【初級文型 行為の授受「~てあげる」の教え方】助詞の使い分けも教えてスッキリ!

みなさん、こんにちは。

突然ですが、初級クラスの授業で学習者がつまづきやすい「壁」がいくつかあるとしたら、みなさんは、どんな文型が「壁」になると思いますか?

『みんなの日本語 初級Ⅰ』について言えば、筆者は、第14課の動詞のグループ分けと「て形」、第20課の「普通形」、第24課の「~てもらう」、「~てくれる」、「~てあげる」などが、初級最大の「壁」ではないかと思います。

いくつかの「壁」の中でも、行為の授受表現「~てもらう」、「~てくれる」、「~てあげる」が大変なのは、「だれが」「だれに」という状況が分かりにくいから。

初級の段階で行為の授受表現がきちんと理解できていないと、中級以降の読解や聴解で状況が読み取れず、学習者は混乱します。

できれば、最初に教えるときに、着実に、丁寧に教えておきたいですよね?

今回は行為の授受表現の中から「~てあげる」について、導入方法を4つのステップに分けてご紹介します。

目次

行為の授受表現「~てあげる」の導入方法:ポイントは「矢印」と「行為」

ここからはさっそく、「~てあげる」の導入方法を見ていきましょう。

「~てあげる」を着実に導入するためには、以下の4つのステップを踏むのが効果的。

STEP
物の授受表現「<名詞>+を あげる」を復習
STEP
日本語では行為にも授受表現があることを確認
STEP
「~てあげる」の例文を出して、「矢印」を確認
STEP
「~てあげる」には3パターンの助詞があることを導入

関連した既習項目(ここでは物の授受表現)を覚えているかを確認してから、新しい学習項目(行為の授受表現)に発展。丁寧に段階を踏んで、少しずつ難易度を高めていくという作戦です。

それでは、4つのステップ別に、具体的な教え方をご紹介していきます。

行為の授受表現「~てあげる」の導入ステップ①:物の授受表現「<名詞>+を あげる」の復習

行為の授受表現「~てあげる」の導入方法ステップ①は物の授受表現の復習です。

物の授受表現には

  • 「<名詞>+を あげる」
  • 「<名詞>+を もらう」
  • 「<名詞>+を くれる」

の3パターンがあります。

でも、今回は「<名詞>+を あげる」にしぼって復習しましょう。

行為の授受表現「~てあげる」の導入につなげるための復習ですから、あくまでもシンプルに。

『みんなの日本語』であれば、物の授受表現「<名詞>+を あげる」を第7課で、行為の授受表現「~てあげる」を第24課で学習します。

他の教科書でも、「まず物の授受表現を学習してから、行為の授受表現を学習」という順番になっていると思います。

行為の授受表現「~てあげる」に入る前に、物の授受表現「<名詞>+をあげる」の復習をする理由は…

  1. 日本語の「~てあげる」にぴったり対応する表現が、学習者の母語にはない可能性が高い
    1.  →だから、日本語の「~てあげる」は、外国人学習者にとって分かりにくい
  2. でも、「<名詞>+を あげる」は、学習者の母語にも対応する表現があることが多く、比較的理解がしやすい
  3. だから、「~てあげる」を教える前に「<名詞>+を あげる」を復習したほうが、学習者は行為の授受の概念が理解しやすい

それに、既習文型の中に関連する学習内容があるのであれば、復習を入れたほうが、学習者は新しい文型を理解しやすくなります。

既習文型の復習が入ることで、新しい文型に対する学習者の緊張感がほぐれます。そして、「分かる!」という安心感と「ステップアップした!」という充実感につながるはず!

物の授受表現「<名詞>+を あげる」を復習するときのポイントは2つです。

  1. 「だれが」「だれに」という物の移動の「矢印」
  2. 物の移動の結果生まれる感謝の気持ち

例)山田さんは 高橋さんに 花を あげました。

  1. 物の移動の「矢印」:「山田さんから」「高橋さんへ」物(=「花」)が移動
  2. 感謝の気持ち:高橋さんが山田さんに対して、感謝の気持ちを感じている

「<名詞>+を あげる」とは、「物の移動」を図にしたとき、矢印の始点側にいる人(=山田さん)の立場から表現したときに使う文型です。

まずは、物の授受表現「<名詞>+を あげる」を復習して、物の移動の「矢印」と、その結果、「感謝の気持ち」が生まれることを、確認しておきましょう。

行為の授受表現「~てあげる」の導入ステップ②:行為にも授受表現があることを確認

行為の授受表現「~てあげる」の導入方法ステップ②は、「『日本語には行為にも授受表現があること』の確認」です。

学習者の母語によっては、行為の授受表現がない可能性があります。

学習者の母語に行為の授受表現がない場合、次のような文の「教えました」と「教えてあげました」の違いが理解しにくい可能性が…

  • 山田さんは ミラーさんに 日本語を 教えました
  • 山田さんは ミラーさんに 日本語を 教えてあげました

日本語の「教えました」と「教えてあげました」には以下のような違いがあります。

  • 「教えました」:事実を述べているだけ
  • 「教えてあげました」:山田さんがミラーさんのために行動、その結果ミラーさんが感謝の気持ちを抱いている

行為の授受表現「~てあげる」を使って表現すると、単なる事実だけではなく、「だれがだれのために行動したか」という利害関係や、その結果生まれる「感謝の気持ち」という感情まで表現することができるんです!

学習者の母語に行為の授受表現「~てあげる」がない場合も、物の授受表現「<名詞>+を あげる」はある可能性が高いです。

だから、物の授受表現「<名詞>+を あげる」の復習から行為の授受表現「~てあげる」の導入につなげると、「日本語の『~てあげる』は、行為者と被行為者の利害関係や感謝の気持ちも表現する」ということを、学習者が理解しやすくなります。

物の授受表現「<名詞>+を あげる」の復習から行為の授受表現「~てあげる」の導入につなげ、

  • 日本語には物の授受表現だけでなく行為にも授受表現がある
  • 行為の授受表現は行為者と被行為者の利害関係や感謝の気持ちが表現できる

2つのポイントを学習者と一緒に確認しましょう。

行為の授受表現「~てあげる」の導入ステップ③:例を挙げながら「矢印」を確認

行為の授受表現「~てあげる」の導入方法ステップ③は、「~てあげる」の例文を挙げながら、「矢印」を確認することです。

物の授受表現と同じように、行為の授受表現も「だれが」「だれに」という「矢印」を絵で表すことができます。

<物の授受表現の例>

山田さんは 高橋さんに 花 あげました

<行為の授受表現の例>

山田さんは ミラーさんに 日本語を 教えてあげました

物の授受表現「<名詞>+を あげる」では、例えば「花」という物が移動。行為の授受表現では具体的な物の代わりに「日本語を教える」という行為がプレゼントされるというイメージです。

行為の授受表現:指導のポイントは「矢印」

さて、「山田さんは田中さんにお金を貸してあげました」という文を例に、2種類の絵カードを見てみましょう。

<絵カード①>

田中さんがお金がなくて困っている。そこで、山田さんが田中さんにお金を貸してあげる。田中さんは山田さんに対して感謝の気持ちを持つ…「山田さんは田中さんにお金を貸してあげます」という文の状況がよく分かります。

行為の授受表現「~てあげる」を使う状況がよく分かる絵カードは、文型の意味が学習者に伝わりやすく、導入にぴったり!

でも、学習者は「~てあげる」を使う状況がよく分かっても、実際に例文を作ってみようとすると、どんな動詞を使ったらいいのかで混乱することがあります。

学習者にありがちな間違いは、「山田さんは田中さんにお金を借りてあげます。」

「~てあげます」の「~て」の部分に入る動詞は、行為者(=山田さん)の行動を表す動詞(=「貸す」)なのですが、学習者は被行為者(=田中さん)の行動(=「借りる」)を入れてしまうというミスをしがちです。

そこで、「~てあげる」の「~て」には行為者の行動を表す動詞が入るということを図式化するのに、ぴったりなのが、「矢印」を使った絵カードです。

<絵カード②>

「山田さんから田中さんに『お金を貸す』という行為がプレゼントされる」ということを、「矢印」を使って図式化すると、「お金を借りてあげます」ではなくて、「お金を貸してあげます」が正しいことが、学習者も理解しやすくなります。

意味を導入するときは状況がよく分かる絵カード、使う動詞をきっちり教えたいときは「矢印」を使った絵カードというように、上手に使い分けましょう。

行為の授受表現「~てあげる」の導入ステップ④:3パターンの助詞「に」「の」「を」の導入

行為の授受表現「~てあげる」の導入方法、最後のステップは「3パターンの助詞の導入」です。

行為の授受表現「~てあげる」を使った文には、助詞の使い方が3パターンあります。

  1. <人1>は <人2> 動詞―<て形>あげる
  2. <人1>は <人2> 動詞―<て形>あげる
  3. <人1>は <人2> <名詞>を 動詞―<て形>あげる

物の授受表現「あげる」を使った文が、いつも「<人1>は <人2> <名詞>を あげる」という構文を取り、助詞が「に」1つだけなのに比べると、行為の授受表現「~てあげる」を使った文には助詞が3パターンあるというのは、結構難易度高め……。

それでも、助詞「に」「を」「の」の使い分けにはルールがあるので、ルールを学習者に分かりやすく教えましょう。

筆者の場合、

  1. 3パターンの助詞を使った例文を紹介
  2. それぞれの助詞と一緒に使う動詞を整理
  3. 3パターンの助詞をランダムに混ぜて最終確認

という順に教えるようにしています。

3パターンの助詞を使った例文を紹介

まず、どういうときにどの助詞を使うのか、助詞別に例文とルールを紹介します。

①助詞「に」:<人1>は <人2> 動詞―<て形>あげる

例)わたしは 彼女 子供のときの 写真を 見せてあげました。

助詞「に」を使った文「<人1>は <人2>に 動詞―<て形>あげる」は、「<人>に<名詞>を~」という形をとる動詞の場合に使います。

・「彼女写真を見せる」→「彼女写真を見せてあげる」

「~てあげる」を使った場合と使わない場合とで、助詞の変化はなし。「彼女」の「」をそのまま「~てあげる」文でも使います。

②助詞「を」:<人1>は <人2> 動詞―<て形>あげる

例)わたしは 息子 公園へ 連れて行ってあげました。

助詞「を」を使った文「<人1>は <人2>を 動詞―<て形>あげる」は、「<人>を<名詞>に/へ~」の形を取る動詞のときに使います。

「息子公園へ連れていく」→「息子公園へ連れて行ってあげる」

「息子」の「」をそのまま。「~てあげる」文にしても助詞の変更はありません。

普段から新出語彙を教えるときに、しっかり助詞とセットで練習をしておくのが、学習者を混乱させないコツです。

③助詞「の」:<人1>は <人2> <名詞>を 動詞―<て形>あげる

例)わたしは おばあさん 荷物を 持ってあげました。

助詞「の」を使った文「<人1>は <人2> <名詞>を 動詞―<て形>あげる」にはちょっと教え方に工夫が必要。

「<人2>の代わりに」または「<人2>のために」「<人1>が行動する」という意味です。

おばあさん(=<人2>)の荷物は、本来おばあさんが持つものなのですが、わたし(=<人1>)が代わりに持ってあげています。

荷物(=<名詞>)がおばあさん(=<人1>)のものであるというところがポイント。

それぞれの助詞と一緒に使う動詞を整理

「~てあげる」を使った文には助詞が3パターンあること、使い分けのルールが分かったら、具体的に動詞の例を挙げていきましょう。

ここでは『みんなの日本語』の既習語彙の中から一例を挙げます。

  1. 助詞「に」と一緒に使う動詞
    1.  例)見せる、教える、読む、書く、貸す、作る、買う、(荷物を)送る
  2. 助詞「を」と一緒に使う動詞
    1.  例)連れて行く、連れて来る、(場所へ)送る
  3. 助詞「の」と一緒に使う動詞
    1.  例)(荷物を)持つ、修理する、(写真を)撮る、掃除する、洗濯する

「(荷物を)送る」、「(場所へ)送る」の「送る」のように、同じ動詞でも使う助詞が違ってくることもあるので、教えるときは要注意。分かりやすく単語を補って。

学習者と一緒に動詞とセットになる助詞を確認、いくつか動詞をピックアップして文を作り、上手に助詞が使えているかどうか、確認しましょう。

3パターンの助詞をランダムに混ぜて最終確認

ちょっと理解が早いクラス向けの練習ですが、うまく助詞が使い分けられるかどうかの最終確認としては、助詞をランダムに混ぜた練習がおすすめ。

  1. 助詞「に」、「を」、「の」がバランスよく混ざるように、絵カードを準備
  2. 絵カードをランダムに見せながら、「~てあげる」を使った文を学習者に作らせる

ランダムに絵カードを見せても、助詞「に」、「を」、「の」が使いこなせているようなら、助詞の使い分けはバッチリです。

今回は行為の授受表現「~てあげる」の導入方法をご紹介しました。

助詞の使い分けもあって難易度が高い「~てあげる」。

でも、ステップを踏んで丁寧に教えていけば大丈夫。

ぜひみなさんの授業の参考にしてみてくださいね。

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この記事を書いた人

高木 伸子のアバター 高木 伸子 ことばのゼネラリスト

日本語教師11年目。日本語教師養成講座講師。幼少時、ベルリンに住んだことをきっかけに、国際社会の架け橋になることを夢見る。

学生時代はドイツ文学を専攻。フランス語、イタリア語なども学んだ語学オタク。ドラマをきっかけに韓国語にハマり、ソウルに語学留学。韓国語で韓国語を勉強した経験から、直接法に興味を持つ。

帰国後は国内の日本語学校で入門から応用クラスまで幅広く担当。10か国以上の学生に教える。授業のモットーは「説明はシンプルに、例文は効果的に」。

韓国語講師、ドイツ語講師、翻訳家としての顔も持つ。

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