日本語教師のみなさん、こんにちは。
みなさんは中級文型「~うちに」ってどう教えていますか。
『学ぼう!にほんご 初中級』第2課をはじめ、数々のN3教材に登場する「~うちに」。
例えば「日本にいるうちに、たくさん旅行をしたいです。」のように、「~あいだに」という時間を表す文型なのですが、実は後件にくる文は、2つのパターンに限られます。
「~うちに」の後件パターンは2つだけというのを見逃して、単純に「~あいだに」だと教えてしまうと、学習者は大混乱。
何を隠そう筆者も、N3初心者だったとき、「~うちに」の授業で、後件パターンの制限を分析しきれず、冷や汗だらだら。そんな筆者もその後、繰り返し「~うちに」を教え、今では筆者ならではのノウハウができました(笑)
初級文型に比べて、くわしい教え方が分かりにくい中級文型。その中から今日は「~うちに」の導入方法から練習方法まで、まとめてご紹介します。
ぜひみなさんの授業準備に活用してくださいね。
「~うちに」2つの用法を大分析:「今がチャンス!」と「変化」
それでは、「~うちに」の用法について、見ていきましょう。
「~うちに」の用法とは、以下の2つです。
- 「今がチャンス!」
- 「変化」
「今がチャンス!」と「変化」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。
ここからは、例文を出しながら、「~うちに」の2つの用法をご紹介していきます。
「~うちに」の用法①:「今がチャンス!」
「~うちに」の1つ目の用法は「今がチャンス!」です。
「今がチャンス!」とは、もう少し具体的に言うと、次のようなことです。
前件の内容が続いているあいだにしか、後件で表現されていることができない。
例えば、以下の例文を見てみてください。
日本にいるうちに、たくさん旅行をしたいです。
「日本にいる」あいだは、「たくさん旅行をする」ことが可能ですが、「日本にいる」状態ではなくなる、つまり、「日本にいなくなる」と、「たくさん旅行する」ことは不可能になります。
前件の内容(=「日本にいる」)が成立しているあいだは、後件の内容(=「たくさん旅行をする」)も成立します。
しかし、前件の内容が成立しなくなる(=「日本にいなくなる」)と、後件の内容も成立しなくなります(=「たくさん旅行ができない」)。
だから、「たくさん旅行したい」のなら、「日本にいる今がチャンス!」というわけです。
「今がチャンス!」の例文には、他にも以下のような文があります。
- 子供が学校に行っているうちに、家の掃除をします。
- セールのうちに、たくさん買っておきましょう。
- コーヒーが温かいうちに、召し上がってください。
- まだ学生だから、今のうちにたくさん遊んでおこうと思っています。
どれも、私たちが日常的によく使う言い方ですよね。
「~うちに」の用法②:「変化」
「~うちに」の2つ目の用法は、「変化」です。
「変化」とは、くわしく言うと、以下の通りです。
話し手が知らないあいだに起こっていた変化について言う。
例えば、次のような例文が「変化」の「~うちに」の例文です。
・(中学校の同窓会で)しばらく会わないうちに、みんな大人になりましたね。
「みんなが大人になった」のは「しばらく会っていない」あいだの出来事。話し手(=「私」)が知らないあいだに、「みんなの成長」という「変化」が起こったことを表しています。
「変化」の例文には、他に以下のようなものがあります。
- テレビを見ているうちに、寝てしまいました。
- 電車の中で寝ているうちに、降りたい駅を過ぎてしまいました。
- 練習しているうちに、日本語が上手になりますよ。
- しばらく国に帰らないうちに、新しいビルがたくさんできました。
「今がチャンス!」の例文と同じで、「変化」の例文も、私たちが日常的によく言う言い回しばかりですね。
2つの用法別「~うちに」の導入方法
「~うちに」に2つの用法があることはお分かりいただけたでしょうか。
それでは、ここからは「~うちに」の2つの用法「今がチャンス!」と「変化」、それぞれの導入方法をご紹介します。
「今がチャンス!」と「変化」では、接続も違います。接続も一緒にご紹介します。
どれも筆者が実際の授業で繰り返し教えてきた導入方法です。
「~うちに」の用法①「今がチャンス!」の導入方法:「日本にいるうちに、たくさん旅行をしたいです」
ここからは「~うちに」の用法①「今がチャンス!」の接続と導入方法についてご紹介します。
「~うちに」の用法①「今がチャンス!」の接続
「今がチャンス!」という意味で使われる「~うちに」の場合、動詞のほか、い形容詞、な形容詞、名詞を接続させることができます。
動詞は辞書形と「~ている」の形のほか、ない形に接続させることもできます。
ない形に接続する「~うちに」の場合は、「~しない状態が続いているあいだに」という意味になります。
・コーヒーが冷めないうちに、召し上がってください。
ただ、「コーヒーが冷めない状態が続いているあいだに」って、どういうことなのか、状況が分かりにくいですよね?
