みなさん、こんにちは。鈴木コウジです。
前回は初級レベルの作文について書きました。
今回は中級レベルの作文を取り上げます。
中級レベルですので、N3を勉強中〜N2合格者ぐらいのレベルを考えています。これではだいぶ範囲が広いようですが、作文という科目の中では、私の経験上、あまり大きな差と感じたことはありません。
なぜなら、中級レベルの学生に「自分の国で、作文は得意でしたか?」と訊いて、ほとんどが「得意じゃなかった」と答えるからです。ということは、作文を書く能力(私は思考をまとめる能力だと思います)は、ほぼイコールコンディションといえます。
文型や語彙はたくさん知っている方がよいですが、知っていても、作文を全然書き始められない学生…みなさんも思い当たるのではないでしょうか。
今回はそんな学生が、頭の中を整理し、書き始めていけるやり方を紹介したいと思います。
それは、ずばり!マインドマップによる作文です!
というわけで、第3回は、
- 『なぜ学生が書き始められないのか?』を外すな!
- 『マインドマップによる文章作成』を外すな!
です。
なぜ作文を書き始められないの?
みなさんのクラスに、こんな学生はいませんか?
作文の授業が始まって、教師による説明が終わった。用紙を配り、自分の作業の時間になってもずっと白紙のままの学生。そして、そのまま時間が終わってしまい、宿題になって持ち帰ってしまう学生。さらに、他の学生をコピーして同じような作文を出す学生や、宿題も出さずに作文を出さない学生。
作文を書かなきゃと思ってはいるが書けない学生、作文をなんとか回避したい学生と様々です。(本当に書きたくない学生はやり方が分かったとしても書かないはずですので、ここでは置いておきます。)
作文が書けない、手を付けられない学生の理由は何なのでしょうか?まずは、理由を探って学生を理解しましょう!
考えてないわけじゃない。書く内容は頭にあるけど…
書かなきゃと思っている学生は、作文のテーマや内容について、ちゃんと考えています。
私が
どうしたの?
先生の説明、わからなかった?
と聞くと、大抵の学生が
説明はわかりました。テーマもわかってます。
作文は頭にあります。
(書きたいことは頭の中にできあがっているという意味)
といいます。
私が「じゃあ書けるよね?」というと、用紙を見たまま黙って、動かなくなってしまいます。
作文を書き始められない学生の理由とは
- 書くことがまとまっていない
- =考えがまとまっていない
- 書きたいけど日本語の文法や語彙がわからない
ここでは、①書くこと(=考え)がまとまっていない学生へのアプローチを紹介します。
書きたいけど書けない学生が、作文を書き始めるには?
テーマについて、書きたいことや書かなきゃいけないことが学生の頭には浮かんでいます。浮かんでは消えたり、あることを考えると、それに付随する別のことを考えたり、関係することが別に浮かんできたりと、考えれば考えるほど、書き始められなくなってしまいます。
パラグラフ・ライティング(のようなテンプレートがある作文)では、書くべき内容と書くべき場所が決められているので、書き始められないということはありません。
書くべき内容に関しても、予めそれに関する質問に答えれば、その答えが書くべき内容になっています。これが、パラグラフ・ライティングの良さと言えます。
考えをまとめるために、頭に浮かんだことを紙に書き出していくだけでも、作文が書けるようになっていきます。これは、下書きよりも前のメモ書きといえます。
しかし、これでは書きたいことなのか、テーマについての細部なのか、自分の意見なのか、一般的な知識なのかわかりません。
だから、このただのメモ書きの状態から、整理したり、まとめたりする作業が必要になります。
もちろんこのような作業を経て作文を書いていってもいいですが、それを簡単に行うことができるのがマインドマップです。
それでは、マインドマップによる作文を見ていきましょう。
マインドマップによる作文の進め方
頭の中に浮かんでは消えるアイディアを、書き出し、整理したりするには、マインドマップが非常に役立ちます。
マインドマップで検索すれば、解説サイトや図もたくさん出てきます。ビジネス関係であったり、今回のような作文関係ももちろん出てきます。最近では、マインドマップが簡単に書けるアプリもあります。
私も作文の授業に取り入れるために色々なサイトを参考にして、授業で簡単に実施できるものにしました。
今回は、
『私の国(街)で有名な料理』をテーマに作文を書く授業
を例に説明をしていきます。
