中国人学習者に教えることになったら~教師歴約20年の私が配慮していること~

私が初めて勤務した日本語学校には中国人のみのクラスがありました。現在オンラインで日本語を教えている学習者も中国にルーツがある学習者です。

国際交流基金が発表した「2018年度海外日本語教育機関調査結果 (速報値)」を見ても、中国人の日本語学習者の数は上位。

そんなこんなで教える機会が多い中国人。お隣の国だけれど、知らないことがいっぱい!今回は中国人に教えるときに役立つ情報をお届けします。

目次

“中国人”をひとくくりにしない

中国は場所によって違いが大きく、そこに住む人の特徴も異なります。授業をするとき、その違いがかなり影響してきます。違いを活かすも殺すも教師次第なのです。

母語が中国語とは限らない

中国語が母語の学習者が日本語を勉強すると、次の3点のミスが目立ちます。

  • 長音・促音がうまく発音できない
  • 名詞修飾のとき「父にもらった時計」のように、名詞の前に「の」を使いがち
  • 南方出身地の学習者はた行・だ行・な行・ら行の発音の区別が苦手

この3点は日本語を教えたことがある人なら、知っている人も多いですね。今回はこれ以外のことについて話しますね。

漢族と少数民族

中国は漢族と50以上の少数民族で成り立ち、漢族が9割以上を占めています。漢族の母語は中国語であることがほとんどですが、少数民族は民族の言葉が母語であることが多いです。

少数民族の中には、家庭でも学校でも民族の言葉を使い、中国語は学校で習って覚えたということもあり得ます。

私の知り合いの少数民族の方は

中国語は子どものときから、聞いたり書いたりしていたからできるけど、話すのには苦労した。大学受験のときに話す中国語を勉強した

と言っていました。

中国語の方言

中国語は方言が多く、方言が違うと通じません。私は中国語を習ったとき、一緒に広東語も勉強してみましたが、広東語は発音も文法も別物でした。

出身地によって、発音やよく使う単語が異なり、私でも中国語を聞けば、その人が北方出身か南方出身かがわかります。

私は中国で「中国語(標準語)が上手な地域ランキング」を目にしたことがあります。それくらい中国国内でも差が大きいので、中国人だからといって、みんな同じ母語干渉(外国語を勉強するときに、母語の影響を受けて間違うこと)だと思わないほうがいいですよ。

★大切なこと★

  • 中国人だから中国語話者だ、と考えてはいけない
  • 母語干渉(外国語を勉強するときに、母語の影響を受けて間違うこと)は出身地や方言によって異なる

省が違えば別世界

中華人民共和国は23の省・5の自治区・4の直轄市・2特別行政区に分けられていて、そのうち、8つの省と自治区が日本より大きいです。

その地域の言語がはっきり違うように、各地域の特色も違います。私は2年間上海に住んだあと、広東省に行きましたが、到着した日に「違う国に来たー!」と思うくらい、言葉と街の雰囲気が違いました。

中国の北と南では人の体格も違い、一昔前までは女性のメイクも違いました。「〇〇の男性は中国で一番優しい」とか、「△△出身の人はのんびりしている人が多い」などと言われるくらい地域性がはっきりしています。

だから私は中国出身の学習者だとわかると、出身地の詳細も確認します。

出身地や特色を知っていれば、次のような盛り上がらない会話はしなくても済みますよ。

(広東省出身の学習者に)

教師「〇〇さんは中国人なんですね。私も中国へ行ったことがあります。万里の長城を見ました」

学習者「はぁ、そうですか。私は万里の長城を見たことがありません。遠いですから…」

★大切なこと★

  • 「中国出身」と聞いたら、出身地まで確認。出身地の特色を覚えておく。

デリケートな問題への対処方法

隣国との問題、民族の問題、歴史上の問題など、デリケートな問題がありますよね。授業のときに話題になったらどうしましょうか?

私流のルールはズバリ!

  • デリケートな問題にわざわざ触れるようなことはしない
  • デリケートな問題になると思う発言はしない

これです。

しかし、教師から話題をふらなくても、学習者から聞かれることがありますから、簡単な言葉で、簡潔に自分の意見が言えるようにしておくことは重要です。

「簡単な言葉で簡潔に」がポイントです。「簡単な言葉で簡潔」じゃないと、誤解を生むかもしれませんからね。

学習者の中には自分の感情を押さえきれなかったり、相手の意見を受け入れられなかったりする人もいるかもしれません。話したあとにクラスが悪い雰囲気にならないよう、時と場合を考えて学習者に意見を言わせるほうがいいでしょう。

おまけ フリートークで盛り上がる話題

ここで、中国人クラスで盛り上がる話題をご紹介します。私は今まで百発百中これらの話題で楽しみました!

食事

何と言っても中華料理!地域差もあるので、話題は尽きません。

でも、食材や調理法の言葉は初級の学習者には難しいです。そんなときは、食べるときのマナーや習慣を話してみてください。食べるときの習慣にも地域差があるんですよ。

お金

学習者の話によると、中国人は友人に収入を聞いたり、お金の貸し借りをするのは特別なことではないようです。食事をしたときに1人の人が支払う、ということも多々。日本人はよく割り勘をすると話すと、「なんてケチくさい!」と笑われたことがあります。

両国のお金の歴史、お祝い金の金額、収入の話など、積極的に話してくれる学習者が多いです。

結婚&出産

中国人の親は、恋愛は勉強の邪魔になるからと、学生時代の子どもの恋愛は許さないけれど、大学を卒業したらすぐに結婚を期待。結婚したらすぐに子どもを持つことを期待。

こんな社会の雰囲気?親からのプレッシャー?があるようで、各自熱い想いを持っているようです。

まとめ

 教師を始めたばかりのころは日本語を教えるんだから、日本を知らなくちゃ!と思っていました。でも、実際は相手のことを知らないと、教えられないんですね。

学習者は「先生は私達のことに興味を持ってくれている」と感じれば、友好的に話をしれくれます。

今回書いた内容は、私が「学習者のことを知らなければ」と思うようになってから始めたことばかりです。どうぞ、試してみてください。

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この記事を書いた人

木村 文香のアバター 木村 文香 楽しすぎる授業がウリ

日本語教師17年目。日本や上海、広州で教える。広州では大学院に通いながら紹介で得た週4日のクラス授業と週5日の個人授業を引き受ける。教えた場所は日本語学校、大学、企業の語学研修などだが、なぜか初級の授業はこの17年ずっと担当している。

学習者からの授業評価で高評価なのは文法説明、面白かった評価コメントは「準備がいいです」と書かれたこと。現在は育児のため、オンライン授業をメインにしている。

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