こんにちは、SenSee編集部のいのっちです!
前回の記事ではJ.TESTの基本①として試験回数や受験場所、出題問題についてお話しました。まだ読んでない方はぜひ読んでみてください!
今回はJ.TESTの基本②としてレベルについてお話します。
JLPTのレベルは下からN5、N4、N3、N2、N1の5段階です。それぞれのレベルに評価基準があり、できることが異なりますよね。
じゃあ、J.TESTはどうでしょうか。聞いたことがありますか。
えっ・・・試験レベルが3つでN1以上まで測れるってどういうこと!?初めて聞いたらなんのことやら・・・???です。
レベルと一緒にメリット・デメリットもお伝えしますので、自分が教えている学習者にはおすすめできるかな~と考えながら読んでみてください。
J.TESTへの理解が深まって、学習者へのアドバイスがよりしやすくなりますよ!
J.TESTのレベルを知ろう。試験レベルは3つだけ!?
J.TESTの試験はレベルが3つだけです。JLPTが頭にあるとえっ!?って思います。JLPTは下からN5レベルから。N4、N3、N2、N1と5つのレベルがあり、各レベルにそのレベルを測るための試験問題があります。つまりレベルも問題も5つある。ところが、J.TESTでは3つしかありません。どのような分け方になってるのでしょうか。
J.TESTのレベルはこの3つ=レベル分けが3つ
- AーCレベル(JLPTN2、N1相当/N1以上)
- DーEレベル(JLPTN4、N3相当)
- FーGレベル(JLPTN5相当/入門レベル)
J.TESTはレベルと試験問題は分かれていますが、JLPTより点数のイメージとしてはTOEICのほうが近い感じかと思います。
とは言ってもJLPTに慣れ切っている学習者にとって、また教師にとっても大混乱です。学習者にJ.TESTについてどのレベルを受験するべき?と聞かれたらどうしますか?
学習者にアドバイスできるようにそれぞれのレベルについて理解しましょう。
AーCレベル(JLPTN2、N1相当/N1以上)
N1より上のレベルまで測れるので、すでにJLPTN1に合格している学習者にも役立つはずです。N1に合格している学習者にも次の目標ができます。
<ポイント>
- 1000点満点で点数によって、能力を特A~C級に判定する。
- 600点以上で認定証が発行される。
- 認定証の発行、級の判定には、8分野の得点でゼロ点がないことが必須条件。
- 試験時間は読解試験80分、聴解試験45分。
- 点数配分は、読解試験500点、聴解試験500点。
- 試験の間に休憩時間はなし。
次回のパート③で出題内容について詳しくお話します。
読解試験80分、聴解試験45分とありますが、読解問題と聴解問題だけということではありません!名前がそうなっているだけのトリック(汗)気をつけましょう!
具体的には、「文法語彙問題/読解問題/漢字問題/記述問題」、聴解の「写真問題/聴読解問題/応答問題/会話・説明問題」の8分野あります。この全領域でゼロ点がないことが必須。これが結構難しいんです。
【点数と評価】
- 準B級:700点以上 (CEFRB2)=JLPT N1相当
- C級 :600点以上 (CEFRB2)=JLPT N2相当
※J.TEST ホームページ(https://J.TEST.jp/newjtest)より。全ての点数と評価についてはこの記事の一番下のレベル早見表を参照してください。日本語能力試験(JLPT)との比較は目安です。
DーEレベル(JLPTN4、N3相当)
基礎学力が試されます。AーCレベルと点数と試験時間が違います。
<ポイント>
- 700点満点で点数によって、能力を特D~E級に判定する。
- 350点以上で認定証が発行される。
- 認定証の発行、級の判定には、8分野の得点でゼロ点がないことが必須条件。
- 試験時間は読解試験70分、聴解試験35分。
- 点数配分は、読解試験350点、聴解試験350点。
- 試験の間に休憩時間はなし。
