不自然な演技での導入はもうおしまい。使える導入例文を生み出す方法!学習者と会話しながら導入するには!?

みなさんはどんな授業の導入をしていますか?導入に自信がありますか。その導入で使った例文は学習者が今の生活で使えるものですか。教師の不自然な演技で導入していませんか?

今回は不自然な導入にさよならし、自然な導入をする具体例を『みんなの日本語 第15課 「~てもいいですか」』を例にお伝えします。

目次

よくあるイマイチ導入

教師がひとりコントを始めるパターン

教師:今日の勉強を始めましょう。
今日はみんなの日本語 第15課を勉強します。
私はきのうレストランへ行きました。
私はたばこが好きです。
たばこが吸いたいです。
吸います。いいですか?
わかりません。
店の人に聞きます。
たばこを吸ってもいいですか。(学習文法の提示)

ちょっと極端な例を書いてしまったかもしれませんが、これが教師がひとりコントを始めるパターンです。何がイマイチだったか?

  • 教師一人で場面設定までもを日本語で説明
  • 教師が考えた台詞を全部言う
  • 学習者は見ているだけ

という導入であることです。

ズバリ言います。これでは学生が「え?先生は何を話しているんだ?」と思っている間に、導入が終わります。学習者の聴解力は学習しているレベルよりもワンランク下であることが多いです。導入に使われる文章がいくら短文でも、教師が既習の語彙と文法だけを使っても、学習者がすぐに意味を理解するのは難しいです。

聴解力が弱い学習者は、「私はきのうレストランへ行きました」「私はたばこが好きです」「たばこが吸いたいです」と続く文章を聞き、意味を理解するのには時間がかかるのです。

その文法、いつ使うの?導入

学習者にイラストを見せるパターンの導入。よくありますね、私もよくイラストを使います。こんな感じでイラストを見せて、

教師:何をしていますか?

学習者:テレビを見ています。

教師:そうです。みんなでテレビを見ています。それから、女の人は聞きます。

教師:女の人は何を言いますか?

学習者:テレビを消します。いいですか

教師:そうです。今日勉強する文法です。テレビを消してもいいですか?(学習文法の提示)

教師が学習者との会話を続け、最終的に学習文法が提示できたことは問題ないのですが…。この導入のどこに改善ポイントがあるかわかりますか。

今のこの時代、家族(または友達)と一緒にテレビを見て、自分が「テレビを消してもいいですか」と聞くシチュエーションって、多いでしょうか?私が日本語教師を始めた20年程前でさえ、テレビを持っている留学生は少数でした。

今はインターネットで動画を見る学習者がほとんどではないでしょうか。このように、学習者が実生活で使うチャンスがない導入例文もイマイチだと言えます。

使える導入例文を生み出す方法

導入例文を考えるときに、忘れてはいけないのが、学習者が実生活で使える場面を考えること。これが大切です。まぁ、それを考えるのが意外に難しいんですけどね。では、「~てもいいですか」が使える場面とはどんな場面なのでしょうか?

導入例1

季節は秋だと仮定。教師は授業を始める前、教室に入り、「おはようございます」とあいさつをする。「みなさん、いますか?」と聞きながら、出欠席をとる。教師がふと開いている窓に気付く(ふりをする)。

教師:あ!窓が…。(寒そうな動作をする)閉めます。いいですか?

学習者:はい、いいです。

教師:ありがとうございます。窓、閉めます。いいですか を今日勉強します 文法で言います
窓を閉めてもいいですか。(学習文法の提示)

季節によって、「エアコンをつけて(消して)もいいですか?」の例文に変更可能です。

この導入はよくあるイマイチ導入と何が違うのか?

  • 導入時に学習者も発言しているということ
  • 学習者にも使う場面があるということ

この2点です。「窓を開けて(閉めて)もいいですか。」「エアコンをつけて(消して)もいいですか。」は、学習者も日常生活で使うチャンスがある例文ですね。

もちろん、この導入を考えるときには、いつも教室の窓(エアコン)がどうなっているのか。窓(エアコン)の近くにいるのは誰なのか、などを知っておく必要があります。窓(エアコン)の近くにいる学習者の聴解力が非常に弱い場合は、教師との導入会話に参加できない可能性があり、この導入が成り立たなくなってしまいますからね。

導入例2

いつも携帯電話でいろいろな写真を撮っている学習者がいたら…

教師:写真が好きですか?

教師:いつもどんな写真を撮りますか?

などと写真に関する会話をしたあとに、

教師:私は公園でかわいい子どもを見ました。写真を撮ってもいいですか?(学習文法の提示)

と言い、文法導入をします。

導入例2は、文法学習以外にも、日本のマナーや習慣などを学習者に伝えるという意図があります。私が以前に担当したクラスに写真が趣味の学習者がいました。

学習者が公園で写真を撮っていたとき、かわいい子どもを見かけたので、写真を撮ったらその親に怒られた。日本では他人の子どもの写真は撮らないほうがいいんだとわかった、という話をしてくれたことがあります。学習者には導入しながら、日本のマナーや習慣などを伝えることも大切ですね。

導入例3

旅行が好きな学習者がいたら…

教師:どこへ行きましたか?

教師:新幹線に乗りましたか?

などと旅行に関する会話をしたあとに、

教師:ここはどこですか?

学習者:新幹線です?

教師:ここに荷物を置いてもいいですか?(学習文法の提示)

と文法導入します。

新幹線のこちらの場所に荷物を置くことは以前は無料でしたが、2020年5月から一定のサイズ以上の荷物を持って新幹線に乗るとき、事前予約しておくと、この荷物置き場が使えるように変更になりました。学習者が知っておたほうがいいな、と思う情報も導入や練習時に組み込むと、学習者を例文に引き付けることができます。

まとめ

学習者が実際に使うチャンスがある例文で導入と言われても、慣れないうちはどのような例文が実際に使うチャンスがあるのかわからないものです。

常日頃から、授業中はもとより、休み時間の様子もチェックし学習者の仕事や趣味、学習目的などを知っておくこと、例文や導入時の学習者との会話が浮かびやすくなります。休み時間やフリートーク中の学習者にも注目してみてください。

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