初級文法「〜んです」の導入方法③ 丁寧な依頼&アドバイスを求めるときの教え方

「先生、その漢字わかりません」「昨日のプリントが欲しいです」「〇〇大学へ行きたいです。どうしますか。」なんて、言ってくる学習者はいませんか。

こんなお願いの仕方をする学習者がいたら、「~んですが、~いただけませんか」「~んですが、~らいいですか」の文法を導入する絶好のチャンスです!どうやって、導入したらいいかわからない!と悩んでいる日本語教師の方。文法授業を研究して10年以上の私が、ポイントを詳しく紹介します。

目次

丁寧な依頼をするときの「〜んですが、〜いただけませんか」の導入

学習者に文法の必要性を伝える

忘れてはいけないのが、学習者はすでに依頼の意味を持つ「~てください」を学習しているということです。(学習したことを忘れている可能性もあります)「~てください」で、意味が伝わるから問題ない、と思っている学習者は「~んですが、~いただけませんか」の文法は使いません。

「~てください」でさえ、口からスラスラでてこない学習者は「~んですが、~いただけませんか」の文法なんて、長すぎて口から出てきません。学習者には、

  • 「~てください」より、「~ていただけませんか」のほうが丁寧である。日本人は目上の人や仕事でのやりとりのときは、「~ていただけませんか」をよく使う。
  • 日本人は「~んですが、」を使って事情を説明し、それから依頼する形を好む。

この二点を伝えます。丁寧である自分が嫌いな人なんていないでしょうから、この二点がわかればこの文法を使おうとしてくれます。では、クラスに「日本のアニメが好きな学習者」がいたとします。このクラスではどんな導入をしましょうか?

導入方法

教師:〇〇さんは、好きなアニメのフィギアを集めているんでしょう?

学習者:はい、集めています。

教師:〇〇さんが欲しいフィギア、先輩が持っています。どうしますか。

学習者:ください。私も欲しいです。私も店へ行きたいです。店を教えてください。

学習者からはこのような発言があると予想して、その発言をつなぎ合わせて、私もそのフィギアが欲しいんですが、店を教えていただけませんか。と、例文を板書します。その時に、先輩は目上の人であるから丁寧にお願いしなければならない。これは丁寧にお願いするときに使う文法であると、学習者に伝えます。

一番いい方法は、「先輩!教えて!」とお願いする態度と、「私もそのフィギアが欲しいんですが、店を教えていただけませんか」とお願いする態度を教師が演じることです。そして、学習者との会話の中で、文法や意味、接続を確認します。会話しながら確認すると、受身になりがちの学習者を積極的に授業に参加させることができます。

教師:今日勉強する文法は何ですか。

学習者:~んですが、~いただけませんか。

教師 :そうです!さすが!予習していますね!(学習者を褒める。)

教師 :「~ていただけませんか」 の意味は?

学習者:「~てください」と同じです。

教師 :そう!同じです。   でも、使うときが違います!注意してください。

(「〜ていただけませんか」の使用場面説明)

会社の上の人、社長・課長・部長とかアルバイトの店の店長と丁寧に話すとき、使います。~んですか」がありますが、これはびっくりした後の質問ですか?(既習の「〜んです」と意味が違いことを確認させる。)

学習者:いいえ。

教師 :そうですね。今までに勉強した「~んです」と意味が違います。(接続を確認する。)

学習者:いいえ、接続は同じだと思います。(「〜のですか、〜いただけませんか」の必要性を説明。)

教師 :そうです。(「~んです」の文で、説明していますね。)

教師 :では、「~いただけませんか」の前は何形ですか?(て形を忘れている学習者のために、少し復習して思い出させる。)(よくある記載ミスの注意を促す。)

学習者:て形です。

教師 :すばらしい!

て形をまだ覚えていますか。「行きます」の て形は?「帰ります」の て形は?でも、注意してください。「いただます」ではなくて、「いただませんか」です。学習者が受身にならないよう、文法説明は会話形式で行うのがベストです。短い日本語の文章のやりとりなら、聴解能力が弱い学習者も聞き取れます。

上記やり取りをみて、「そんな簡単なことで褒めるの?」と思うかもしれませんが、できたら褒めるんです!褒められて、嫌な気持ちになる学習者はいません。

相手にアドバイスを求めるときの「〜んですが、〜らいいですか」の導入

私のこの文法の鉄板例文は恋愛へのアドバイスを求めるものです。彼が欲しいんですが、どうしたらいいですか。どのアプリを使ったらいいですか、彼と結婚したいんですが、どうしたらいいですか。などです。これらを学習者に聞いて、「は?先生の恋愛事情なんて、知らないし」などと冷たい反応だったことはありません。

教師がアドバイスを求め、学習者がアドバイスをする。これを授業中にすれば、この文法の意味説明は完璧です。ただ、これらの例文は「恋人がいなくて、かわいそうキャラ」を演じていない教師は使えません。そんな教師の方は、学習者のほうがよく知っていて、教えてもらいたいことを聞けばいいのです。海外で日本語を教えていらっしゃる方は、現地生活のコツなんかを聞くのもお勧めです。

教師:私もポケモンのゲームをしているんですが、カスミに勝つにはどうしたらいいですか。

教師:マーケットで買い物したいんですが、何に気をつけたらいいですか。

教師:四声が上手に言えないんですが、どうしたらいいですか。

などです。学習者が好きなこと、得意なことを話題にすると、自主的にアドバイスをしてくれます。「先生にアドバイスした」という状況は、学習者の記憶に残ります。

まとめ

「~んですが、~いただけませんか」の文法は「~てください」で代用することができます。「~んですが、~らいいですか」の文法は「私は何をしますか」と言えば、何となく意思が伝わります。

しかし、これでは日本語が上達しませんし、日本人とのコミュニケーションもうまくいきません。学習者にこの文法を学習する必要性を伝え、比較的長く言いにくい文法だけれども、頑張って身に着けよう!と励ましながら授業を進めることが大切です。

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