8分野はA-Cレベル同様、「文法語彙問題/読解問題/漢字問題/記述問題」、聴解の「写真問題/聴読解問題/応答問題/会話・説明問題」同じく、全領域でゼロ点がないことが必須。
【点数と評価】
- D級:500点以上 (CEFRB1)=JLPT N3相当
- C級:350点以上 (CEFRA2)=JLPT N4相当
※J.TEST ホームページ(https://J.TEST.jp/newjtest)より。全ての点数と評価についてはこの記事の一番下のレベル早見表を参照してください。日本語能力試験(JLPT)との比較は目安です。
FーGレベル(JLPTN5相当)
<ポイント>
- 350点満点で点数によって、能力を特F~G級に判定する。
- 180点以上で認定証が発行される。
- 認定証の発行、級の判定には、8分野の得点でゼロ点がないことが必須条件。
- 試験時間は読解試験60分、聴解試験25分。
- 点数配分は、読解試験175点、聴解試験175点。
- 試験の間に休憩時間はなし。
8分野はA-Cレベル、D-Eレベルと一つだけ違います。「文法語彙問題/読解問題/漢字問題/短文作成問題(選択式)」、聴解の「写真問題/聴読解問題/応答問題/会話・説明問題」同じく、全領域でゼロ点がないことが必須。
【点数と評価】
- F級:250点以上 (CEFRA1)=JLPT N5相当
- G級:180点以上 =入門レベル
※J.TEST ホームページ(https://J.TEST.jp/newjtest)より。全ての点数と評価についてはこの記事の一番下のレベル早見表を参照してください。日本語能力試験(JLPT)との比較は目安です。
J.TESTは学習者にとってハードル・レベルが高い?ここが難しい!4ポイント
各レベルについて、ポイントを絞ってお伝えしました。どうですか。みなさんが教えている学習者に合った試験でしょうか。
ビジネス日本語がハードルが高いと前回の「JLPTと同様に日本語力の証明に使える試験?日本語教師なら知っておきたいJ.TESTの基本①【受験場所と出題内容】」でお伝えしました。
が、ポイントを見ると他にも色々とハードル高いと思いませんか。特にいのっちが教えてみて学習者にとってハードルが高いと感じたのががこちら。
- 聴解試験が得点の半分
- 別のレベルの試験が入っている
- 自分のレベルだけ解けたのでは点数がとれない
- 読解試験の後にすぐに聴解試験が始まる。
それぞれの出題区域のハードルの高さについては、次回パート③でお話します。
ハードルが高いポイント4つ
それでは実際になぜこの4つがハードルが高いのか、ご説明します。
①聴解試験が得点の半分
3つ全てのレベルでなんと聴解試験が得点の半分なんです!なんてことでしょう!!!
J.TESTの目的として「聴解部分の比率は大きくし、実用的な能力を測定することを重視している」とあります。
これによって引っかかった学習者、そうです。漢字圏であるというアドバンテージでJLPTを乗り切っていた学習者。模擬試験をやってみると、JLPTでは合格圏内だった学習者がJ.TESTでは全然点数が取れませんでした。
聴解が苦手な学習者にとってはかなり辛い試験です。学習者に合わせて聴解対策の時間を多めに確保しましょう。
②JLPTで言うところの、レベルをまたがった試験内容
これはハードルが高かった点でもあり、ある学習者にとってはメリットでもありました。別レベルの試験が入ってる・・・
つまりJLPTで言うところの
N4とN3の学習者が同じ試験を受けるってこと!?
N2とN1の学習者が同じ試験を受けるってこと!?
という叫びに近い質問、初めにJ.TESTについての研修をしたときの先生方の反応でした。
そりゃ~そうです。だってそれぞれのレベルは全然違います。教える側としてもN4を教えていたのに、急にN4もN3も教えなきゃいけないことになります。「N2とN1なんて次元が違うでしょ~」となります。実際にいのっちが先生方に投げかけられたセリフです。
一方で喜んだ学習者もいました。「えーN1の問題ができる!?」
なぜかって?