マインドマップによる思考整理法を定着させるために、まずは、1コマ全部(もっと長くてもいいです)をマインドマップを書くことに費やすことをおすすめします。
そして、マインドマップを書いたことがある学生や作文が得意な学生もいると思いますが、慣れるまで(3〜4回)は、しっかりとマインドマインドマップを書くことを指導しましょう。
手順1 用紙の配布
まず、テーマを発表します。
次に、マインドマップを書く用紙を配ります。
※用紙について
私はB4用紙の半分にマインドマップを書くスペース、もう半分に作文を書くスペースを作ったものをよく使っていました。裏表にマインドマップと作文スペースでも良いです。別々の用紙にするとなくしてしまったりするので、1枚にするのが良いと思います。
手順2 マインドマップの説明をする
マインドマップの書き方を説明します。
- 1)今日のテーマになるものを真ん中に書く。
- 2)真ん中に書いたものに関連するものを周りに書いていき、それをつなげる。
- 注)文章では書き込まない。単語でよい。
- 3)関連するものとして書いたものに、さらに関連するものを書いて、それをつなげていく。
[ポイント]
関連するものを出すことに、詰まってしまう場合がある。
→元の言葉に対して、5W1Hで質問をして、その答えを書き込んで、つなげていくと良い。
手順3 作文にしていく。
- 言葉の繋がりが一番長くなっている部分や大きく膨らんだ部分を作文として書いていく。
膨らんだ部分がいくつかできれば、話の展開が大きくなり、文章構成などの勉強につながっていくことが期待できる。- 注)長くなっている部分や大きく膨らんだ部分を、学生自身が見て「書きたいのはここじゃない」と言うこともあります。その場合は、本当に書きたい部分をもっと広げるように指導しましょう。枝分かれや関連付けをもっと増やすように考えさせましょう。
- マインドマップで単語レベルで書いていたものを、5W1Hの質問を補足したりしながら、文章として書いていく。
- 節や接続詞などの言葉に注意し、作文全体を整え、作文完成へ。
私が作文指導にとマインドマップを使うようになったきっかけと、やってみてよかったこと
実際にマインドマップを使った作文授業をやってきた経験を少し話したいと思います。
日本語教師になって2年目ぐらいから試行錯誤しながら作文授業をやっていました。マインドマップを使おうと思ったのは、作文を書ける学生とほぼ白紙の学生がはっきりしたクラスがあったからです。
ほぼ白紙の学生は、「どう?」と聞くたびに「頭にあります」といって、毎回2行ぐらいしか書けていませんでした。ある時、その学生に少し長めに質問をしたんです。何気なく5W1Hで質問をしていたのですが、その学生は全部私の質問に答えられていました。
会話で質問すれば答えられる。それをまとめて書けないだけということでした。似たようなほぼ白紙の学生にまた5W1Hで質問をしたところ、普通に答えられる。本当に頭の中に答えはあって、考えをまとめて書き出すことができない、書き始めるきっかけがわからないという状態だったということがはっきりしました。
少し調べるとマインドマップというやり方が出てきて、これは!と思い、簡単に実施しできる形に作り変え、クラスで試した結果、ほぼ白紙で出す学生はいなくなりました。
また、マインドマップで作文の授業を行うと、「国でこれ、やったことがあります」という学生が数人いました。このやり方でよかったんだと喜んだ記憶があります。
その後も、初級の教科書が終わったぐらいの学生の作文授業では、マインドマインドマップを取り入れています。
まとめ
今回は、マインドマップによる作文を紹介してきました。
『なぜ学生が書き始められないのか?』
→考えがまとまっていないから。
→頭の中で考えていると、目に見えないので、いつまでたっても書き始められない。
書き始めるきっかけができない。
『マインドマップによる文章作成』
→自分の考えが目に見えるという利点が大きい。
→自分が書きたいことがまとまって、作文が書き始めやすくなる。
パラグラフ・ライティングは、作文を始めるにはとても使いやすいですが、パターン通りにしか書けなくなってしまう恐れや、みんな同じような作文になってしまう恐れがあります。
文法や語彙が増え始めたN3ぐらいからは、マインドマップを使った作文で、テンプレート作文から次のレベルへステップアップを目指しましょう。
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