・コーヒーが冷める前に、召し上がってください。
どうですか?分かりやすくなったでしょう?
「~うちに」の用法①「今がチャンス!」の導入方法
また、いろいろな形に接続する文型なので、導入のときにも、接続にバリエーションを持たせるのがおすすめ。
まずは、動詞の辞書形に接続する「~うちに」から。
教師:
Aさんは今、日本にいます。
東京、京都、大阪…たくさん旅行をしたいです。
国へ帰ったら、旅行できません。
日本にいる、今がチャンスです。
「日本にいるうちに、たくさん旅行をしたいです。」
い形容詞に接続させた例文には、次のような文があります。
教師:
Bさんはピザを食べます。
ピザは冷めると、おいしくないです。
温かい今がチャンス。おいしいです。
「ピザが温かいうちに、食べます。」
動詞のない形を使った例文は以下のようです。
教師:
Cさんはコンサートのチケットを買いたいです。
コンサートはとても人気があります。
すぐになくなります。なくなると、買えません。
「チケットがなくならないうちに、買います。」
- 今のうちにたくさん旅行をしたいです。
- 今のうちにピザを食べます。
- 今のうちにチケットを買います。
「今のうちに」がどういった状況を指しているのか、学習者と一緒に確認していくことも大切です。
例えば、「今のうちにたくさん旅行をしたいです。」というときの「今のうちに」は「日本にいる」状況を指しているということになります。
「~うちに」の用法②「変化」の導入方法:「しばらく会わないうちに、みんな大人になりましたね。」
ここからは、「~うちに」の用法②「変化」の接続と導入方法についてご紹介します。
<h4>「~うちに」の用法②「変化」の接続
「~うちに」の用法②「変化」の接続は、用法①「今がチャンス!」に比べるとシンプル。動詞にしか接続しません。
動詞の「~ている」の形に接続する場合と、ない形に接続する場合があります。
例)テレビを見ているうちに、寝てしまいました。
例)しばらく会わないうちに、みんな大人になりましたね。
「今がチャンス!」の「うちに」と続けて教える場合は、接続の違いに気を配る必要があります。
<h4>「~うちに」の用法②「変化」の導入方法
ここからは、「~うちに」の用法②「変化」の導入方法をご紹介します。
「今がチャンス!」の「~うちに」と続けて教える場合は、「『~うちに』には2つの用法がある」ことを学習者にもはっきり伝えましょう。
動詞のない形に接続する文の導入例です。
教師:
私は中学校の同窓会に行きました。
中学校を卒業してから、一度も会っていません。
中学校のときは、みんな子供でした。
中学校のときは、みんな子供でした。
「しばらく会わないうちに、みんな大人になりました。」
動詞の「~ている」の形に接続する文の導入例です。
教師:
Dさんは電車の中で寝ました。
寝ているあいだに、降りたい駅を過ぎてしまいました。
「寝ているうちに、降りたい駅を過ぎてしまいました。」
次も、動詞の「~ている」の形に接続する文の導入例です。
教師:私はアメリカに留学しました。
留学したばかりのとき、私は英語が下手でした。
毎日英語を練習しました。
英語が上手になりました。
「毎日練習しているうちに、英語が上手になりました。」
「変化」の「~うちに」は、後件が「大人になりました」、「上手になりました」のように、変化を表す表現をよく使うことが特徴です。
2つの用法別「~うちに」の練習方法:まずは用法別に練習、それから教科書へ
ここからは「~うちに」をもっと定着させるための練習方法をご紹介します。
『学ぼう!にほんご 初中級』第2課の場合、教科書にも練習問題がありますが、「今がチャンス!」と「変化」の2つの用法が混ざったものになっています。
教科書の練習問題で、用法がミックスされている場合、導入からいきなり教科書の練習問題に移るのは、学習者が混乱するもとになります。
そこで、まずは用法別に練習をし、最後のまとめとして教科書の練習問題をすることを強くおすすめします。
「~うちに」の用法①「今がチャンス!」の練習方法2選
それでは、まず「~うちに」の用法①「今がチャンス!」の練習方法を見ていきましょう。
後件で「チャンス」を表現することを学習者が理解しているかどうか。そこが練習のポイントです。
「~うちに」の用法①「今がチャンス!」の練習①:後件を作る
ここでは、教師が前件を指定して、後件を学習者に言ってもらうという練習をご提案します。
- 1)会社に入ったら忙しくなるので、学生のうちに、 。
- 2)雨が降らないうちに、 。
- 3)<日本語学校の所在地>にいるうちに、 。
3)の<日本語学校の所在地>には、みなさんがお勤めの日本語学校がある場所を入れてみてください。
例えば、「東京にいるうちに、スカイツリーへ行きたいです。」とか、「大阪にいるうちに、お好み焼きをたくさん食べたいです。」などが答えです。
「~うちに」の用法①「今がチャンス!」の練習②:「○○にいるうちに~」会話練習
さらに、3)の「大阪にいるうちに、お好み焼きをたくさん食べたいです。」を発展させて、会話練習にするのは、いかがでしょうか。
A:Bさんはこの学校を卒業したら、どうしますか。
B:(例:東京の大学に進学します)。
A:そうですか。(例:大阪)にいるうちに、したいことはありますか。
B:そうですね。(例:お好み焼きをたくさん食べたいです。)
「お好み焼きをたくさん食べたいです。」の部分に、学習者それぞれの答えが出てきて、楽しいと思います。
「~うちに」の用法②「変化」の会話練習2選
次に、「~うちに」の用法②「変化」の練習方法を見ていきましょう。
後件に「変化」を表す文が来ることを学習者が理解しているかどうかが練習のポイントです。
「変化」の「~うちに」では、シチュエーションを固定しての会話練習がおすすめ。
- 同窓会について話す
- 日本語の練習方法を尋ねる
2つのシチュエーションを使った会話練習をご紹介します。
「~うちに」の用法②「変化」の会話練習①:同窓会について話す
「変化」の「~うちに」を使った会話練習その1は「昔の恋人について話す」というシチュエーションです。
A:Bさん、このあいだ中学校の同窓会に行ってきたんでしょう?
どうでしたか。
A:しばらく会わないうちに、(例:みんな大人になっていました。)
「同窓会」のほか、「昔の恋人に会った話」や「久しぶりに帰国したら町の様子が変わっていた話」など、アレンジが可能です。
みなさんも、いろいろアレンジをしてみてくださいね。
「~うちに」の用法②「変化」の会話練習②:日本語の練習方法を尋ねる
「変化」の「~うちに」を使った会話練習その2は「日本語の練習方法を尋ねる」というシチュエーションです。
A:先生、すみません。
(例:日本語で上手に話したい)んですが、どうしたらいいですか。
先生:そうですね。
(例:毎日日本人と話している)うちに、(例:上手になりますよ)。
Aさんのセリフには、「日本語で上手に話したい」のほか、「漢字が覚えられない」、「文法が分からない」など、学習者が日頃抱えている悩みが入ります。
「~うちに」の練習にもなり、教師にとっては、学習者のニーズもさりげなくリサーチできちゃいますね。
今回は中級文型「~うちに」の教え方についてご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
ぜひ、みなさんの授業でも活用してみてくださいね。
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