行、清音のカ行、サ行、タ行、ナ行、マ行、そして半濁音のパ行です。我々日本人が聞きなれた「あかさたなはまやらわ」に合わせて、こう並び替えますね。
この6つを書き入れていきますが、表の緑のところを見てください。カ行→マ行と行くにつれ、調音点は後ろから前へ、調音法は下から上に上がってきています。
- カ行: 無声 軟口蓋 破裂音
- サスセソ:無声 歯茎 摩擦音
- タテト: 無声 歯茎 破裂音
- ナヌネノ:有声 歯茎 鼻音
- パ行: 無声 両唇 破裂音
- マ行: 有声 両唇 鼻音
調音点は、カ行だけが軟口蓋で、あとは歯茎か両唇、調音法は、全て摩擦音より上に収まっていますね。
対応する濁音(無声→有声)
一つ前の緑のところで、対応する濁点があるものは書き入れましょう。
カ行、サスセソ、タテト、パ行、それぞれに濁点をつけて、一つ下の有声音の段に書くだけです。
- ガ行: 有声 軟口蓋 破裂音
- ザズゼゾ:有声 歯茎 摩擦音
- ダデド: 有声 歯茎 破裂音
- バ行: 有声 両唇 破裂音
ついでに鼻濁音も書いておきましょう。
- カ°行: 有声 軟口蓋 鼻音
イ段の口蓋化
イ段の子音は、口蓋化(硬口蓋化)という現象が起こりますよね。舌のつく位置が少し硬口蓋のほうへズレます。子音の調音点が歯茎であるナヌネノ、サスセソ、ザズゼゾの横、つまり歯茎硬口蓋のところにずらして、ニ、シ、ジを書きます。
- ニ: 有声 歯茎硬口蓋 鼻音
- シ: 無声 歯茎硬口蓋 摩擦音
- ジ: 有声 歯茎硬口蓋 摩擦音
※ザ行について
最後にザ行についてです。ザ行は単語のどこに現れるかによって調音法が変わるのでしたね。
(語中)
ザズゼゾ:有声 歯茎 摩擦音 ジ: 有声 歯茎硬口蓋 摩擦音
(語頭・「ん」の後・「っ」の後)
ザズゼゾ:有声 歯茎 破擦音 ジ: 有声 歯茎硬口蓋 破擦音
ちょっと、ザ行に意識して発音してみましょう。
語中のザ行 例)ちず せいざ とじまり ←摩擦音
語頭のザ行 例)ざっし じかん ぞうり ←破擦音
まとめ
この記事では、今まで皆さんが一度はやってきたであろう子音を一気にざーっと復習しました。表にまとめてみると、覚えやすくなりますよね。
ただ、やはり子音だけでこれだけの量があると、覚えるときには機械的に暗記して、頭に叩き込むというのは、大変だと思います。覚える過程で、必ず自分で発音して、唇や舌の動きなどを自分で「感じる」ということをしてみてください。
次の記事では、試験を意識して子音に関する簡単な練習問題を解いてみましょう。
参考文献
- ヒューマンアカデミー『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド第4版』2019翔泳社
- 猪塚恵美子・猪塚元著『日本語教師トレーニングマニュアル1 日本語の音声入門解説と演習 全面改訂版』2019バベルプレス
- 松崎寛・河野俊之 NAFL日本語教師養成プログラム7『日本語の音声Ⅰ』2009 株式会社アルク
コメント
コメント一覧 (2件)
私も日本語教育能力検定試験で音声学は一通り勉強しましたが、改めておおた先生の記事を見てみると、結構忘れていることが多いなぁと気が付きました!音声学は苦手意識がある方も多いようですが、私にとっては試験勉強の中でも比較的好きな分野でした。特に、日本語の音声学を学ぶことで、外国語の発音の仕方や聞き取りでその知識が活かせた点がよかったです。
これからのおおた先生の記事も楽しみにしています!
ケルビー咲野様
コメントありがとうございます。
音声学楽しいですよね。確かに、音声学の勉強を通して自分の舌の動きに意識が向くようになると、他の言語の発音もきれいになる、というのはあると思います!自分で発音できたら、聞き取りやすくもなりますしね。
音声学シリーズこれからも載せていく予定なので、よかったら読んでみてくださいね。