こんにちは!SenSee編集部のハルです!
私は東京の日本語学校で9年間、欧米の学生を中心にクラス授業やプライベートレッスンを担当しています。
皆様は「アクティブ・ラーニング」という言葉を聞いたことがありますか?
文科省によると「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称※」だそうです。
※文科省「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」 、平成24年8月28日、用語集
ざっくり言うと、授業は学生主体で教師は脇役!学生は自分で考え、クラスメートと協働学習する中で気づきを得る、という学習法です。「教師が教えない授業」が理想とされています。
でも皆様が学生なら、教師に「教えない授業」をしてほしいですか?その授業にお金を払いたいですか?
例えば私の友人は、新人日本語教師のセミナーに参加したんですが、受講者同士で話したり発表する時間が多すぎて、早く講師が答えを教えてくれたらいいのに…と疑問に思ったそうです。
おそらくセミナー講師は、アクティブ・ラーニングの「教えない授業」をしていて、受講者に考えさせ、意見交換する中で気づきを得て欲しかったのでしょう。
でも友人は、セミナー講師のスキルにお金を払っているんだから、プロの文型導入を早く見せるべき、コツやテクニックを早く教えるべき、と不満顔でした。
このように、アクティブ・ラーニングの「教えない授業」は、学習者中心の授業なのに学習者が不満を持つ、という落とし穴があるんです!
今回は、日本語クラス授業で、アクティブ・ラーニングの「教えない授業」をする時に、どんな落とし穴があるかお話したいと思います。それではご一緒に見ていきましょう。
1.日本語クラス授業でアクティブ・ラーニング、教師は何をする?
日本語クラス授業でアクティブ・ラーニングをする際、教師のテクニックとしては、主に以下の二つがあります。
- 講義スタイルではなく、学生と会話をしながら授業を進める
- ディスカッション、ピア・リーディング、グループワーク等の協働学習をする。教師はファシリテーター(進行役)に徹し、教えない授業
でも②の協働学習で「教えない授業」は、安易にしないほうがいいかも…。以下、私の一考察です。
2.日本語授業で、アクティブ・ラーニングの「教えない授業」、学習効果あるの?
ディスカッション、ピア・リーディング、グループワーク等の協働学習は、学生の主体性に任せるので、教師は基本的に教えません。
学習効果があるかというと、あまりないのでは…というのが私の感想です。時間がかかる割に、得られる知識が少ないんです。
協働学習が合わない学生もいて、「教えない授業」ができない場合もあります。
以下、授業別に見ていきましょう。
2-1.ディスカッションで「教えない授業」ができない場合
私はよく授業でディスカッションをしていて、議論好きな欧米の学生に好評です。
2-2.ピア・リーディングで「教えない授業」ができない場合
ピア・リーディングのピアとは、仲間(peer)という意味で、学生が2名ないし数名で協力し合って読解し、設問に答えていく学習法です。
でもこれって、仲間の学生にやる気がないと、タスクが全然進まないんですよね。自分が相手に教えるのも面倒くさいし、逆に相手から教えてもらうのもプライドが傷つくし。
2-3.グループワークで「教えない授業」ができない場合
グループで旅行の企画を立てて、日本人ゲストの前でプレゼンする、というタスクをした時のことです。年配の学生は不満顔で、どうして若者と一緒にしなくちゃいけないんだ、という感じでした。
しかもグループワークって、教師が教えない時間が長時間続くんですよね。先生は何してるの?授業料払っているのに…と学生の不満が高まる危険性大!
3.まとめ
コロナ禍以降、私はアクティブ・ラーニングの「教えない授業」が時代に合わなくなってきたと感じています。なぜなら学生が、YouTubeで日本語を学び始めたからです。YouTubeの先生は5分ぐらいで、すぐに答えを出してくれます。
一方、アクティブ・ラーニングの「教えない授業」は、学生は協働学習から学ぶので時間がかかります。YouTubeに慣れた学生にとっては、時間がもったいない、分からない者同士で話しても学習にならない、先生早く教えてよ!となるかもしれません。
最近の私は、より「教える」ことに重点を置いています。思い返せば、学生に感謝された時って、私がきちんと教えた時なんですよね。先生のおかげで分かった!というのが、学生の授業満足度を上げるんです。
「教えない授業」は教えないので、学生から感謝されにくいんですよね…。
学生が求めるのは、楽しく分かりやすく「教える」先生!学生ニーズにない「教えない授業」を目指すよりも、「教える授業」のスキルを磨いていくほうが、教師としての価値が上がるかもしれませんね!
それでは、また別の機会に。
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