そういう学習者にとってN2はもちろんN1の実力が証明できる試験は夢のよう。実際の結果は、JLPTではN4に申し込んでいたのにN3レベルの実力があると証明書をもらった学習者、JLPTではN2に申し込んでいたのに、N1レベルを取った学習者が何人もでました。
もちろんJLPTとJ.TESTは全く同じテストというわけではないので、そのレベルが同じだと言い難いところもあります。それでも試験変更後、努力した学習者、教え方に苦戦した教師側にとっては報われた結果となりました。
どちらのレベルを受けるか悩んでいる学習者にとっては、自分のレベルを測る指標として役立つでしょう。その結果を元に次回のJLPTの受験レベルを決めてもいいかもしれません。
③自分のレベル以外(特に自分より下のレベル)の復習も必要
試験レベルがまたがるということは、自分のレベルがだけ解けたのだけでは点数がとれないということです。
これがJLPTとの大きな違い、下のレベルもできなきゃダメ!
例えば、JLPTでN3を受験すると、N3の問題が出ます。(当然ですね。)基礎力ももちろん必要ですが、N3の領域を理解していればある程度はできます。
ところがJ.TESTは、N4の問題も点数がとれないとN3の点数には達しません。
基礎が抜けている学習者はつまづきました。今までN3だけを一生懸命勉強していた学習者、N4レベルの問題で点数が取れないということが起こりました。N1の学習者も同じくN2ができない。
その理由は・・・
- 基礎の部分を飛ばしてしまっていた
- 一つ下のレベルの問題(文法や漢字、語彙)をすっかり忘れてしまっていた
上のレベルの勉強ができると喜んだ学習者は、モチベーションアップがアップしてどんどん力を伸ばしていきました。
一方、下のレベルの問題ができない学習者は焦りでなかなか伸びませんでした。
それはやる気の差へとつながり、同じ教室内でも試験に対する温度差がでるようになってしまいました。
試験に勝つには周りの雰囲気も大事です。
早めに基礎固め、復習を取り入れていきましょう。学習者は下のレベルを勉強するというとモチベーションが下がり気味になります。下のレベルとしての練習ではなく、問題をミックスして出すなど、工夫しながら復習をしましょう。
<h4>④読解試験の後にすぐに聴解試験が始まる。
どのレベルの試験にも休憩がありません。JLPTも長い試験ですが、聴解の前に休憩があります。J.TESTは聴解前に休憩がないので、より長い時間集中力が求められます。
聴解ってかなりのエネルギーがいりますよね。しかも得点の半分、プレッシャーも大きい。
聴解にたどり着くまでの試験内容でもうすでにへとへと…。休憩があったら、そこでトイレに行って気分を変えたり、飲み物を飲んだり。でもJ.TESTではそれができません。
それに加えて、学習者自身で日頃から長時間集中する練習をしておいたほうが時間に慣れやすくなります。問題を解く時間を意識させる+ある程度まとまった時間机に向かうことをアドバイスすると良いと思います。
J.TESTのレベル早見表(CEFRとJLPTと対比)
いかがでしたか。本日は、J.TESTの各レベルと学習者にとってどうなのか?という視点でお伝えしました。
最後に、J.TESTのホームページよりCEFRとJLPTと対比している表をご紹介します。少し見やすく作成し直し、評価部分の文章は省略しました。気になる方はJ.TESTのホームページをご覧ください。(https://J.TEST.jp/cefr-jtest)
さらに役立つのがこんな場面!
日本語学校では入学前に学習者のレベルが書類で送られてきます。その中に時々「J.TEST E級、J.TEST C級」などと見かけます。みなさんはこれを聞いてすぐにレベルがわかりますか。
いのっちは恥ずかしながら日本語教師になりたての頃は分かりませんでした。
特に中国の学習者に見かけます。中国では2007年9月、中国政府「労働和保障部(日本では厚生労働省に相当)」が正式にJ.TESTを認定しました。J.TESTの認定証プラス、労働和保障部から認定証も出るそうです。
学習者のレベルを把握することは必須です。
他の先生に教えられたり、クラス分けの判断材料になったり、使える場面が多くありますよ。
次回はJ.TESTの基本パート③として出題領域の問題についてお話します。どの領域の問題が学習者にとって難しかったのか、例を出しながらお伝えします。お楽しみに!
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