どうやって叱ってる?相手に合わせた言葉選び

こんにちは!

日本語学校で勉強をしなかったり、規則を守らなかったりする学生がいたら、みなさんはどう対処しますか?なだめる、怒る、叱る、諭す、母国語がわかるスタッフに任せる…。 

できることなら、学生とは穏やかに話したい。注意をすることで教室を嫌な雰囲気にしたくない。でも、叱らなくてはならない場面は出てくると思います。

「叱る」とは、相手を今より良い方向に導くために注意をすることです。教師はこれを避けるわけにはいきません。

だけど、叱り方を教わる機会ってなかなかありませんよね。日本語教師になりたての頃、わたしは学生をどう叱ったらいいのかわかりませんでした。

自分より年上の学生もいるし、注意を聞いてくれないのは自分が未熟だからなのかもしれない。そう思って強く注意ができないこともありました。いろんな学生と会って試行錯誤していくうちに、少しずつですが、どのような言い方をしたらいいのかがわかってきました。相手に聞いてもらえる言葉選び、一緒に考えてみませんか。

目次

学生から教えてもらったこと

専任講師一年目のある日、初級クラスの小テストでカンニングをした学生がいました。教壇から見ていてすぐに気が付くくらい首を伸ばして、隣の学生の答案を覗いたんです。わたしより年上の男子学生でした。ナメられていたのかもしれません。これを見逃しては学生のためにならない。でも、テスト中だしその場で声を上げるわけにもいかない。

そのときの学校のルールでは、カンニングが発覚したらすぐに答案を回収し、0点にすることになっていて、学生もそれを承知していました。

わたしは無言で答案を取り上げ、授業後残るようにと書いたメモを渡しました。ちゃんと残ってくれるか心配だったのですが、その学生は帰らずに待っていました。

呼び出したはいいものの、どう話したらいいのか悩みました。初級だったこともあり、うまく伝わらないかもしれないので、怖い顔を作ろうとしたのを覚えています。

テストは自分の力を知るためのもの。友達の答えを見て良い点数を取ったって、あなたのためにならない。JLPTやEJU、大学の試験ならすぐに失格。困るのはあなただよ。

というようなことを身振り手振りで話しました。ずっと唇をかんでいた学生は、涙ながらに英語と日本語を交えて話してくれました。

自分はほかの学生より年上だから、いい点数を取らなければいけないと思った。前のクラスでカンニングをしてもバレなかったから、大丈夫だと思ってやってしまった。先生にそんな顔をさせるつもりはなかった。今、とても恥ずかしい。わたしは変わらなければならない。注意してくれてありがとう。

こちらこそ、話してくれてありがとうという気持ちになりました。このようにきちんと受け止めてくれる学生は少ないかもしれません。でも、ちゃんと向き合えば伝わるのだということを彼から教えてもらいました。

学生を叱ってもいいの?

日本語学校にとって、学生はお客様のようなものだという話を聞いたことがあります。確かに、学生がいないと学校は成り立ちません。

それもあってか、叱ることに躊躇してしまう先生もいるのではないでしょうか。

でも、学生のことを思うなら、良いことは良い、悪いことは悪いときちんと伝えるべきです。

規則を守るよう注意したり、ときには叱ったりすることも、教師の大切な仕事だと思います。

学生を叱らなければいけない場面

では、みなさんはどんなときに、どんな言葉で叱っていますか?気を付けなければいけないのは、“怒る”と“叱る”を一緒にしないことだと思います。

例えば、「授業中の私語が多くてやりにくいから、大きな声で怒った」これは学生のためになったのでしょうか。教師が「うるさい!」と怒鳴ったら、一瞬静かになるかもしれません。でも、教室の空気は悪くなり、怒鳴られた学生はふてくされます。

なぜ今うるさくなっているのか、どうしたらこちらの話を聞いてくれるのか、学生にはどう変わってほしいのか。教室の雰囲気を壊さずに、的確に伝える。あー、なんて難しい!

学生を叱らなければいけない場面は、バリエーション豊かです。わたしは、周りに迷惑がかかるかどうかで、叱るタイミングや言い方を変えるようにしています。クラスみんなの前で叱られることが好きな学生は滅多にいません。基本的には休み時間や授業後に呼び出して話をします。

でも、ひとりの学生の行動で授業に支障が出たり、ほかの学生が嫌な気持ちになったりするようであれば、みんなの前で叱らなければならないことも。

叱り方のパターンはたくさんありますし、そのときそのときで適切な対応は変わってきます。どのような言葉を使うのが効果的なのか、考えてみましょう。

以下は日本語学校でよくある(?)例です。

遅刻

Aさんの場合

遅刻頻度:初めて
遅刻理由:ルームメイトの体調が悪くて病院に付き添っていたら遅れてしまった

Bさんの場合

遅刻頻度:これまでに何度も
遅刻理由:前日遅くまでゲームをしていて起きられなかった

一口に遅刻と言っても理由は様々ですよね。初めての遅刻なのか、常連なのか。事情は人それぞれなので、同じように叱るのは難しいですね。

まずは理由を聞いてみましょう。理由を聞くことで生活環境や、抱えている問題が見えてくることもあります。

Aさんの場合、正当とも言える理由があります。でも、遅刻は遅刻です。何も言わないわけにはいきません。今後ほかの学生が、これを真似た言い訳をしてしまう可能性もあります。(実際にあるんです…)

わたしなら「大変でしたね。後で詳しく教えてください。そして、もしまたこのようなことがあったら、学校に連絡をくださいね」と声を掛けると思います。

Bさんは遅刻の常連です。毎回毎回注意されているので、頭では悪いということはわかっているでしょう。そんなときはポイントを変えます。「どうしたら寝坊しないで起きられますか?」

寝る時間を決める、一日のゲーム時間を決める、アラームの音を大きくする…など、ほかの学生もアイディアを出してくれるかもしれません。これならできそう!ということを、みんなの前で約束してもらうのも一つのやり方だと思います。

遅刻グセは簡単には直りません。根気強く時間を守ることの大切さを伝え、解決策まで一緒に考える。遅刻しないで来られるようになったら、努力を認めて褒めることも忘れずに!

忘れ物

Cさんの場合

小テストの日に消しゴムを忘れてしまった

学校のテストであれば貸してあげることができますが、留学生向けの試験や大学の試験ならどうでしょうか。それ以前に、日々の授業を受けるときに消しゴムは必要ですよね。

忘れたらどうなるか、どうしたら忘れないかをCさん自身に考えてもらいます。その際、教師の指導が一貫しているということも大切です。

昨日は厳しく注意されたのに、今日は何も言われない。Cさんには注意したのに、Aさんには注意しない。ということがないようにしましょう。

私語

Dさんの場合

私語の内容:友達にわからない単語を教えてもらっていた

Eさんの場合

私語の内容:今度アルバイトの面接があるので、経験した学生に相談していた

遅刻や忘れ物は本人が困るだけで済むかもしれませんが、私語はほかの学生に迷惑をかけてしまいます。授業と関係ない話ができないような雰囲気に初めからもっていけたらいいのですが、そうもいかないことはありますよね。

私語が目立つなと思ったとき、どうしますか?

私語に負けないくらい大きい声を出してみたり、逆に黙って様子を見てみたり、バンッと教壇や手をたたいてみたり、うるさい学生の近くまで行ってみたり…。

Dさんの場合は、すぐに終わりますね。わからない言葉や文法をちょっと友達に聞くくらいなら、注意はしなくていいと思います。「どこがわからなかったの?」と拾ってあげて再度説明するのもいいですね。

Eさんの場合は、明らかに今話すべきことではありません。でも頭の中は面接のことでいっぱいなのでしょう。

とりあえず、「何を話していたの?わたしにも教えて」と聞いてみましょう。それだけで静かになることもあります。

「アルバイトの面接があるんです…」と話し始めたら、ぜひ、興味を持ってあげてください。「面接は緊張しますよね。少しでも日本語のレベルがアップしたほうがいいと思いませんか?この文法が必要かもしれませんよ」と共感しつつ、気持ちを授業にもっていけたらいいと思います。

また、扱っている文法が面接に絡められそうなら、例文を考えさせてみるのもいいでしょう。話したいことがあるなら日本語で!徹底したいものです。

大人を叱るということ

相手が子どもなら、正しい、正しくないが判断できないことが多いので、ピシッと叱る必要があります。日本語学校に通っている学生たちはどうでしょう?少なくとも母国で教育を受けている学生が大半だと思います。これをしたら良くない、ということがわかっていても、してしまう。

そんな人たちには、ただ「遅刻してはいけません」と注意するだけでは足りないような気がします。これはいけない。じゃあどうしたらいいのか。自分で考えて、実行してもらわなければなりません。

学生と言っても、年齢や社会的立場は様々です。人生経験豊富な学生や、母国では権力を持っているような学生もいます。

人前で叱られるとプライドが傷つけられて、怒ったり、学校に来なくなってしまうこともあります。

相手を尊重しつつ、でも直さなければいけないことはきちんと伝える。怒るのではなく、叱る。そのときどんな言い方をするかが重要だと思います。

学生を叱らなければいけない場面に出くわしたら(少ないことを祈ります…)、ぜひ相手に伝わるような言葉選びをしてみましょう!

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