日本語教員試験と日本語教育能力検定試験は何が違う?メリットデメリットでみてみよう!

日本語教師の鈴木コウジです。

前回、「日本語教員試験」の試行試験を受けてきた記事を書きました。

記事内では、日本語教員試験と日本語教育検定との試験内容の違いについて書きました。

日本語教員試験に合格すると国家資格「登録日本語教員」取得となり、文科省の認定日本語教育機関で働くことができます。

現在の日本語教師の有資格者は、経過措置期間(令和6年4月1日〜最大令和15年3月31日まで)に、日本語教員試験に合格し、登録日本語教員にならなければなりません。

今回は、国家資格(登録日本語教師)と民間資格(日本語教育能力検定合格)のメリット・デメリットを書いていきます。

目次

日本語教員試験の立ち位置

まず前提として、2024年(令和6年)4月1日から、日本語教育全体が文科省の管轄になります。(現在は文化庁管轄。)

今までの日本語教師としての条件は、

・大学の日本語主専攻または副専攻の単位取得

・文化庁届出受理の日本語教師養成機関で420時間以上研修

・日本語教育能力検定試験合格

のいずれかです。

上記のいずれか1つ以上であれば、日本語学校で働くことができます。

現在、問題となっているのは、

今後、日本語教師として働くならば、現在の有資格者は、経過措置期間(令和6年4月1日〜最大令和15年3月31日)中に「日本語教員試験」に合格し、登録日本語教員にならなければならないということです。

日本語教員試験の受験に際し、保有資格に応じて、日本語教員試験の「基本試験」「応用試験1(聴解)」「応用試験2」「実践研修」の免除が存在します。

(試験免除については、こちら(PDF)をご覧ください。)

そこで、日本語教員試験と日本語教育能力検定試験について、もう少し詳しく見ていきましょう。

日本語教員試験と日本語教育能力検定試験のメリットとデメリット

 以下では、それぞれの試験を受験者と合格者に分けて、そのメリットとデメリットをあげていきます。

日本語教員試験について

 令和6年4月以降に文科省が認める日本語学校で働くために必要。令和6年3月時点で、試行試験しか情報がなく、本試験の難易度や合格基準が不明。

受験者にとってのメリット

 ・令和6年4月以降、文科省が認める日本語学校で働いていくことができる。

受験者にとってのデメリット

 ・420時間修了者は、基礎試験は免除されるが、応用試験は受験が必要。そのため、応用試験の受験勉強をしなければならない。

日本語教育能力検定試験について

 民間資格として残り、しばらくの間は国家資格と併存するとみられている。

検定試験受験者にとってのメリット

 ・検定試験の勉強は、日本語教員試験の内容と重なるため、検定試験対策の勉強をすることで日本語教員の試験対策になる。

検定試験合格者にとってのメリット

 ・合格していることは、日本語学校への応募の際、教師自身が日本語教師の質の保証の一つとして示せる。

 ・日本語学校側も、雇用している日本語教師の質の担保につながる。

  (→これは私が働いていた日本語学校で、新コース設置の際に、雇用している日本語教師のうち検定合格者が少ないと、日本語教育有識者から実際に指摘をうけたことがあります。)

 ・基本給(コマ給)のアップが見込めるかも。(これも私が日本語学校に応募した当時、実際に言われた経験があります。「420時間修了ならコマ給1600円スタート、検定合格なら1700円スタートになる」と言われました。)

検定試験受験者にとってのデメリット

 ・検定合格を目指す場合、学習範囲が非常に広く、合格率が低い

検定試験合格者にとってのデメリット

 ・恩恵を受けられる検定合格者は、令和6年3月31日までの合格者と限られてしまった。(→こちら(PDF)の(E-1)と(E-2)の者)

まとめ

 ここまでで、それぞれの試験の受験者・合格者にとってのメリットとデメリットを挙げてきました。

 みなさんも、「試験勉強して合格しなければならないなら、経過措置期間いっぱい働いて、それが終わったら引退しようかしら」という話を耳にするのではないでしょうか?

 私の考えとしては、日本語教師として働きたいなら、この1,2年のうちに日本語教員試験に合格することを目指したほうがいいと思います

 5年間の経過措置期間が終われば、試験の内容が確立し始め、現在の検定試験のように難易度も上がるのではないかと推測します。そうなる前に、まだそこまで確立する前に、合格するのが得策だと思っています。

 経過措置期間ぎりぎりまで一度も受験をしないでいて、最後の年に初めて受験、そして、不合格、資格なしというのが最悪のシナリオです

 もちろん、経過措置期間中に受験者が伸びないようであれば、文科省もテコ入れをするでしょう。しかしそれを期待したりするのはナンセンスでしょう。

最後に

国家資格化の恩恵は?

 ここから先は私の完全な主観で書いていきます。

 岸田首相は、外国人労働者確保のため、外国人ウェルカムというスタンス。受け入れに必要な日本語学校および日本語教師の増加が必要。そのため、日本語教師を国家資格にした。

 一方で、日本語学校の収入は留学生数に左右される(=国の方針や入管のさじ加減に影響される)。学校の収入が安定しないため、日本語教師の収入は上がらない。その結果、日本語教師を辞める。日本語教師の減少。

 同時に、日本語学校は文科省管轄になり、5年間を目処に全国の日本語教育機関がチェックを受け、精査され、問題がある機関は廃校や停止処分を受ける。文科省は、日本語教育機関を整理したいという思惑があり、整理=減少が予想できる。新規日本語学校は年間でも10〜15校程度のため、簡単に増加することもない。

 ここまでの流れは、日本語教師であれば全員が想像できることです。

 私は、日本語教師が国家資格になったところで、日本語教師人口が増えるとは思えないし、留学生の受入人数が決まっている日本語学校が収入面で潤うことはないと考えています。

 「外国人流入に必要な仕事だから日本語教師を国家資格」と決め、「職業としての地位を上げてあげますよ」と政府がやったとしか私は考えていません。

 本当に国家資格とするなら、看護師や介護福祉士のように、処遇改善を数年に一度行うという制度で日本語教師を守るようにするのが当然だと思っています。収入が安定することが日本語教師が求める第一のことであり、それが解決されないままでは日本語教師の増加は望むべくもないと思います。

 こう考えていくと、日本語教師の資格が国家資格になっても、特に恩恵を受けるとは考えられません。

 

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる