JLPTと同様に日本語力の証明に使える試験?日本語教師なら知っておきたいJ.TESTの基本④【JLPTとの違いを押さえた指導ポイント3つ】

こんにちは、SenSee編集部のいのっちです!

J.TESTシリーズの記事ではJ.TESTの基本①と②として試験回数や受験場所、出題問題、レベルについてお伝えしました。

J.TESTの基本③では、より出題内容に踏み込んで「記述問題」や「聴読解」などについてもお話しました。まだ読んでいない方はぜひ読んでみてください。

前回の基本③では、「学習者の苦手」からJ.TESTにアプローチする指導についてポイントと対策をまとめています。ある程度J.TESTを知っている先生や学習者への指導におすすめ。

  • そもそもJ.TESTの指導が初めて!何から手をつけていいのかわからない!
  • 学習者にJ.TESTを受けたいって言われたけどどうしよう!

今回はそんな方へのお話です。最初にやるべき指導についてお話しします。

これを読めば、最初の指導はこれを入れてみようというイメージが持てるはずです。

今回紹介する3つの指導で得点アップが狙えます。

さらに最初の指導がスムーズにいけば、学習者の苦手分野や得意分野からアプローチするなど得点アップにつながる次の指導にも入りやすいので必見です!

目次

JLPTとの違いを押さえてJ.TESTの指導はこの3つから手をつけよう

J.TESTを受けたいと学習者が言ったら、みなさんだったらどんな指導を考えますか。

例えば、J.TESTの過去問を分析して、文法説明や練習問題から始めるでしょうか。

まず!

JLPTとの違いから見ていくと学習者にとって試験のイメージがつかみやすいのでおすすめ。多くの学習者がJLPTなら一度は見たことや解いたことがあるからです。

でも大きく違うところがあるので注意!

その違いは、レベルはもちろん、漢字問題や記述問題、聴読解問題など。この辺は以前の記事に詳しく書いているので読んでみてください。

次に具体的な指導です。J.TESTを初めて受験する学習者を指導するとき、この3つから始めてみませんか。

  1. 学習者の字を見直す
  2. 捨てる問題を見極める
  3. J.TESTの過去問とJLPTの問題集を活用して練習量を稼ぐ

これらはプライベートレッスンでもオンラインレッスンでもボランティアでも、もちろん教室指導でも活かせます。自分が教えている形態に合わせて使ってみてください。

この3つを指導の入り口にすると、後半の指導がだいぶ楽になりますよ!では、具体的にこの3つのポイントをみていきましょう!

学習者の字を見直す

みなさんが教えている学習者の字、読みやすいですか?

きれいに書けている学習者もいれば、読みにくい、ちょっと汚いなぁ〜なんて学習者もいると思います。

試験の指導ポイントなのになぜ急に字の話?と思いますよね!?

実は、1つ目の指導ポイントは「きれいにかけているか学習者の字を見直す」なんです。

前回の記事J.TESTの基本③で漢字問題や記述問題のお話をしました。

これらの試験はマークシートではなく、受験者が自分で答えを書くというもの。JLPTにはないですよね。

「学習者の汚い字や読みにくい字、困るよね〜」、「なかなかクセ字が直らない学習者っているよね〜」なんてのは、先生方の間でもよく話題になりますが…

なんと字の書き方によっては、試験で✖(バツ)にされてしまうんです!!

試験が近くなると受験票や試験の注意事項などが送られてきます。それと共に用紙が一枚!

字についての見本の用紙です。書いてあるのは、✕になるひらがなの見本。

こんなひらがなを書いたら、✕になりますよというものでした。(2020年7月時点の試験)

それを見て真っ青になりました!だってこんなひらがなを書いている学習者がたくさん…

急いで時間を設けて学習者と確認をしました。こんな字を書いたら答えが合っていても✕になりますよ!!!と。

でも指導に苦戦しました。なぜって?

  • 1.身についてしまった書き方はなかなか直らない
  • 2.試験間近で追い込みの時期、字の書き方なんて練習している場合じゃない!(学習者心理)

見本を見ながら書くときれいに書けるのに、試験に集中しているといつもの字に戻ってしまったり、時間を気にして書いていると乱雑な字になってしまったり…

「あいうえお」からのゼロ初級の学習者はまだなんとか指導ができました。

どうしても✕になりそうな字を書いてしまう学習者には個別指導で対応しました。

しかし中級以上の学習者が大変でした。独自の書き方が身についてしまっている。汚い字を書いていても中級以上で字の練習をする時間なんてありません。

しかも試験間近で一つでも多くの文法を覚えたいと必死です。時間がない!

だからこそ、学習者がJ.TESTを受けるとなったら、一番初めに「学習者が書いている字、ひらがなを見直すこと」がポイントなんです。

初めの頃は比較的余裕があります。JLPTと比較をしながら進めたり、問題について傾向を知ったり、その合間に字の指導を入れてみてください。

初歩段階の指導で確認しておけば、試験直前に焦らなくてすみますよ。

捨てる問題を見極める

JLPTとJ.TESTを比較して大きく違うところは、「レベルが広く測れる」ということ。レベルについての詳細は、J.TESTの基本②の記事でお伝えしています。JLPTと比較した表も載せてあるのでチェックしてみてください。

  • A-Cレベルは、JLPTのN2、N1、さらにその上まで。D-Eレベルでは、N4、N3相当が測れます。
  • 点数も幅があり、A-Cレベルは1000点満点、600点以上取ればC級の認定級がもらえて、JLPTのN2相当。
  • 700点以上取れば準B級の認定級がもらえて、JLPTのN1相当のレベル。
  • D-Eレベルは、700点満点で350点以上取れば、E級認定でJLPTのN4相当。
  • 500点以上取れば、D級認定でJLPTのN3相当のレベルというわけです。

最初、認定級の点数を見た学習者の反応は…「こんな点数とれない!」。JLPTの点数と一桁違うのもあって大混乱です。

でもJLPTよりレベルが広く点数に幅があるということは、まだ勉強していないレベルの問題も多く入っているということです。つまり捨ててもいい問題が多くある

「捨てる問題を見極めて、ゲーム感覚で解いていこう」と指導すると楽しく取り組めます。

JLPTも時間との勝負、わからない問題はとばして次に進もうという指導をします。(もちろんわからなくてもマークシートは塗ってから!)

でもそこで粘りたくなるもの。だってもしかしたら知っているかも、勉強した文法かもしれないから。

でもJ.TESTの場合、絶対に勉強したことのない問題が入っています。N2レベルを取りたいと思ったら、A-Cレベルを受験します。そうすると、N1レベル相当、それ以上の問題が入っているわけです。できるわけがありません。

N2レベルなら1000満点で600点以上、つまり400点は捨てることができます。

そう考えると、J.TESTはJLPT以上に時間との勝負、できない問題は飛ばして「はい、次~」と行かないと間に合いません。

学習者は一問一問頑張って取り組もうとします。でもそれではJ.TESTでは時間がなくなります。そこで初めに「見たことのない問題は捨てて次へGO~」と指導。

学習者によっては、「先生!捨てるなんて簡単に言わないで!全部取りたい」といった反応もありました(汗)

でも学習していくうちに段々と気づきます。全部をとろうとする解き方だと最後まで終わらないと。

初めてのJ.TEST、問題を見た学習者は「こんなのできない」と頭を抱えます。自分の目指すレベルより一つ上も入っているのだから当然。

レベルの違いをよく理解させて、できない問題、捨てる問題があって当然だと初めに話すと学習者に安心感が出ます。

もちろん何でもかんでも捨てていいってわけじゃありません。それじゃ点はとれませんよね。

自分の目指すレベルはきちんと押さえつつ、潔く進むということ。だから「見極めて」捨てるなんです。

J.TESTの過去問とJLPTの問題集を活用して練習量を稼ぐ

JLPTの問題集は色々ありますよね。日本語学校によって、どの問題集を使うかその選択は様々だと思います。

インターネットで「JLPT N2 〇〇〇〇(文法)」とレベルと調べたい文法を入れれば、たくさんヒットします。

JLPTでは指導をするときに困ったり、例文を出したりしたいときにも困りません。問題集もインターネットの情報もたくさんあるからです。

じゃあ、J.TESTの場合は?

J.TESTの問題集というものはないんです…

そこで使うのは、この2つ

  • 1.J.TEST公式の過去問題集
  • 2.J.TEST公式のホームページにある問題「毎月の練習問題」

J.TESTホームページより:

1.https://j-test.jp/newjtest/exams

2.https://j-test.jp/page_id2066

でも実際に指導してみると、これだけじゃ練習量が足りないんです。

「1.J.TEST公式の過去問題集」は2019年以前にレベルが改定されているので、使えるのは2019年版と2020年版のみ。

A-Cレベル、D-Eレベル、F-Gレベルの3レベル分があります。

2020年度版は、2021年6月に発刊されたばかりです。昨年J.TESTの指導した時は、2019年度版の問題集とそれ以前のレベルが異なるものから抜粋して使用しました。

過去問題集の中からいくつかは、事前の校内模擬試験として使います。やはり試験が近くなったらJLPT同様、模擬試験をするのが大切です。

そうすると授業で指導や練習に使える問題が限られてきます。

現在は、J.TESTミニテスト公開というページもあります。J.TESTミニテスト2020年問題集(https://j-test.jp/j-test-minitest)をダウンロードして練習量を増やすチャンス!

「2.J.TEST公式のホームページにある毎月の練習問題」は、公式のホームページにあり、問題をダウンロードできたり、聴解問題の音声もあったりするので練習にはおすすめ。

問題も毎月出る、過去の分もあるので使えますよ。

ただし、タイトルが年月、例えば「2021年9月の練習問題」と書いてあるだけなので一つ一つダウンロードしかないのが使いづらいところ。

開いてみると、A-Cレベル、D-Eレベル、F-Gレベルの3レベル分の問題が問題用紙1枚分程度出ています。(その月によって違います。)

時間と手間を考えるとちょっと大変です。問題自体は使えるのですが…

じゃあ、どうするの!?

私のおすすめは、「JLPTの問題集を活用すること」です。JLPTとJ.TESTを比較してみると、文法は結構重なっているんです。

出題形式やビジネスなどで使うための語彙が多いことなどは違うのですが…

そうですよね。N2レベルの文法で全然違うものが出ていたらビックリします。

だからこそ、私は指導にJリサーチ出版社の『スピードマスター』シリーズをよく使っていました。

JLPTとJ.TESTを比較、分析してみたところ使えるなと思ったからです。さらにJLPTを受験する予定だったため、学習者が『スピードマスター』シリーズを購入していたので活用。

記述問題の指導を担当していたので、実際に使ったのは、

  • A-CレベルのN2相当を目指すクラスでは、「日本語能力試験問題集N2文法スピードマスター(Jリサーチ出版)」を。
  • D-EレベルのN3相当を目指すクラスでは、 「日本語能力試験問題集N3文法スピードマスター(Jリサーチ出版)」を。

この本を使って、

  1. Unitごとの文法項目の確認
  2. ドリルを使っての繰り返し練習
  3. 出てきた文型を使って、独自の宿題を作成

実は独自で作った宿題の中から、本番の試験で全く同じ文が出ました。当日は試験監督をしていたので、問題を確認して心の中でガッツポーズです(笑)

試験終了後、それに気づいた学習者何人かが「先生!宿題の問題ありました~」とやってきてみんなで喜びました。

私:「宿題の問題出ましたね~!それで…できましたか?」

学習者Aさん:「宿題の問題だとわかりましたけど…できたかどうかは、話が別ですよね~アハハ~」

まぁ、こんなもんですよね…N2レベルの学習者、悲しいかな…流ちょうな日本語で文法ばっちりの返答でした。

何人かはできたと言ってくれたので地道に分析、宿題を作った甲斐があったかも。

ちなみに、文法や記述問題だけではなく、他の科目担当の先生もJLPTの問題集を使って指導し、練習量をカバーしました。

ぜひJ.TESTの過去問題を分析し、JLPTの問題集で活用できるものがあったら使ってみてください。練習量、知識量を増やせますよ。

J.TESTの指導が初めてでもJLPTには慣れている、文法のストックがあるという先生は多いはず。活かさない手はありません。

J.TESTとJLPTの違いを理解して学習指導に活かそう

J.TESTを初めて見た学習者は、点数や問題形式、問題内容に圧倒されて「できない」というマイナスな気持ちを持ちがち。そうすると勉強へのモチベーションが下がってしまいます。

そこで最初の指導が大切。「こうやって勉強していけば大丈夫」という安心感を持って試験に向かってもらうための指導をしましょう。

12月のJLPTが終わって落ち込んでいる学習者、合格して日本語学校卒業まで時間を持て余してしまう学習者、日本語教師にとってまた新たな悩みが出てくる時期です。

そんな時に今回ご紹介したJ.TESTをうまく活用してみてください!次の目標があることで学習者の気持ちの切り替えに役立ちますよ。

さらにJ.TESTは公的な証明書として使えるのでおすすめ。J.TESTでは、2021年1月より入管等提出書類の発行を行っています。

J.TESTの協会が教育機関や実習受け入れ機関に直接発行する証明書で手数料はかかりません。(着払いで送料はかかります。)

受験者本人には発行されません。

発行対象機関は「法務省告示の日本語教育機関」や「技能実習の管理団体」などを含む5つの団体や機関に発行されます。(詳しくは、https://j-test.jp/immigration)

そう、J.TESTはJLPTと同様に出入国管理局に提出する日本語証明書として使えます。しかもJLPTと違い、年間の実施回数が多い。

学習者は、自分のレベルを測る指標として、短期的な目標として、そして進学や就職のための証明書としてJ.TESTが活かせるんです。

そのサポートのためにもぜひ今回の初歩の指導を使ってみてください。

J.TESTの基本を理解するためのシリーズは今回が最後です。

J.TESTの情報はJLPTに比べるとまだまだ少ない…そこでJ.TESTの基本①から今回の④までの記事で基本的なことを押さえて、学習者の指導に活用してもらえれば嬉しいです!

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