何がポイント?試験勉強の進め方【第1回】準備編

日本語教師の鈴木コウジです。

 『日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律』が成立し、令和6年から日本語教育は文部科学省の管轄に入ります。

 そして、

 1. 認定日本語教育機関の認定等に関すること

 2. 登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関の登録等に関すること

 3. 登録日本語教員の登録等に関すること

 の3つの分野で動いていきます。

 登録日本語教員の日本語教員試験について、記事を書きましたが、日本語教員試験(国家資格)と日本語教育検定試験(民間資格)が併存している状態はしばらく続くと予想されます。

 以前の記事で、日本語教員試験(以下、教員試験)と日本語教育検定試験(以下、検定)の違いについて紹介しました。教員試験の内容は、ほぼ検定の内容と重なることから、しばらくの間は、検定対策の勉強をしておけば問題はないと私は考えています。

 そこで、今回から検定対策から教員試験までカバーできる試験勉強の仕方について書いていこうと思います。

 今回は、準備編を書いていきます。

目次

学習必須50項目とは

さて、勉強するにあたって、まず知っておかなければならないことは、出題範囲です。「学習必須項目50」が出題範囲になります。

 学習必須項目50の内容については、「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改定版(平成31年3月4日)文化審議会国語分科会」のP37(スライド40)にあります。

 420時間の養成講座は、学習必須項目50が前提の授業内容ですし、日本語教育能力検定試験の試験範囲もこの中から出題されます。

 学習必須項目50に関連して注意が必要なことがあります。

登録日本語教員の資格取得に係る経過措置」を見てみると、出身の養成講座が、学習必須項目50に対応していない場合は、登録日本語教員になるために受験する試験が変わってくるということです。

 今後、日本語教師を続けていくためには、いつ養成講座を修了したのか?修了した養成講座が学習必須項目50をクリアしているのか?これも確認しておかなければなりません。

日本語教育能力検定試験に役立つ参考書は?勉強に必要なものは?

それでは、具体的に勉強に必要なものを紹介していきたいと思います。

参考書

1)『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第5版』

 学習必須項目50を全体的に勉強するには、これがベストだと思います。1冊にまとまっているので、勉強しやすいです。

 (今後の試験勉強の記事は、この本を元に書いていく予定です。ちなみに、私はヒューマンアカデミー出身ではありません。アークアカデミー出身です。案件でもありません。あくまで使いやすさで選びました。)

2)『増補改訂版 新・はじめての日本語教育1 日本語教育の基礎知識

   『増補改訂版 新・はじめての日本語教育2 日本語教授法入門

 こちらもおすすめです。教授法入門のほうは、受講生の段階でも実際の授業が想像しやすい内容といえます。

2冊揃えなければならないのがデメリットですが。

 1)については、これを書いている現在では「第5版」が最新です。古本を買う際は、最新版かどうかをよく確認しましょう。

あると便利なもの

用語集

1)『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 分野別用語集

 参考書とセットで買っておくのがよいでしょう。赤い暗記シートが付いてる点もおすすめです。

2)『新・はじめての日本語教育 基本用語辞典 増補改訂版

 辞典という名前のとおり、掲載用語が多いのが特徴。1)同様、こちらも参考書とセットで買っておくのがよいでしょう。

3)『改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための用語集

 出題頻度を元に選ばれた用語が載っている、人気の用語集です。

4)『新合格水準 日本語教育能力検定試験 用語集 改訂版

 個人的にはよく使っています。この用語集には、ネット版日本語教育能力検定試験用語検索「マンボウ」があります。アークアカデミーとしては、紙から移行してネット版を推奨しているのでしょう。今はスマホがあるので、ブックマークしておいて、紙媒体を持たないというのも一つの手です。

 用語集を買う際の注意点ですが、参考書と同様に、最新のものかどうか?をよく見て買いましょう。「改訂版」が出ていますので、まちがって古い版を買わないようにしましょう。

