- 「彼のことが好きすぎる!」
- 「綺麗すぎるオンナ」
なんて表現をよく耳に(目に)しませんか?
でも、日本語の教科書では間違いなんです。ご存知でしたか?
先日、夫が買い物中に「この椅子、気持ちよさそうすぎるわ~」と言ったときには、「え?どういう表現よ?!」と思わず突っ込んでしまいました。
「~すぎる」の文法は、便利すぎて(笑)、最近は日本語の教科書とは違う意味合いで使われているようです。
しかし、日本人として本来の意味を知っておきたい。
日本語教師なら当然正確に意味を把握しておいて、わかりやすい授業につなげたいですよね?
日本語の授業で役立つポイントをお伝えしちゃいます。
“すぎる”の正しい使い方とは?
「~すぎる」はズバリ、良くないことやマイナスイメージである内容に使われます。
日本語教育でよく使用されているテキスト、「みんなの日本語Ⅱ」には次のような文が掲載されています。
- お土産をかいすぎました。(動詞)
- ごはんをたべすぎました。(動詞)
- この部屋はせますぎます。(形容詞)
- この方法はふくざつすぎます。(形容動詞)
「買いすぎ・食べすぎ・狭すぎ・複雑すぎ」、、、これらの言葉は全部良くないこと、マイナスイメージを持つものですよね?
「~すぎる」には「好ましいことじゃない」という意味があり、良くないシチュエーションで使うのが正しい使い方なんです。
“すぎる”の文法導入&練習で気をつけるべきこと【みんなの日本語第44課】
日本語教師歴約20年の私が思う、「~すぎる」の文法導入&練習で気を付けるべきこと2つ!
- 「~すぎる」には「過剰に~する」「程度を越えて~する」というマイナスの意味があることを学習者に説明する
- 私たちの日常生活に溢れている「彼のことが好きすぎる」「このケーキ、美味しすぎる」などの表現は基本の練習には入れない
この2つです。
もちろん、文法説明をするときには工夫が必要です。
教師:「~すぎる」には「過剰に~する」の意味があります。
なんて言っても、学習者には通じませんからね(-_-;)
だから、具体的に・どんなマイナス面があるかを確認するのが効果的です☆
教師:食べすぎるとどうなりますか?
学習者:お腹が痛くなります。
教師:部屋が狭すぎます。いいですか?悪いですか?
学習者:悪いです。
教師:どうしてですか?
学習者:部屋に物が置けませんから。
こんな感じで学習者に具体的、且つマイナスな出来事を挙げさせると、わかりやすいと思います。
「みんなの日本語Ⅱ」のテキストには一見、「これはいい意味じゃないの?」と感じる「~すぎる」が載っています。
- 泣いているんですか。……いいえ、笑いすぎて、涙が出たんです。
- 最近の車は操作が簡単ですね。……ええ。でも、簡単すぎて、運転がおもしろくないです。
「笑う」ことはいいことのように思いますが、「笑いすぎて、涙が出た」と言っています。なぜでしょう?学習者と一緒に考えてみるのもいいですね。
「操作が簡単」だとどうしておもしろくないのか、発言者の心境が理解できるかどうか、確認する必要アリです。短文の意味が理解できない学習者もいるかもしれません。
そしてそして!上級学習者を満足させるポイント!!
■いい意味でも「~すぎる」を使うときがある。
合格発表のときなど、「嬉しすぎて、泣いてしまう」なんてことがありますよね。
この「嬉しすぎて、泣いてしまいました」の「嬉しすぎ」はいいことですが、「~すぎる」の文法を使っても間違いではありません。
私はかなり理解度があるクラスで授業するとき、“いい意味でも「~すぎる」を使う”と説明しています。
まとめ
街中に「好きすぎ」「おいしすぎ」「綺麗すぎ」etc…、いい意味での「~すぎる」が溢れています。
学習者も耳にする(目にする)かもしれません。聞くチャンスが多かったら、使ってしまう可能性だってあります。
教師が無意識に日常生活で使っていたら、教室で使ってしまうかもしれません。
だからこそ、日頃から正しい意味を認識しておく必要がありますね。
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