新型コロナウイルスの影響で、働き方が大きく変わりました。
日本語教師のみなさんも、オンラインレッスンなどで新しい働き方に対応しているのではないでしょうか。
ビジネスマンに日本語を教えている方もいるかと思います。
リモートワークをしている学習者に、これまでのビジネスコミュニケーションの教え方をしていてもいいのでしょうか?
コロナ禍には、コロナ禍の新しい働き方に合わせたビジネスコミュニケーションの指導が必須です!
この記事では、私が実際に使ってみてよかった日本語テキストをご紹介させていただきます。
コロナ禍で変化した働き方へ…ビジネスコミュニケーションの教え方も変えるべき!
コロナ禍になって早1年半…。
それ以前は出勤するのが当たり前でした。
満員電車に揺られて会社に行き、机を並べて仕事をし、取引先に出向いたり、出張したりし、満員電車に乗って帰宅する…そのようなビジネスマンが多かったのではないでしょうか。
対面勤務が基本でした。
それが、コロナ禍では自宅で作業するリモートワークが増え、会議もZoomなどを使ったオンライン会議になり、働き方が大きく変わりました。
新しい働き方に合わせた、新しいビジネスコミュニケーションを学習者に教えるときがやってきました!
私は今、企業研修でエンジニアの方に日本語を教えています。
その際、指定されたテキストは『”異文化”トラブル解決のヒント!日本人も外国人もケース学習で学ぼう ビジネスコミュニケーション』(金孝卿 近藤彩 池田玲子 著 日経HR)です。
まさにコロナ禍に合わせたビジネスコミュニケーションに最適な日本語テキストだと感じたので、ご紹介します。
リモートワークになって実際に学習者が困っていることとは?
この日本語テキストは2020年11月に出版されています。
それで、テキストの中に「新型コロナウイルス感染症」、「リモートワーク」、「オンライン会議」などのことばが出てきます!
場面ごとに使えるケーススタディなので、学習者に合わせて必要なところをピックアップして教えることができます。
私は日本のIT企業で、正社員で働いている外国人に日本語を教えているのですが、以前、私の住む地域で緊急事態宣言が発令されたとき、授業がオンラインレッスンになりました。
それで、今後もそのような可能性があることを授業前のオリエンテーションで学習者に話しました。
その流れで、対面勤務かリモートワークかを受講生に聞いてみたところ…
答えは、「今は対面勤務だけど、リモートワークの時期もあった」とのことでした。
リモートワークをしてみた感想を聞いてみると、全員
「対面勤務のほうがいい。話しながら仕事をしたほうが働きやすいし、やる気が出る」
と話していました。
リモートワークでは、仕事上のやりとりもすべて、チャットなどの文字ベースなので、細かいニュアンスがわかりにくいそうです。
このテキストではリモートワークをどのように取り上げているのか?
本書は全12のケースから成り立っています。前書きによると、著者が中国、フランス、日本国内でのインタビューをもとに書いたものだそうです。
その中から、学習者の状況に似たケースを選ぶことができます。
この内容を受けて、さまざまなトピックスについて、議論することができました。
まずは、「敬語は難しいか」という質問です。
全員が「難しい」と回答しました。
理由は尊敬語、謙譲語の使い分け。ウチとソト、特に自社では上司にさん付けで呼びますが、社外では呼び捨てにする等は日本語特有の敬語表現で、学習者を混乱させます。
次に、「会社のオンラインミーティングでは顔を出すか」という質問をしてみました。
「話している人以外は出さないことが多い」とのことでした。
特に女性陣は、化粧をするか、部屋がどう見られているか気になるという話で盛り上がりました。
顔を出さないで、作業するだけだったら、化粧する必要はないですもんね。
最後に、「オンラインミーティングで自分の日本語が正しく伝わったか気になるか」聞いてみました。
「気になる」と全員が答えました。
そのためにしていることとして、いろいろな工夫が見られました。言い換え、翻訳、聞く、調べるなど…。
このように、リモートワークが当たり前になったからこそ、身近な話として盛り上がりました。
コロナ禍でビジネスコミュニケーションを教えるのに適した、日本語のテキストを使ってみたレッスン!
次に実際にテキストの流れに沿って、私がどのように授業を進めたのかについて書いていきます!
このテキストでは全テーマが以下の構成になっています。一つ一つ、「本書の構成と特徴」を参考に、簡単に見ていきます。
- テーマ:12のケース
- キーワード:本文に出てくる。語彙の確認や、キーワードに注意して読むことができる。
- ウォーミングアップ:先輩と後輩や、日本人と外国人との自然な会話。
- 本文:テキスト1ページで、状況、どのような問題が発生したか、困っていること(問いかけ)
- 語彙リスト:本文の語彙リスト(日本語、読み方、英語)
- 英語訳:本文の英語訳。確認の意味でも使える。
- タスクシート:討論のための質問
- グループで学ぶ人へ:話し合いをもとに、登場人物へのメール
- 一人で学ぶ人へ:Aさん、Bさんの異なる意見が書いてあり、自分の考えがまとめられる。
- CASEの背景:各ケースのもとになった事実の解釈
- コラム:ケースの内容をさらに深掘りしたもの
- 応用タスク:テキストの状況と学習者の現実(職場や実践)と結び付けて考えるトピックス
業務の効率化について考える授業の流れ
このテキストを使って、どのように授業を進めたか流れを書いていきます。
このクラスではITエンジニア4人に対するグループレッスンです。私は2時間で一つのトピックを進めています。
リモートワークになって、書面での報告が増え、かえって業務の効率が下がったのではないかという内容でした。
4分で読み、登場人物とそれぞれの意見や立場について、質疑応答しながら板書で整理しました。
ここで、何が問題となっているのかを3分でまとめました。
それぞれ日報、週報、月報、年報、クレーム報告、セミナー参加報告の語彙の意味を確認。改めて、業務報告は誰が何のために書いているのかについても意見交換をしました。
4人のグループレッスンですが、この授業では意見交換をメインにしたいため、「一人で学ぶ人へ」の問題提起を使用しました。
業務の効率化について学習者はどう思っているのか?
内容は「リモートワークになって、チャットなど書面での報告が新たに加わり、かえって業務効率が下がった」というもの。
それに対して学習者たちの意見は以下のとおりです。
- こまめな業務報告自体が大変
- 問題が発生した際、報告書の作成に時間がかかることがあり、仕事に集中できない
- 時間単位での細かい報告は、仕事の優先順位が変わったときに対応が大変
普段の業務に照らし合わせて意見を述べることができました。
その問題解決の方法は「毎日、短時間のオンライン会議で問題点と結果のみ報告する」ことを提案するという意見でまとまりました。
また、業務報告を書く意味についての意見も聞きました。
上司が読んで進捗を確認したり、問題を把握したりしているとの答えでした。
なぜ保管しているか聞くと、問題が起きたときに振り返るためだと思うとのこと。
リモートワークにおいて、業務報告の方法を変えるべきか、今までと同じように都度都度報告するのがいいか意見を読み、自分の意見をまとめて書いてもらいました。結果、全員がリモートワークにおいて業務報告を変えたほうがいいという意見で一致。
登場人物に対してのアドバイスとして、「毎日、オンライン会議で今日のやること、課題、問題について口頭で報告+メモを送ることを提案する」という意見が出ました。
この業務報告についてのトピックで、これだけの内容について話して意見交換をすることができました。
引き続き、この日本語テキストを使って「コロナ禍時代のビジネスコミュニケーション」の授業をしていきたいと思います。
まとめ:コロナ禍を生きるビジネスマンが、対話を通してビジネスコミュニケーションを学ぶのに最適の日本語テキスト!
以上が、私が実際にこの日本語テキストを使って、ビジネスマンに授業をした一例です。
テキストに合わせて、話し合うことで自分の意見を言ったり、他の学習者の意見を聞くことで考えを深めたりすることができます。
「リモートワーク」「オンライン会議」などの新しい働き方になったことでリアルタイムで起きている問題について話し合うことができます。
そして、考えたことで自身の働き方を振り返るきっかけにもなっているようです。
コロナ禍で、リモートワークが日常化した今、新しいビジネスコミュニケーションに困っている日本語学習者も多いのではないでしょうか。
また、日本語教師も今までと同じ対面勤務が基本となっている教材では教えにくさを感じているかと思います。
ぜひ、授業で使ってみてください。
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