 上記の用語集は、私はすべて持っています。一つの用語を横断的に調べてみることがあります。その際に、説明が詳しいものとそうでないもの、用語によっては載っていないものがあったりします。その場合は、並行してネットで検索などがひつようになるかもしれません。それが現代的な勉強の仕方といえるでしょう。

科目ごとの専門書

 個人的には、参考書と用語集以外には、買う必要はないと思います。

 日本語教師として働き始めたら、少しずつ買い足していくというスタンスがいいと思います。

 受験勉強中に興味を持った科目や、苦手だからもう少し簡単なわかりやすい本を探すというのはいいかもしれません。

 しかし、検定では広く浅く知識をもっておくほうがいいでしょう。学習必須項目は50あるので、一つの分野を掘り下げて、多くの問題が出題されることはほとんどありません。

日本語教育能力検定試験でも日本語教員試験でも役立つ効果的な勉強法は?

スケジュール

 基本的なスケジュールは、『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第5版』P22に書かれているもので良いと思います。

 検定試験の本番を見据えて、4〜5か月の勉強期間を設定すると良いでしょう。

 ここからは、初めて検定を受験する方を前提に書いていきたいと思います。

音声分野と記述問題の扱い

 音声分野は、多くの日本語教師の苦手分野といえます。養成講座の担当講師の募集の際も「音声担当は外してくれ」という講師は多いです。勉強するのが手間で、教える際にもかなり自信がないとできないと思われる分野です。

 私自身、検定の聴解問題は苦手ではありますが、音声分野を教えることは苦手ではありません。非常にシステマチックな学問だと思っています。音声のルールをしっかりと理解しさえすれば、特別難しいことはないのですが、小学校から高校まで勉強とは全く別物の勉強という感じがして、苦手意識が生まれてくるのではないでしょうか。

 初めて日本語教育の勉強をする方にとって、「何を言っているのか全然わからない」というのが音声分野でしょう。国際音声記号も初めて見たら、音と記号を覚えるだけでもかなりのストレスです。

 ということもあり、音声分野はしっかりと腰を添えて、集中して勉強することをおすすめします。

 そして、記述問題も同様です。教授法や教室活動に関してある程度の知識と理解がある上で、記述問題に取り組まないことには、「何を聞かれているのか全然わからない、何を書いていいのかわからない」ということになります。

 ですので、音声分野と記述問題の2つは、試験勉強の初期には触れる必要はありません。音声分野と記述問題を除いた科目を全て終えてから、この2つに取り掛かりましょう。特に記述問題は最後の最後で構いません。

どこから勉強するのがいいのか?

 それでは、何から?どこから?勉強を始めたらいいの?ということになります。 しかし、やみくもに各分野・各科目から潰していくのは、それら同士のつながりがわかりにくく、効率的ではありません。

 やはり、全体から細部へという流れがいいと思います。

おすすめの流れ

 それでは、以下に勉強がしやすい流れを示します。

 (『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第5版』の目次の項目名を使用)

 ■第4部 言語と社会

 ↓

 ■第2部 第3章〜第4章

 ↓

 ■第3部 言語と心理

 ↓

 ■第2部 第1章〜第2章

 ↓

 ■第1部 第4章〜第7章

 ↓

 ■第1部 第1章〜第3章

 ↓

 ■第5部 社会・文化・地域

 ↓

 ■第6部 音声分野

 ↓

 ■第7部 記述問題

 参考書1冊(用語集もセット)で試験勉強を完結させるとしたら、上記をおすすめします。この流れなら、勉強した用語が以降の科目で出現することが多くなり、関連する事項がつながっていきます。

 養成講座の多くの受講パターンは、学習必須項目50(5分野16区分)を網羅した科目を順不同で受けていくパターンです。そのため、ある程度勉強を続けていくことで全体が見えてきて、科目同士のつながりを理解していくことになります。(現在はこのようなデメリットを解決するために、コース設定に工夫をこらした養成講座も出てきています。)

 次回以降は、この流れに沿って、覚えなければならない用語やポイントの解説をしていきます。

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる