日本語授業の小ネタ紹介〜初級編!ちょっとしたブレイクでワンランク上の授業へ

クラス活動にお困りの日本語教師の皆さま!

毎回、授業のウォーミングアップ時間に何をしたらいいのか迷っていませんか?そのほかにも、

  • 授業が数分早く終わってしまったとき、何をしたらいいかわからない
  • 授業半ばで、学習者の集中力が切れてきたとき、もう一度授業に引きつける何かが欲しい

そんな悩みをお持ちではありませんか?

今回は、日本語教師歴17年目の私がよく使っている、しかも盛り上がる小ネタをご紹介します。明日からの授業に使えるものばかりです。ぜひ使ってみてください!

目次

季節の話題

初級から上級の学習者まで、レベルに関係なく話題にできるもの、それは季節の話題です。

日本語学習者として、知っていて損はない、むしろ知っていなければ損をする季節の話題。季節の話題は日本語の問題を解くうえでも、日本人とのコミュニケーションをとるうえでも、基礎知識がないとなかなか理解しにくいものです。

特に日本のドラマや漫画など、サブカルチャーが好きで日本語を学習している人は、特定の日本の行事に興味を持っているかもしれないので、そんな季節の話題をウォーミングアップで使わない手はありません!

ということで、下記に季節の話題として使えるものをざっと挙げてみました。

季節イベント
1月お正月 / 初夢 / おせち / 七草粥 / 成人式
2月バレンタインデー / 節分
3月ホワイトデー / 卒業式 / 雛祭り
4月入学式 / 入社式 / お花見
5月子どもの日 / ゴールデンウィーク / 母の日
6月梅雨 / ジューンブライド / 父の日
7月七夕 / 夏休み / 海開き / お中元 / スポーツの日
8月夏祭り / 花火大会 / お盆 / 山の日
9月お月見 / 敬老の日 / 防災の日
10月紅葉 / ハロウィン / 体育大会
11月七五三 / 音楽会
12月お歳暮 / 冬至 / クリスマス / 除夜の鐘 / 年越し蕎麦 

季節の話題のいいところは、大きく3つあります。以下で詳しく解説します!

その1 学習者のレベルを問わないこと

同じ話題でも、初級の学習者には単語の紹介のみで終わらすことができ、上級の学習者には新聞記事などを使って話を深めることができます。

具体例:初級クラスで6月の雨が続いている季節に…

教師:(学習者Aの傘を指さして)傘です。

教師:(学習者Bの傘を指さして)傘です。

教師:(学習者Cの傘を指さして)傘です。

教師:毎日、雨です。どうしてですか?

と聞きます。

「梅雨」という言葉を知っている学習者がいれば、「梅雨です」と答えてくれるでしょうし、知らなければ、教師が「今日本は梅雨です」と、「梅雨」という言葉を紹介します。

日本語学習を始めたばかりの学習者にとっては、「梅雨」という言葉を覚えるだけで、利益になりますし、間違えて「台風です」という学習者がいれば、「7月や8月によく台風が来ます」と日本の気候の特色を紹介したり、「台風」には「あります」ではなく、「きます」という動詞がよく使われることも紹介することができます。

ただし、同じ話題で話をする場合でも、教師が説明口調だったり、話し過ぎてはいけません。会話が盛り上がらなくなります。

授業が始まったと同時に、

教師:最近、雨が多いです。

教師:昨日も雨です。今日も雨です。明日もあめです。

教師:今、日本は梅雨です。

などと、教師のみの発話で、一方的に話を進めないことが大事!

このように話を進めてしまうと、学習者に 「は?先生はいったい何の話を始めたんだ?!よくわからないぞ」と思われてしまいます。同じ話題でも、上級クラスでなら、梅雨入りしたというニュースを見せたり聞かせたりして、「何のニュースですか」とか「このニュースはもう聞きましたか」などと聞くと、会話の日本語レベルがあがります

また、なぜニュースで梅雨入りを発表するのか、と問いかければ、災害が多い日本ならではの理由を知るチャンスにもなるかもしれません。

その2 学習者が興味を示さなければ、すぐに切り上げて導入に移っても、学習者に利益がある

初級クラスで6月の雨が続いている季節に…

教師:(学習者Aの傘を指さして)傘です。

教師:(学習者Bの傘を指さして)傘です。

教師:(学習者Cの傘を指さして)傘です。

教師:毎日、雨です。どうしてですか?

学生:梅雨ですから。

この会話のやりとりの後、話が広がらず終わってしまったとします。しかし、これだけでも「梅雨」という言葉をクラス全員に紹介することができます。上級クラスで、ニュースを見せたり聞かせたりしたものの、ほとんどの学習者が興味なさげ…。そんな状態だったとしても、「ニュースに触れた」ということが学習者にとって、利益になるのです。

その3 その日の学習項目に関連付けやすい

季節に関する話は、日常生活でよく話される内容なので、それらの言葉を使って、導入文や練習文を作成することができます。

具体例

1月

私も成人式に行きたいんですが、どうしたらいいですか。(みんなの日本語Ⅱ 第26課)

2月

バレンタインデーを話題にしたあと)私はチョコレートケーキが作れます。(みんなの日本語Ⅱ 第27課)

3月

卒業式で、先生の話を聞きながら泣きました。(みんなの日本語Ⅱ 第28課)(動詞「泣きます」はこの時点では未習なので説明が必要)

4月

(お花見の写真を見て)木の枝が折れています。
または、桜の花が咲いています。(動詞「咲きます」はこの時点では未習なので説明が必要)(みんなの日本語Ⅱ 第29課)

5月

予定表にゴールデンウィークの予定が書いてあります。(みんなの日本語Ⅱ 第30課)

このように、話の広げ方によっては、その日の導入文や練習文にも使うことができます。そして、忘れてはいけないポイント!それは、できるだけ視覚教材を使うことです。学習者に馴染みのない日本の行事や季節の話です。聞いたことがない、見たことがない話をするのですから、話をより分かりやすくするためには視覚教材が必要です。

教師:先週、成人式がありました。知っていましたか。

と聞くより、成人式の写真や映像を見せて、

教師:見ましたか。知っていますか。

と聞くほうが、学習者が興味を持つのは当たり前ですね。

ちなみに、私は各行事やイベントの紹介をPowerPointにまとめ、保存しています。初級用・中級用・上級用を用意しています!

PowerPointが使えないクラスでは、各話題に使えるカラー写真をファイルに入れて持っていました。そうすると、毎回のウォーミングアップを準備する時間が減りますし、ウォーミングアップで使用しなくても、学習者の集中力が切れたとき、数分授業時間が余ったときなどにも使えて、便利です。

しりとり

記憶しりとり

学習者A:いす

学習者B:いす・つくえ

学習者C:いす・つくえ・シャープペンシル

というふうに、自分より前に発言した人の単語をすべて暗記していくゲームです。

単語を覚えるのが苦手、という学習者は多いですが、このゲームになると20個ほど暗記できる学習者がほとんどです。単語を覚えるとき、何かとイメージ付けると覚えやすくなる、ということを学習者に伝えるいいチャンスにもなります。

初級クラスでは、既習語彙で記憶しりとりをして、レベルが上がれば、カタカナ語彙のみ、学校に関係がある語彙のみ、上級クラスになれば、進学に関係がある語彙のみ、など、制限付きで、ゲームを楽しむことができます。ゲーム終了時には、単語を覚えるのが苦手だと言っている学習者や語彙試験の順位が下位の学習者ができたことを褒めてあげるのも忘れずに

イラストしりとり

こちらは、カリキュラムに余裕がある、初級のクラスで使いやすいゲームです。クラス全体をいくつかのチームに分け、黒板にイラストでしりとりをしていくゲームです。

学習者A:机の絵を描く

学習者B:鉛筆の絵を描く

学習者C:月の絵を描く

※(学習者が書いたイラストが つくえ→えんぴつ→つき の順になっている)

制限時間内にたくさん描けたチームが勝ちですが、チーム内で単語を教え合うのはアリです。チーム内で教え合うと、語彙力が低い学習者でも参加することができます。また、書いた絵を使って、

〇〇さんは絵が上手です。(みんなの日本語Ⅰ 第9課 )

〇〇さんは絵を習ったことがあります。(みんなの日本語Ⅰ 第19課)

〇〇さんの絵が一番上手だと思います。(みんなの日本語Ⅰ 第21課)

これは〇〇さんが書いた絵です。(みんなの日本語Ⅰ 第22課)

などと、初級文法の導入に使いやすいです。

この活動によって、いつもおとなしい学習者がチームをまとめてくれたり、日本語は苦手で発言は少なかったけれど、絵がとても上手だったりと、学習者のいつもと違う一面を見ることもでき、クラスの雰囲気が変わります。

翻訳ごっこ

学習者に人気があるドラマや漫画の一部を学習者の母国語で提示し、学習者に翻訳させるゲームです。翻訳させる題材は、アニメの決め台詞やドラマ・映画の告白シーンだと楽しめます。初級の学生にドラマや映画の告白シーンを翻訳させるのは難しいので、アニメの決め台詞の翻訳がお勧めです。アニメなら、下記のようなものが挙げられます。

アニメ決め台詞
スラムダンク天才ですから
スラムダンクあきらめたら、そこで試合終了ですよ
セーラームーン月にかわっておしおきよ
テニスの王子様まだまだだね
名探偵コナン真実はいつもひとつ
ワンピース海賊王におれはなる

日本語は年齢や性別、話す相手によって話し方が変わります。アニメの日本語を翻訳することによって、アニメと私たちの日本語は違うんだとわかり、告白シーンを翻訳することによって、教科書とは違う日本語を知ることができれば上出来です。

これは何の音楽でしょう?クイズ

どの国にも、「この音楽を使うのは〇〇のとき!」というものがあります。

仰げば尊し

卒業式でよく使われていた音楽

蛍の光

卒業式や閉店の際によく使われる音楽

天国と地獄

体育大会

をイメージする日本人が多いですよね?

夜、店で「蛍の光」を聞いたら、「あ、閉店だから帰らないと!」と思うのは日本人だからです。この感覚をクイズを通して学習者に紹介します。

ただ聞かせるだけでなく、

教師:お店でこの音楽を聞きました。どうしますか?

と聞き、「蛍の光」を学習者に聞かせます。

この音楽を聞いても、店を出ない学習者がいることをみんなで笑い合うことができ、クラスが和みます。また、学習者自身が母国の卒業式や体育大会などの音楽を紹介してくれ、お互いの文化交流につながります。

まとめ

カリキュラムがつまっていて、こんな活動をしている時間なんてない!と思われる方も多くいらっしゃると思います。出欠席を確認したら、フリートークの時間なんてなくなっているわ。という方もいらっしゃるでしょう。私も毎回このような活動の時間をとっているわけではありません。

授業時間には行わず、今日は学習項目が多くて、疲れているだろうな、と思う日の休み時間に「これは何の音楽でしょう?クイズ」をして、学習者との交流をはかることもあります。学習者は日本語の勉強のことばかり考えていると息が詰まります。かといって、まったく関係がないこともできない。そんなときにこのような小ネタで息抜きの時間を作ってみてください!

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