似ている文法の説明って難しいですよね?学習者から「これとあれはどう違うの?」って聞かれて困ったことがある方も多いのではないでしょうか。個人的に、初級文法の中で教えるのが難しい似ている文法第一位は「~ように」と「~ために」だと思っています!
- 希望の大学に入学できるように、塾に通っています。
- 希望の大学に入るために、塾に通っています。
などと例文を挙げたときに、学習者から『「~ように」「~ために」は一緒ですか?』なんて質問があると新人教師は緊張しちゃいますよね。
「~ように」「~ために」と言えば、意志動詞と無意志動詞の説明も必要となってきます。意志動詞と無意志動詞もは日本語教師でないと知らない動詞で、私たち日本語教師も勉強しなければならない動詞。みなさんはすぐ理解できましたか?私は結構時間がかかりました…。
今回は意志動詞・無意志動詞とは何か?そして、学習者にはいつ、どのように教えればわかりやすいのか、考察しました!ぜひ授業の参考にしてください!
意志動詞と無意志動詞って何?
自分の気持ちでできるもの、気持ちがあるものは意志動詞。自分の気持ちでできないもの、気持ちがないものは無意志動詞。
意志動詞:自分の意志・気持ちがあるもの
「学校に行きます」「冷蔵庫にジュースを入れます」「メールを書きます」など
無意志動詞:自分の意志・気持ちがない、しようと思ってもできないもの
「ビルが倒れます」「お昼になりました」「風邪が治ります」など
学習者に説明するときは、『「自分がしたい!と思います。思ったらできますか?できたら、意志動詞!できなかったら、無意志動詞』と私は言っています。
ただし、意志動詞と無意志動詞、どちらにもなる動詞がたくさんあるので、注意が必要です。以下に例を挙げます。
- 医者になります
- 野菜が大きくなります
どちらも「なります」という動詞が使われていますが、「医者になります」は自分の気持ちがありますが、「野菜が大きくなります」には自分の気持ちがありません。よって、「医者になります」は意志動詞ですが、「野菜が大きくなります」は無意志動詞です。
ここで忘れではいけないのが、可能形と可能の意味を持つ動詞です。可能形と「わかります」「治ります」などの可能の意味をもつ動詞は無意志動詞なので注意しましょう。
厳密に言えばもっといろいろありますが、「~ように」「~ために」を勉強する段階では、ここまでを理解できていれば、大丈夫です!
意志動詞と無意志動詞の教え方
私が意志動詞と無意志動詞を教えるときのポイントは、以下の2点です。
- 自分の気持ちがあります。意志動詞
- 自分の気持ちがありません。無意志動詞。可能形・可能の意味がある動詞も無意志動詞。
でも、実際の動詞を見ないとなかなかわかりづらいですよね。
「可能の意味がある動詞」と言っても、学習者にとっては「なんのこと?!」という感じでしょう。ですから、『「私は英語がわかります」「私は水泳ができます」「けがが治ります」はもう「できます(可能)」の意味があります。可能の意味がもうありますから、可能形はありません。「わかります」「できます」「治ります」は無意志動詞です』と具体的な動詞を挙げるほうがわかりやすいです。
そして、実際に「名詞+動詞」の文章を学習者に見せながら、意志動詞か無意志動詞かを判断する練習をします。
- 学校へ行きます
- 冷蔵庫にジュースを入れます
- ビルが倒れます
- お昼になりました
- 風邪が治ります
など、意志動詞か無意志動詞かがわかりやすいものから練習を始め、学習者に「意志動詞と無意志動詞がわかった!」という気持ちを持たせます。学習者に「わかった!」という気持ちを持たせてから、意志動詞と無意志動詞のどちらにもなる動詞について説明します。
- (私は)医者になります
- 野菜が大きくなります
「医者になります」は私の気持ちですが、「野菜が大きくなります」は私の気持ちではありません。
- 昔の彼がなかなか忘れられません。
- 昨日覚えた単語をもう忘れてしまいました。
「昔の彼を忘れたい!でも、忘れられない」には私の気持ちがありますが、「昨日覚えた単語をもう忘れてしまいました」には私の気持ちがありません。「覚えた単語を忘れたい!」という気持ちがあったら、大変ですね…。
- 爆弾を落とします。
- 財布と落としてしまいました。
「財布を落としてしまいました」にも、当然私の気持ちはありません。財布を落としたい!なんて人はいませんからね。「爆弾を落とします」は自分の意志で爆弾を落としていますから、意志動詞です。
ただし、「爆弾を落とします」は決していい表現ではないので、学習者の母国の状況を考慮した上で例文を提示したほうがいいでしょう。漫画やアニメなんかのシーンを見せながら「爆弾を落とします」と例文を挙げると、デリケートな問題に触れることなく例文が使えます。
意志動詞と無意志動詞を教えるタイミング
では、どのタイミングで意志動詞と無意志動詞を教えたらいいのでしょうか。例として、『みんなの日本語2』の掲載順を見てみましょう。
- 第36課
①大学に合格できるように、毎日勉強しています。
動詞・可能形(可能の意味を持つ動詞)+ように
②覚えた言葉を忘れないように、家でも復習しています。
動詞・ない形+ように
が掲載されています。
- 第42課
③家族と一緒に食事をするために、早く家に帰ります。
動詞・辞書形+ために
④子どものために、今から貯金をしています。
名詞+の+ために
が掲載されています。つまり、
- 動詞・可能形(可能の意味を持つ動詞)+ように
- 動詞・ない形+ように
- 動詞・辞書形+ために
- 名詞+の+ために
という順で学習するようになっているわけです。
では、いつ「~ように」と「~ために」の違いを教えるべきなのでしょうか。それは③を学習したあとです!「~ように」と「~ために」をどちらも学習すると、学習者は『あれ?「~ために」は「~ように」と同じ意味?」と思い、2つの違いが気になり始めます。
学習者が疑問に感じたときが、学習のチャンスです。同じ辞書形でも、意志動詞と無意志動詞の違いの説明を始めましょう!
まとめ
意志動詞と無意志動詞を説明するタイミングを再度確認しましょう!『みんなの日本語2』を使っている場合、
第36課
①動詞・可能形+ように
②動詞・ない形+ように
第42課
③動詞・辞書形+ために
ここまでを学習して、学習者が『あれ?「~ために」は「~ように」と同じ意味?」と感じたときに、意志動詞と無意志動詞の説明をするのがベストです。
意志動詞と無意志動詞は、どちらに所属するのか判断が難しい動詞が多いので、まずは明確に判断できる動詞で導入と練習をし、学生に「わかった!」という気持ちを持たせます。その後に、意志動詞と無意志動詞のどちらにも所属する動詞について、初級文法に必要な内容のみ説明すると、学習者の混乱を防ぐことができますよ。
学習者に「わかった!」と思わせる授業になるよう、がんばりましょう!
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