作文を書かせる前の準備時間とフィードバック 「作文授業の基本」をまとめました

目次

作文の授業をする前に絶対やるべきこと3選

作文の授業は「学習者に作文を書かせること」だけが重要なのではありません。実は学習者が作文を書く時間よりも、書く準備をする時間のほうが長くて、作文の能力をあげるには書く準備の時間がとても大切なんです。

そのために教師がやるべきこと3選、ご紹介します!

①原稿用紙の使い方を確認

まずは教師が原稿用紙の使い方を復習してください!

「日本人だから大丈夫!学生のときに原稿用紙を使っていたし」などという理由で、原稿用紙の使い方を調べないで学習者に作文を書かせると、間違った内容を伝えてしまうことがあります。実際「間違えて教えてしまった!」という声を聞いたことがあります。

学習者がよく間違えているのは次のような箇所です。

  • 句読点の形や使い方
  • 行の最後にカギ括弧や拗音などがきた場合の対処方法 
  • カギ括弧や拗音、促音などの書き方
  • カタカナ語の長音の書き方
  • 段落を変更するときは1マスあけること

百聞は一見に如かず。書き方は説明するより、実際に書かせてみるのが一番です。いつまでもカギ括弧や拗音を書く位置がおかしい学習者がいますから…。

留学試験(EJU)の記述や、日本での進学を視野にいれていない学習者はわざわざ原稿用紙に書かせなくてもいいかもしれませんよ。

②書かせる目的・授業の目標を明確に!

作文は「書く目的」を明確にしたほうが授業がしやすいです。

作文を書く目的は次のどちらでしょうか?

  • 語彙・文法のアウトプットのために作文を書く
  • 学習者が意見を述べるために書く

目的によって、作文を書く前の準備方法を変えると効果的ですよ。

語彙・文法のアウトプットが目的の場合

語彙・文法のアウトプットのために行う作文。初級から中級の作文に多いですね。

作文を書くときに、使いやすい文法を復習してから書かせます。これだけで学習者はずいぶん書きやすくなるんですよ。

手順は次の通りです。

STEP
教師は既習文法の中から、作文を書くときに使いやすい文法をピックアップしておく
STEP
教師は学習者に質問をして、作文に書く内容を答えさせる
STEP
教師は学習者が話した内容を板書しながら文法の復習をする

これだけではわかりにくいですよね。具体例を挙げて説明します。

例えば初級のクラスで、作文のテーマが「私の趣味」の場合。

教師 「〇〇さんの趣味は何ですか」

学習者「写真を撮る」

教師 「え?まえに習った文法を使って言ってください」

学習者「写真を撮ることです」

教師の板書「私の趣味は写真を撮ることです。」
(この後に、「辞書形+ことです」の復習をする)

こんな感じです。まぁ、実際の授業ではこんなにスムーズ学習者は答えられないかもしれませんが…。

つまり、教師は質問をしながら、学習者に作文に書いてほしい内容を答えさせるのです。そして、学習者が答えた内容を既習文法を使って板書するのです。

ちなみに「私の趣味」がテーマだったら、私は学習者に質問しながら下記のような内容を答えさせます。

私の趣味はジョギング水泳です。
休みの日は電気屋にカメラを見に行ったり、本屋に写真の本を見に行ったりしています。
カメラのレンズの値段を見、びっくりしました。
カメラは高いので買えません
ジョギングは体を強くするために、始めました。
お金をためて、新しいカメラのレンズを買おうと思っています
機会があったら、大阪マラソンに出たいです。

ざっとこんな感じです。教師が既習文法を把握しておくことがポイントです。

授業時間に余裕がある場合は、ワークシートなどを使って、学習者ひとりひとりに質問の答えを書かせてもいいかもしれませんね。

意見を述べることが目的の場合

意見を述べることが目的の作文は、初級後半から多くなってくるタイプの作文ですね。

例えば、作文のテーマが「フードロスをなくすために私ができること」だった場合。学習者には「私ができること」を書いてもらわなければなりません。

一番困るのはクラス全体が「フードロスを知らない。興味がない」という雰囲気になることです。そんな雰囲気になるまえに、学習者に興味を持たせましょう!

手順

STEP
テーマを言わずに、テーマに関する簡単な話をしてみる
STEP
「フードロス」という言葉を説明する
STEP
あなたができること(していること)を聞く

最初にテーマをいうと教室がざわつきます。「フードロスって何?え?何を書くの?」と私語が始まってしまうので、世間話風にフードロスの話をするのです。

例えば、こんな話から始めてみます。

  • 訳あり商品を安く売っているアプリを知っているかどうか聞く
  • 買うときに、賞味期限をチェックするかどうかを聞く
  • (だいぶ古い情報ですが)2006年新聞広告クリエイティブコンテスト入賞作品「賢い主婦はスーパーで手前に並んでいる古い牛乳を買う」を見せて主婦が賢い理由を考える

これなら、アプリを知っているか知らないか。賞味期限を気にするか気にしないか、を答えるだけなので、話しやすいのです。「賢い主婦はスーパーで手前に並んでいる古い牛乳を買う」の広告はインパクトがあるので、学習者を引きつけられます。

https://www.pressnet.or.jp/adarc/adc/2006/no1_b.html
2006年度 新聞広告クリエーティブコンテスト 最優秀賞 畑中大平さん
(はたなか・ますひろ、ジェイアール東海エージェンシー)
 

このように、最初の質問のハードルを低くして、学習者が意見を言いやすい状況を作ります。簡単な話から始めると、最初は「え?私は何もしてないよ」と言っている学習者でも、「フードロスを減らすために、アプリをダウンロードしてみる」「多少賞味期限が切れていても食べる」などと、自分ができることが言えるようになります。

③フィードバック方法を決め、学習者にも共有する

学習者は教師の添削を見て、自分の間違いの原因がわかりますか?私は中国語を勉強していたとき、中国人の先生が使った添削記号の意味がよくわかりませんでした。添削記号って、全世界共通言語じゃないんですよね。

私は作文添削後に返却するとき、ペンの色や斜線、波線などの理由も学習者に伝えています。私が添削のときにしていることは、こんな感じです。

  • 間違い(語彙の間違い・文法の間違いなど)に応じて蛍光ペンで色分けして、線を引く。
  • 不必要な文字は赤の線で消す。
  • 必要な文字は赤で付け加える。
  • 「いい」「おもしろい」と思った部分には、青の波線とgoodの文字を書く

頻繁に見られた間違いはクラス全体で共有し、みんなで間違いを訂正する、という時間を設けてもいいですね。ただしその際は学習者が書いた文面をそのまま使わないこと。みんなに見られる(しかも間違った部分を!)のが嫌な学習者もいますので!

おまけ:作文添削で使える教師の小ワザ

添削、たくさんあると大変ですよね。作文添削が少しでも楽になる小ワザをご紹介します。

  • 添削は続けて5人までしかしない
    •  理由:長時間読んでいると、頭がぐちゃぐちゃになります
  • 作文内容がバラエティー豊かになるテーマを選ぶ。または、バラエティー豊かになるように工夫する。
    • 理由:同じような内容の作文を何十人分も読むのは大変です
  • 添削するときは、二重線ではなく一本線。波線ではなくラインを引く。
    • 理由:波線は書くのに時間がかかります。定規でサッとひける「線」のほうが速い。二本線を引くより、一本線を引くほうが速い。
  • 学習者の間違いはメモし、授業に活かす

これをするだけで、労力が軽減されます。お試しください!

まとめ

作文を書かせるときは、書かせる目的別に授業準備をすることがポイントです。私たち日本人が小学生のときにした「タイトルを聞いたら、すぐ書き始める」というのは避けたほうがいいでしょう。

型苦しい作文の授業にしたくないときは、イラストをヒントにストーリーを考えたり、SNSに載せる文章を考えるのも楽しいでしょう。

どうぞ、これらヒントに楽しい作文の授業にしてください。

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