日本語教師デビューが決まった方へ ~付随業務の紹介と片付け方

養成講座を修了し、あるいは能力試験に合格し、晴れて日本語教師デビューが決まったみなさん、おめでとうございます。

「憧れていた職業にやっと就くことができた」とわくわくしている人、「養成講座の実習でやっていた教案作り&授業を一人でやらなければいけない」と不安になっている人、様々だとは思いますが、楽しみ半分不安半分というところでしょうか。

日本語の先生は基本、忙しいです。授業準備が大変なことは、この記事を読んでいる皆様は十分すぎるほどご存じかとは思いますが、授業準備以外にも付随業務としてやらなければならないことが山ほどあります。

養成講座の実習で教案作りの大変さに嘆けば「仕事になったらこれが毎日なのよ?」と先生に言われたり、日本語教師の先輩に話を聞けば「駆け出しのころは寝ないで準備したよ」などという武勇伝を語られたりしたかもしれません。

この記事は、日本語教師デビュー前の方が力みを取って仕事ができるようになることを目的に書きました。日本語教師の付随業務には何があるのかを紹介し、それぞれの業務のポイントを伝えていきます。

今回は「非常勤講師」であり「チームティーチング」で教える場合に限って書きます。

目次

日本語教師の仕事~授業とその付随業務

授業

言うまでもなく、日本語教師のメインの仕事です。これまで模擬授業をやって学んだことを活かしてください。とりあえずは、以下の点だけ気をつけてみましょう。

まずは、出勤!休まないこと。

体調が悪くて少し無理して出勤した日でも、ここは気を確かに乗り切ってください。(そう、このお仕事は当日欠勤すると後々面倒なので、ちょっと無理して出勤することがあります。)この後の採点等の仕事は、どうにでもなりますから。

その日の指導項目全てを入れる

普通は教案通りには進みません。でも、チームで教える場合が多いと思うので、とりあえず、スケジュールに示されたその日やるべきことを終わらせるようにしましょう。「あと文法一つ入れなきゃいけないけど、残り時間5分しかない!」というときは「導入」部分を終わらせておくだけでも、次の先生の負担がだいぶ減ります。

質問はその場で答えなくてもいい

学生からの質問は、その時考えても答えがでないとき、クラス全体に共有する必要性を感じないときは、一度「宿題」として持ち帰るか、授業後に対応するようにしましょう。

授業後は「私(教師)一人で喋ってた」「語彙コントロール間違えた」「伝わらなかった」「時間配分間違えた」「質問に答えられなかった」…できなかったところばかり気になっている人もいると思います。しかし、どんなベテランの先生でも「今日は上手くいかなかった」と落ち込むことがあると言います。

「授業後は必ず反省と振り返りを行い、できなかったところは、どうしてできなかったのか考えましょうねー(^_₋☆」などともっともらしいことを言われるかもしれません。確かに「反省」はとても大切なことですが、今考えても仕方ないことも沢山ありますし、場数を踏むだけで解決していく問題もあります。

何より、まだ一つ一つの業務に時間がかかって仕方がない時期です。とりあえず目の前にある仕事を完了していれば自分を褒めてください。「何だか今日は準備が早く終わって時間があるなぁ」というときは、しっかり栄養を取って早く寝てください。

授業準備

皆さんが養成講座などで大変な思いをして取り組んだ教案、教材作り。こちらも皆さんが養成講座で学んだことを活かして、大いに悩んで教案を書いてください(笑) 以下で、授業準備の際に注意すべきポイントと、ちょっとしたことだけど習慣化すると授業がラクになるポイントを紹介します。

導入で、どんな例文を出すか

ここに時間を割いて考えてみてください。練習メニューは、一から全て考えようとしなくても、教科書にあるものなどを少し調理アレンジするくらいでもいいと思います。

授業中に優先したいことが一目でわかるように

語彙コントロールが慣れないうちは、教師の台詞を全て教案に書くかもしれません。そうするとどうしても教案が長くなり、授業が終わってから「大切なことが台詞に埋もれていて、忘れていた」ということになりかねません。

その教材本当に必要?

近年、PPTなどを使って授業を行う先生も多くいらっしゃいますが、筆者のようにまだ手書きの板書と絵カード文字カードの授業を行う場合、教材が多すぎると授業中に手元がバタバタしてしまい、スムーズに進まなくなります。

ただでさえやることが沢山あるので、教材を作る時間(ネットで探すのでさえも結構手間です)が減らせるものなら減らしたいですよね。文字や絵の情報がなくても、口頭で済ませられないか?ただ「楽しい」だけの教材ではないか?こうやって考えていくと、削ってもいい教材が出てくるかもしれません。

配布物はできれば前日までに用意

当日はコピー機が混む可能性がありますし、直前に印刷しようとすると、コピー機が上手く作動しなく慌てる、ということもざらにあります。

事務連絡はないか

特定の学生に伝えなければならないことはないか(提出物の催促、欠席した学生への連絡事項など)確認しておきましょう。チームの相方の先生や事務から「○○さんにこれを伝えてください」と言われることがあります。

採点

テストや宿題の採点は、慣れないうちはけっこう時間がかかるしストレスです。事前に知っておくだけで後の負担を減らせることもあるので、2点紹介します!

採点基準を決める

点数を出さなければならないものの場合、文法の活用ミスは-2、語彙のスペルミスは₋1などと採点基準を決めて、全員同じように付けましょう。学生が「どうしてここは減点されているのか」と聞いて来た場合に、説明できるようにしておくことが大切です。

赤ペン問題

これはご自分の好きなようにすればいいですが、筆者は「間違えたところの直し」「マイナス点」だけを記入するようにしています。正解のところ全てに〇をつけていると、それだけで腕が疲れますし(腱鞘炎になる人もいるほどです)、赤ペンの消費も早くなります(赤ペンは自前です)。ましてや、満点の人に花丸をあげたり「よくできました」シールを貼ったりということは、筆者はしません(笑)

引き継ぎ

機関によりますが、非常勤の先生同士は普段顔を合わせられないことも多いので、メールなどで引き継ぎをすることになります。口頭で伝えるよりも、メールでの引継ぎは意外と時間がかかります。

引継ぎが上手くいかずトラブルになることも考えられるので、最低限以下の3点は伝えるようにしましょう!

何よりも「積み残し」を早く伝える

スケジュールにあった項目を全て終えられなかった場合、次の先生の授業準備の都合もありますから、なるべく早くメールして伝えてください。

学生への連絡事項

欠席した学生に伝えてほしいことなどは忘れずに伝えてください。

例えば、授業内に会話テストの告知をしたときは、次の先生に、休んだ学生に会話テストの告知シートを渡し、ペアの相手や順番などを伝えていただくようにお願いします。

さらに、先生方が共有している返却物ファイルなどに、その学生に渡してほしいシートを入れて、伝えてほしいことが一目でわかるよう付箋でも貼って書いておくといいかもしれません。

学生の様子や授業内容、理解が難しかったところなど

これをどの程度詳しく書くのかは人によるので、様子を見て、書く量を調節してください。積み残しさえなければ「本日の授業は予定通りです」だけで終わる先生も多いです。

学生対応

学生対応は授業する度に毎回というものではないのですが、予想だにしないこともけっこう発生します。具体的な事例や対応策を知っておくと、いざというときに心の余裕が持てるのでご紹介します!

学生から、日本語のことはもちろん、それ以外のことについても沢山質問や相談を受ける機会があります。ホストファミリーや友だち、バイト先の人との日本語のやりとりで困ったこと、更に「自宅に郵便物が届いたので訳してほしい」「ゴキブリが出たけどどうしたらいいか」など、学生たちは本当に色々なことを聞いてきます。

「どこまで世話をしてあげるべきなのか」それは先生個人の考え方によるところです。「学生に力を貸してあげたい」と思うことはいいでしょう。しかし、繰り返しになりますが、ただでさえも日本語教師はやることが沢山あって忙しいのです。ご自分の負担にならない範囲で面倒をみてあげてくださいね。

筆者はというと、日本語に関する質問にはできる限り付き合います。特に、当然のことながら、授業で扱った項目が理解できないと言ってくる場合は放っておくわけにはいきません。授業外で補講をすることもあります。

しかし、それ以外のことは授業の前後や休憩時間の数分で対応するにとどめています。また、面倒を見すぎると学生が、先生をお母さんか誰かと勘違いして甘えが出る可能性がある、という別の問題もあります。

筆者が駆け出しのころ、一人の学生が何やら葉書を見せてきて、「電話番号はどれですか」と聞いてきました。その葉書は警察署からで「落とし物が見つかったので、〇月〇日までに電話連絡の上取りに来るように」というものでした。

直感で「私に電話してほしいということだな」と思いましたが、「電話番号はこれですよ?」とだけ言って返したら、渋々自分で電話をかけていました(いじわるですね)。

日本語の学生なのですから、せっかく実生活で日本語を使う機会があるなら、できる限り自分でやってみようという姿勢でいてほしいですね。

教師間ミーティング

学期終了前後に在籍している教師全員が集まってミーティングが行われることが多いです。多くの場合強制参加ではなく、他の仕事があれば欠席しても大丈夫ですが、学校の方針を知ったり、出勤曜日が違う先生方にお目にかかったりできる機会なので、出席してみるといいと思います。

また、「ミーティング」という名がつくほどのものではなくても、授業の前後に、その日出勤していらっしゃる同じクラスを担当する先生方が集まって、試験の採点基準やクラス運営について話し合うこともあります。

シラバス、テスト等の作成

この辺は専任講師の仕事であったり、既存のものを使いまわしたり、ということが多いですが、非常勤講師が担当することもあります。

一人でクラスを運営しなければならないときは、教科書選定からスケジュール、評価方法決定、テスト作りまで全てをすることになります。また、歴史が浅い機関の場合も、非常勤講師が手分けしてシラバスやテストを作ったりということもあります。

まとめ

いかがでしたか?日本語教師の仕事でイメージしやすいのはもちろん授業なので、「え、こんなこともあるんだ」と思った方もいるのではないでしょうか。「私は『日本語教師は寝られない』のなんて覚悟している!よーし!毎日寝ないで準備するぞー!!」というやる気にあふれている方もいるかも…?いや、そこはちゃんと寝てくださいね。

もちろん、熱意を持って仕事にあたることは大切です。ただ、「一に仕事、二に仕事…」とやっていて心身の調子を崩しては意味がありません。それだけ大切な仕事にも確実に支障をきたします。

まずは今の自分の力以上のことをしようとせず、仕事を完了させることを考えてください。やるべきことをやったら雇用側に必要以上に気を遣う必要はありません。それでもこの仕事を続けてさえいれば、日々進化していくはずです。

みなさんの日本語教師デビューがスムーズになりますように!

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