単調な練習方法から脱出!発話中心の教科書問題を解くだけじゃない練習方法とは!?

文法の導入でお悩みの日本語教師のみなさま!

文法を導入したあとに、どのくらいの練習問題を用意していらっしゃいますか?練習問題は作成が大変なので、ついつい教科書に掲載されている練習を解くだけで終わってしまいますよね。。特に難易度なども考えて低いものから高いものに段階的に用意するのも一苦労。。

でも実は、文法の理解度はその後の練習問題によって大きく左右されるってご存知でしたか?

今回は、そんな文法レッスンで起こりがちなお悩みを解決できる内容を書いていきます!日本語教育の現場でよく使われる教科書「みんなの日本語」の第27課、可能形を例にして、教室でできる発話中心の練習を余すことなくご紹介!

わかりやすく説明していきますので、まずは問題数の目安からみていきましょう!

目次

問題数は学習者に合わせて

あなたの教案には同じ種類の問題がいくつ用意されていますか。クラス人数が20名だとしたら、何題用意しますか?クラス人数が20人なら、10問は用意するのがベストです。私が教案チェックをした際、5問程度(つまりは教科書に掲載されている問題とほぼ同じ)しか用意していない方が大半でした。

なぜ、10問なのか?!問題は全体練習後に個人練習をするのが基本。問題数が5問程度だと、学習者が同じ問題を何回も耳にすることになり、すぐに練習に飽きてしまいます。「みんなの日本語Ⅱ 第27課」を例に挙げて説明すると、教科書 練習B(P13)1には、

  • 例:日本料理を作ります→ 日本料理が作れます。
  1. 漢字を読みます→
  2. 自転車を修理します→
  3. 一人で着物を着ます→
  4. どこでも一人で行きます→

上記の4問、例を入れて5問の掲載があります。可能形の練習ですが、この練習で触れる動詞は「作れます・読みます・修理します・来ます・行きます」の5種類だけ。しかも、全部「みんなの日本語Ⅰ」で習ったものばかり。成績上位の学習者には簡単すぎます。よって、用意する問題は学習者人数の半分くらいが適当です。

練習は全体練習から個人練習へ

教室での練習は口頭練習に重きを置く場合が多いです。その際、問題は易しいものから難しいものへ。練習は全体練習から個人練習へ移るのが基本です。全体練習の際に、全員声を出して練習できているかを確認し、その後個人練習へ移ります。個人練習を当てるときは、成績真ん中より上の学習者から順番に指示するこれが基本。

理解に時間がかかる学生から指示すると、間違えたり、答え方がわからなかったりする可能性が高く、スムーズな練習が続けられなくなります。また、学習者が「わからない」「間違えて、恥ずかしい」という気持ちになりやすいです。ですので、成績下位学習者は、いくつかの練習を耳にし、答えられやすい状況になった後半に指示するのが賢明です。

学習者が答えられたら、褒めること。タイミングをみて、多くの学習者を褒めてあげてください。学習者のやる気につながります。

単語の変換練習

動詞の活用を学習するときは、動詞のみの変換練習から始めるのが通常です。そして、練習は一番活用が簡単な2グループから行い、続いて3グループ、1グループ」の順に行います。

忘れてはいけないのは、「活用できない動詞がある場合」「『います』だけれども、2グループに分類される動詞の確認」このふたつです。

例えば、可能形では『わかります』『なおします』など、すでに可能の意味を持つ動詞は可能形にはできません。学生に注意喚起する必要があります。

単語の変換練習は次の④パターンを用意します。

① 書いて確認(書く練習が必要な場合のみで可)

学習者は今までに学習した単語の意味をすべて覚えているとは限りません。今までに学習した動詞や第27課でよく使う動詞の意味を再確認させるためにも、書きながら活用を確認します。変換が複雑な動詞のみ書いて確認する、でも構いません。

「みんなの日本語」の場合は、「書いて覚える文型練習帳」が副教材であり、動詞変換を学習する課には、必ず書いて確認する練習が載せてあるので、参考にしてくださいね。

② FC(フラッシュカード)で確認

教師がカードに書かれた動詞を見せて、学習者が可能形を言う練習

見た動詞の意味をすぐに理解し、可能形にする練習。学習者は「単語を見る→意味が分かる→動詞変換する」の流れがスムーズにできないと、短文が言えるようにはならないので、そのための練習です。

FCに書く単語を漢字表記にするか、漢字にふりがなをつけるか、ひらがな表記のみにするか、は学習者に合わせて決めてください。漢字圏の学習者の場合、漢字表記にすると、読めなくても意味がわかってしまう可能性があります。

FCを見せながら、

  • 教師が読む→学習者が可能形を答える
  • 教師はFCを見せるだけ→学習者が可能形を答える

このふたつでは、難易度が異なります。学習者に合わせてパターンをセレクトするのも練習が単調になるのを防ぎます。

③ FC(フラッシュカード)で可能形からの動詞活用確認

肯定形ほど練習は多くなくてかまいませんが、可能形の否定形や辞書形、て形なども忘れてはいけません。

④ カードを見せず、教師が動詞を言い、学習者が可能形を言う練習

「聞いて意味がわかる」ということが会話には大切。そのための練習です。ただし「起きます・置きます」など同音異義語などは学習者の混乱を招くので、名詞+動詞にするか、練習から外すか、どちらかの対処が必要。

短文での口頭練習

みんなの日本語Ⅱ 第27課」練習B(P13)にはこのような問題が用意されています。

この上から4問(例を入れて5問)で、全体練習と個人練習をすると、学習者は何回も同じ問題を解くことになります。ですので、問題数をプラスして、

  • 例:日本料理を作ります→ 日本料理が作れます。
  1. 漢字を読みます→
  2. 自転車を修理します→
  3. 一人で着物を着ます→
  4. どこでも一人で行きます→
  5. お茶を飲みます→
  6. 100メートルぐらい泳ぎます→
  7. 日本語で電話をかけます→
  8. 日本語のメニューを覚えます→
  9. 簡単な料理を作ります→
  10. 日本語の歌を歌います→

⑥〜⑩の問いなどを追加します。昨今のコロナ禍の社会状況を踏まえて「みんなで食事をします」「県外へ旅行へ行きます」などを練習するのもいいでしょう。もちろん「県外」は初級では未習語彙ですが、日本に住んでる学生なら知っておくべき言葉です。

設備の意味も同時に練習する場合は

  1. 〇△銀行でドルから円にお金を換えます
  2. ソフトバンクで安い携帯電話を買います→
  3. 〇△図書館では2週間本を借ります→

など、少し長めの文にチャレンジすることができます。日本に住んでいる学習者だったら、銀行・携帯電話会社・図書館の固有名詞が言えることも必要なので、練習に組み込むのもいいですね。

学習者のレベルが低い場合(聴解力が低い場合も)は、「日本語の料理を作ります」をPowerPointなどで見せて、学習者に答えさせる、という段階から練習をスタートさせるとスムーズに進みます。

イラストで練習

学習者にイラストを見せて、イラストに合った文を発話させます。

などのイラストを見せて、学習者に

  1. 私は英語が話せます。
  2. 私は料理ができます。
  3. 図書館で外国語の本が読めます。
  4. あのレストランはテイクアウトができます。

と答えさせる練習です。

なぜイラストを使うのか?イラストを見て、適切な日本語が使えるかどうかを確認するのです。状況を見て、適切な日本語が使えるというのは、非常に大切です。

上記イラストは「かわいいフリー素材集 いらすとや」からお借りしたものですが、それ以外にもインターネット上には無料で使えるイラストが大量にあります。しかし!私はできるだけ日本語教材から使うことをお勧めします。なぜなら日本語教育の専門家の方々が研究に研究を重ね出版したイラスト。それは、

  • 外国人がイラストを見たとき、こちらが意図する答えが言えるようなイラスト
  • 外国人が見ても、理解ができるイラスト

なのです。

私はイラストが必要な場合は、教科書及び、付属の問題集などはもちろん、同じレベルの他の教科書からも探します。凡人者から出版されている「絵で導入・絵で練習」もよく使います。(その際、未習語に注意!)

学習者に自分のことを話させる

「学習した文法を使って、自分のことを話してみる。」これは例文を丸暗記するより、定着がはかれます。しかし、「可能形を使って話してください」なんて無茶ぶりは、成績上位の学生がそろっているクラスではできますが、それ以外のクラスではなかなか難しいもの。そんなときは、イラストで練習のあと、学習者に聞き返してみるのです。

教師は、下記のイラストを見せる。

学習者:私は英語が話せます

教師:〇〇さんも、英語が話せますか?

学習者:はい、話せます

教師:すごいですね。国で習ったんですか?

という感じです。「国で習ったんですか」「いつから勉強しているんですか」などと聞き返せば、会話が続けられます。最後に「では、△△さんに聞いてください」と言えば、学習者Aが学習者Bへ「英語が話せますか」と聞くことになり、学習者同士の会話練習につながります。

ひとりの学習者がいろいろなことができる、と能力を披露する場面にならないよう配慮してください。教師は今までの授業を通して知った学習者の情報をもとに、ひとりひとりが自分ができることが言える場面を作ることが大切です。学習者の仕事(アルバイト)に触れるのも交流をはかるいい機会です。

  • (運送会社の場合)私の会社では、一週間でアフリカに荷物が送れます。
  • (レストランの場合)私が働いているレストランでは、1000円でたくさん食べられます。

前件&後件 作文

  1. 週末、一緒にご飯を食べに行きませんか。
     …すみません。約束がありますから、______________________。
  2. 体の調子が悪かったですから、______________________。
  3. お金が足りませんでしたから、______________________。
  4. ______________________、お酒が飲めません。

このように、前件と後件がある文章を提示し、一部分を学習者に作ってもらいます。

  • 話の前後関係がきちんと理解できているか。
  • 説明足らずな文章になっていないか。

などを確認します。

  1. 週末、一緒にご飯を食べに行きませんか。
    …すみません。約束がありますから、 行けません。また、次お願いします 

    と、「また、次 お願いします」まで言える学習者とそうでない学習者。
  2. 体の調子が悪かったですから、 薬が飲めませんでした 

    と、前後関係を理解していない学習者
  3. お金が足りませんでしたから、 買えませんでした 

    と、「え?何が買えなかったの?」と聞きたくなるようなことを言う学習者。
  4. 日本では20歳以下は 、お酒が飲めません。

    と、例文を作れば、日本の法律を紹介することができます。日本では飲酒後に自転車に乗ることも禁止されていますが、知らない学習者もいるかもしれません。注意喚起するいいチャンスです。

会話練習

「みんなの日本語」のテキストでは、練習Aから始まり、練習C、会話に続いていく、という流れです。

STEP
イラストで練習
STEP
学習者に自分のことを話させる
STEP
前件&後件 作文

の練習を工夫し、発展させれば、練習C相応の会話文が作成できます。それがなかなか難しい場合は、

  1. このビルではどこでたばこが吸えますか。
  2. このクラスではだれがダンスができますか。
  3. 〇〇さんの国では何歳からお酒が飲めますか。
  4. 〇〇さんのレストランでは10人で飲み会ができますか。

可能形を使った文で学生に質問を投げかけます。学習者が答えた答えから、「みんなの日本語 Ⅱ 練習C」の会話につなげていくことも可能です。

教師:このビルではどこでたばこが吸えますか?

学習者:1階の喫煙所でたばこが吸えます

教師:いつでも吸えますか?

学習者:いいえ、授業が終わったあとだけです。

会話パターンがわかれば、「みんなの日本語」には「みんなの日本語 練習C・会話イラスト」も副教材で用意されていますから、それを使って練習もできます。教科書に掲載されている会話をそのまま暗記し、発言できることも大切ですが、同じ難易度で同等の会話ができれば、日本語能力としては問題ありません。学校の方針で「会話を覚えさせる!」と決まっている場合は話は別ですけどね・・・。

まとめ

「みんなの日本語 Ⅱ 可能形」を参考に、基本的な練習方法をご紹介しました。教科書での該当部分は「練習B 1・2・3」の合計12問のみの練習ですが、こんなにも問題数を増やすことができます。

学習内容・学習時間・学習者のレベルによって、毎回同じ練習ができるわけではありません。その時々に応じて、減らしたり付け加えたりしてみてください。今回はあくまで「練習方法」なので、導入&文法説明に関する部分は紹介していません。ご了承ください。

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる