オンライン授業の「(他動詞)てあります」の活動はこれ!オンラインでも楽しくコミュニカティブな授業に!

こんにちは!SenSee編集部のハルです!

私は東京の日本語学校で7年間、非常勤講師として欧米の学生を中心に教えています。3月に学校がオンライン授業を取り入れて以来、今やオンライン授業数は400時間を超えました。皆様、オンラインで楽しい授業をしていますか? 

楽しくてコミュニカティブな授業は、なかなか難しいですよね。いろいろ教え方の本がありますが、本を読むよりも、実際に授業をした経験者にコツを聞いてみませんか?

このコラムでは、実際に私が学生から「面白かった!」と言われた授業について、具体的な文型を例にしてご紹介していきます。

今回は、初級後半で学習することの多い、話し手が「誰かが意図的にした状態を伝えたい」時に使う「(他動詞)てあります」について、オンライン授業ならではの導入、練習、活動をご紹介したいと思います。

目次

似ている文型って、どう教えるの?
「(他動詞)てあります」と「(自動詞)ています」の違い

学生からの質問で、「これとこれ、何が違いますか」ってすごくよく聞かれませんか?初級から上級まで、どの学生も聞いてきますよね。皆様はどうやって違いを説明していますか。

似ている文型を教える時に有効なのは、二つの文型を、同じ場面で対比させることです。例えば、終助詞の「ね。」「よ。」も似ているけど使い分けがありますよね。どうやって教えたら、学生はすんなりわかってくれるのでしょうか。

私は、いつもラーメンを食べる場面で教えています。学生Aと一緒に「このラーメン、おいしいね。」と笑い合い、それを見ている学生Bに、「Bさん、このラーメン、おいしいよ」と言います。同調の「ね」と情報を伝える「よ」を、ラーメンを食べるという一つの場面で対比させることで、ほとんどの学生が一発で理解してくれます。

今回の文型も同様に、「(他動詞)てあります」と「(自動詞)ています」を一つの場面で対比して、学生に違いを認識してもらいます。

それでは早速、授業内容を見てみましょう。

「(他動詞)てあります」の導入

【1】「(自動詞)ています」の復習

パソコンのカメラを自宅の窓に向け、「窓が?」と言って、学生に「開いています」を言わせます。次に、カメラを卓上のステンドガラスの飾りランプに向け、「電気が?」「ついています」と言わせます。前回勉強した「(自動詞)ています」が、今、この目で見たままの状態を言う時に使うことを確認します。

「(自動詞)ています」の詳しい説明はこちらで紹介しています。

 【2】 「(他動詞)てあります」の導入

焦げたパンケーキの写真を見せ、「私は料理が下手です。この部屋はちょっと臭いですね~。だから、私は窓を開けました。今、窓が…」と言って窓を映し、「開けてあります」と導入します。

続いて、飾りランプを映し、「誰が電気をつけましたか? 私じゃないです。娘?夫?分かりません、でも、誰かがつけました。きれいですから。今、電気が…」と言って、「つけてあります」と導入します。

【3】違いを学生に考えさせる

図1を見せて、「開いています、と、開けてあります、何が違いますか」と学生に問いかけ、考えさせます。

「動詞が違う」と声があがったら、「(他動詞)てあります」と板書します。人の存在に気が付いたら、「誰が開けましたか、どうして開けましたか」と問い、動作主の行為と意図を確認します。

続いて図2を見せ、動作主が誰か分からなくても、「こういう意図で誰かがした」と自分が思ったら、「(他動詞)てあります」が使えることを確認します。

このときのポイントは以下の2つです。

  1. 「(自動詞)ています」=ただ見たままの状態を伝える時に使う
  2. 「(他動詞)てあります」=見たままの状態だけど、誰かが意図的にした、と言いたい時に使う

この2点を絶対に!はっきりと教えましょう。

「(他動詞)てあります」の練習

他動詞は、この学習項目の前に学習している前提です。他動詞フラッシュカードで、口慣らしをします。

T:(フラッシュカード) あけます、て形は?

S:あけて

T:てあります?

S:あけてあります

T:ドア?

S: ドアが あけてあります

T: OK!

「て形」→「~てあります」→「Nが〜てあります」という順番で、徐々に難易度をあげて口慣らしをします。ここはテンポ良く進みます。

次に、パソコンカメラでプッチンプリンを映して、「娘の名前が書いてあります。どうして?」と学生に動作主の意図を言わせます。次に娘の宿題を映し、「名前が書いてありません」と否定形の作り方を確認します。これはクラス授業でも、「この宿題は誰のですか、名前が書いてありません」と使える方法です。

「(他動詞)てあります」の活動

ここまで読んで、まだ「難しいなあ」と思われる方もいらっしゃいますよね。そんな時は、こんな活動もおすすめです。以下の2つの活動は、私が授業でして好評だったので、ご紹介します!

場面1. 自分の趣味や好きな物を紹介する

学生に自分の部屋の状態を自由に話してもらいます。「~が飾ってあります」「~が置いてあります」等を使って、趣味や好きな物の紹介をします。飾ってある家族写真やアニメフィギュアを見せたり、置いてあるギターで一曲弾いたりする学生もいて、見ている他の学生は画面に釘付けです。質問タイムを設けると、学生同士の会話が活発になり、盛り上がること間違いなしです!

場面2. 商品のパッケージ

ひらがなの商品パッケージを見せて「~と書いてあります」を導入します。次に漢字の商品パッケージを見せて、分かりますか?と聞きます。学生は漢字が読めないので、「何と書いてありますか」を導入します。講師は「~と書いてあります」と言いますが、学生は漢字の発音が分かっても意味が分からないので、「〜って何ですか/どんな意味ですか」も提示します。

導入が終わるや否や、すぐに学生は家の中をガサゴソしだして、色々なものを私に見せて質問してきました。富士山登山をした学生はお土産を買ったのですが、そこに書いてある日本語がずっと気になっていたようで、その意味が分かって喜んでいました。学生の身の回りにある気になる日本語は、学生の「知りたい!」を刺激するようで、この活動は毎回学生に感謝されています。

まとめ

似ている文型がある時、必ず学生は混乱し、質問が出ます。あらかじめ想定して準備するのが一番ですが、もし咄嗟に聞かれたら、講師は慌ててしまいますよね。

その場合も、今回のように、同じ場面で対比をすると良いでしょう。焦っていろいろな場面や例文で説明しようとすると、語彙の説明など関係ないところで時間がかかったりするので、本質を説明できません。一つの場面で二つの文型を対比、このシンプルな流れで、「分かりやすい先生」を目指しましょう!

次回は、学生にたくさん話してもらうにはどうしたらいいか、「授業の80%は学生の発話」にするためのアイデアを、具体的な文型を例にしてお話しできればと思います。自分ばかり話している気がする、学生の発話が少ないとお悩みの先生方、必見です!

それではまた別の機会に。

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