音声学の復習③音声学的に何が間違えてる?(子音を中心に)~能力試験合格を目指そう

こんにちは。420H言語学系のせんせー、おおたゆきこです。

音声学の復習シリーズ3つ目です。前記事「音声学の復習②子音の整理~能力試験合格を目指そう」では子音の3つの分類基準を確認し、日本語の子音を分類しました。

一通り子音の復習を終えたので、今回は能力試験を意識して簡単な練習をしてみましょう。

能力試験では、学習者がある単語を間違えて発音した後で、教師が正しい発音を示しているのを聴いたうえで「学習者の発音上の問題は何か」=学習者と教師の発音の違いは何だったか、を考える問題が出題されます。

きちんと両者の違いを聞き取れたことを前提に、二人の発音の違いは何だったのか咄嗟に判断して選択肢から「調音点」だの「調音法」だのを選ばなければなりません。音声を聴きながらの試験なので、一つの問題でゆっくり迷っていたら次の問題の音声を聴き逃してしまいます。(語学系の聞き取りの試験って、自分のペースでできないのがストレスですよね!)

でも、誤りの種類を選ぶ系の、特に「子音」と「母音」にフォーカスしている問題は、対策をすればそれなりに点数が取れますからっ(笑)!取り上げられる学習者の発音上の間違いは、ある程度決まっています。

この記事では、学習者の発音のありがちな間違いで、問題集などでもよく見かけるものを3つに分けてご紹介します。まずはこれ!と思うもの3つなので、もちろんこれだけではないんですよ。全部書くのは無理です(笑) 沢山問題を解きながら、色々な「発音上の間違い」を学んでいってくださいね。

目次

違い①濁点「゛」の有無→声帯振動

濁点は「゛」ですね。学習者が濁点「有り」、その後で教師が濁点「無し」で発音していた、またはその逆だった場合は、間違いの種類はほぼ「声帯振動の有無」となります。

例えば、以下の問題はどうでしょうか。下線部は何が違うか、選択肢の中から選んでください。

① オネガイ   オネカイ
② バンゴウ   パンゴウ

選択肢: 声帯振動  調音点  調音法

はい、①も②も答えは「声帯振動」ですね。

① ガ: 有声 軟口蓋 破裂音
  カ: 無声 軟口蓋 破裂音

② バ: 有声 両唇 破裂音
  パ: 無声 両唇 破裂音

カ/ガ、パ/バ、タ/ダなどは迷わず選択肢の「声帯振動」を選べばいいのですが、注意しなければならないものもあります。

以下は「声帯振動」と他の何かが違う例です。

・チ・ツ・ザ行がある場合

こちらも選択肢から違う点を選んでみてください。

① コウチ  コウジ   (ジとヂは発音は同じ)
② ザッシ  サッシ

選択肢: 調音点  声帯振動  調音点と調音法   声帯振動と調音法   

両方とも「声帯振動と調音法」になります。

① チ:  無声 歯茎硬口蓋 破擦音
  ヂ/ジ:有声 歯茎硬口蓋 摩擦音 (語中のザ行)

② ザ: 有声 歯茎 破擦音  (語頭のザ行)
  サ: 無声 歯茎 摩擦音 

思い出していただきたいのは、「ザ行」は語のどこに現れるのかによって、調音法が変わるということです。

  • 語中のザ行:摩擦音
  • 語頭、「っ、ん」の後のザ行:破擦音

でしたね。

①ですが、まず「コウチ」の「チ」は、「ツ」と「語頭のザ行」と同じ破擦音ですね。もう一つはこの「チ」に濁点がついて「ヂ(ジ)」になったのですが、「コウジ」…「ジ」は3拍目に来ていますから、これは語中の「ヂ」…ということは、摩擦音です。

②では、「サッシ」の「サ」は摩擦音ですね。これに濁点がついて「ザ」となりますが、「ザッシ」…語頭の「ザ」、つまり破擦音です。

①②とも声帯振動だけではなく、調音法も変わっているんですね。

両者の発音に濁点の有無の違いがあり、そこに破擦音である「チ」「ツ」、そして破擦音にも摩擦音にもなり得るザ行があるときは、声帯振動のほかに何かがある可能性があるので、気をつけましょう。とはいっても以下のような場合は声帯振動しか違いがないですよね。

③ ツカレタ  ズカレタ   (ヅとズは発音は同じ)
④ カサ   カザ

③ ツ:   無声 歯茎 破擦音
  ヅ(ズ):無声 歯茎 破擦音(語頭のザ行)
④ サ: 無声 歯茎 摩擦音
  ザ: 有声 歯茎 摩擦音 (語中のザ行)

ただ、これらはザ行を日本語の一般的な発音をした場合の話であり、例えば、語頭のザ行を摩擦音で、または語中のザ行を破擦音で発音してしまうことも、日本語学習者にはあり得ます。

「語中のザ行だから、摩擦音で発音しているはずだ」などという判断ではなく、自分の耳できちんと破擦音と摩擦音のどちらで発音したか、聞き取れるようになりたいものです。

・鼻濁音カ゜行がある場合

例えば、

① ダイカ゜ク  ダイカク
② ガッコウ   カ゜ッコウ

①は「声帯振動」と「調音法」、②は…今度は「調音法」のみですね。

  • カ: 無声 軟口蓋 破裂音
  • ガ: 有声 軟口蓋 破裂音
  • カ゜:有声 軟口蓋 鼻音

ちなみに、この鼻濁音(カ゜行)ですが、鼻濁音になる場合とならない場合がありましたね。①ダイカ゜ク(大学)のように、語中のガ行が鼻濁音(カ゜行)となるのはいいのですが、②ガッコウ(学校)のように語頭に来るガ行は鼻濁音にはならないので、カ゜ッコウと発音するべきではありません。

違い②直音と拗音「イ段 + ャ、ュ、ョ」→調音点

拗音はイ段の音に小さい「ャ、ュ、ョ」がついた音ですね。以下の例を見てください。

① シツレイ   シチュレイ
② イス   イシュ
③ ドウゾ  ドウジョ

選択肢: 調音点  調音法  舌の前後位置  唇の丸め

どれも違いは「調音点」です。舌の前後位置、唇の丸めは「母音」の分類基準ですから、ここでは選びません。

① ツ: 無声  歯茎  破擦音
 チュ: 無声 歯茎硬口蓋 破擦音

② ス: 無声  歯茎  摩擦音
 シュ: 無声 歯茎硬口蓋 摩擦音

③ ゾ: 有声 歯茎   摩擦音
 ジョ: 有声 歯茎硬口蓋 摩擦音

音声学の復習②子音の整理でも話した口蓋化(硬口蓋化)という現象、覚えていますか。イ段の子音は、舌のつく位置が少し硬口蓋のほうへ近づくのです。シツレイがシチュレイに、ドウゾがドウジョになったりするのは、舌のつく位置が歯茎よりも後ろに下がり、歯茎硬口蓋となってしまっているのですね。
以下の例も見てください。

④ ダイガクニ   ダイガクヌィ

これも違いは「調音点」ですね。こちらは①~③と逆で、口蓋化するべきところで口蓋化していない場合になります。

ニ: 有声  歯茎硬口蓋  鼻音
ヌィ:有声  歯茎     鼻音

「ニ」はイ段の音なので口蓋化し、ナヌネノよりも調音点が後ろに下がり、歯茎硬口蓋となるのが正しいのですが、口蓋化せず(つまり歯茎のまま)発音し「ヌィ」となる学習者はいます。

能力試験で、教師と学生の2つの発音が、「同じ行にある子音であり、一方が拗音」という場合の両者の違いは、「調音点」を疑ってみるといいです。

違い③ダ行ナ行ラ行・バ行マ行→調音法

この記事でご紹介するよくある違いはこれで最後です。もう少し頑張って見てみましょう。以下のそれぞれの違いは何でしょうか。選択肢から選んでください。

① カエラナイ  カエナナイ
② シドウ  シロウ
③ ナガノ  ダガノ
④ ムスコ  ブスコ

選択肢: 調音点  舌の高さ  調音法  舌の前後位置  

どれも、今度は「調音法」ですね。

① ラ: 有声  歯茎  弾き音
  ナ: 有声  歯茎  鼻音

② ド: 有声  歯茎  破裂音
  ロ: 有声  歯茎  弾き音

③ ナ: 有声  歯茎  鼻音
  ダ: 有声  歯茎  破裂音

④ ム: 有声  両唇  鼻音
  ブ: 有声  両唇  破裂音

①~③で出てきたのは全て、ダ行ナ行ラ行ですが、全て有声音、歯茎音で、調音法だけが違いますね。しかも、鼻音、破裂音、弾き音全て調音点は「狭め」ではなく、「閉鎖」させるものです。

良かったら、もう一度ダデド、ナヌネノ、ラ行を発音して、舌は歯茎の中でもほぼ同じような位置についていることを感じてみてください(ラ行の「リ」は若干の口蓋化が起きますけどね。)こうやって考えてみると、とてもよく似た音で、間違えやすいのもわかる気がしますね(笑)

④は「両唇」バージョンです。こちらもついでに、マ行とバ行を発音して唇がくっつくことを確認してください。

まとめ

以上、能力試験の音声パートの問題が解けるようになることを目指して、大きく3種類の違いを見てきました。学習者と教師の発音の違いを考える問題では、今回練習したような子音の分類基準の名前(調音点、調音法など)を選択肢から選ぶもの、そして、ご存じかと思いますが 適当な「口腔断面図」を選ぶ問題も出題されますよね。

口腔断面図もなかなか、苦労されるところの一つではないでしょうか。

音声学の復習シリーズ、次の回は口腔断面図の見るべきポイントをおさらいしましょう。

参考文献

  • ヒューマンアカデミー『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド第4版』2019翔泳社
  • 松崎寛・河野俊之 NAFL日本語教師養成プログラム7『日本語の音声Ⅰ』2009 株式会社アルク
  • 松崎寛・河野俊之 NAFL日本語教師養成プログラム8『日本語の音声Ⅱ』2009 株式会社アルク
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この記事を書いた人

太田 悠紀子のアバター 太田 悠紀子 420H言語学系のせんせー

日本語教育歴9年(2020年現在)。エジンバラ大学大学院応用言語学専攻修士課程修了後、ノボシビルスク市「シベリア・北海道」文化センターに日本語教師として1年勤務。帰国後は東大や上智など、大学を中心に様々な機関で日本語の授業を担当する傍ら研究活動にも参加。

現在は複数の日本語教師養成機関で言語学系科目を担当しており、特に語用論、音声学を得意とする。前職は証券会社ファイナンシャルアドバイザー。

日本語以外の関心事は美容(料理、色彩、化粧品関連資格所持)、踊ること(ジャズダンス、バレエ)。Ms. Earth Japan 2019ファイナリスト。

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