こんなときどうする?① 居眠りしてしまう学生への対処法

こんにちは!

日本語の先生として教壇に立っていると、いろいろなハプニングが起きますよね。「こんなときどうするの?」シリーズでは、クラス運営をするうえでよくぶつかる問題について、実例を参考にしながら考えていきたいと思います。

皆さんが相手にするのは外国人。価値観や生活習慣は違うのだと思ったほうがいいです。そのため、問題を解決するためには想像力が大切になってきます。

特に初級の学生は、自分の状況をうまく日本語で説明できません。行動や表情から汲み取ってあげることも必要です。

まずはどう学生に接したらいいか、どんな言葉をかけたらいいか、イメージを膨らませることから始めましょう。実際にその状況になったときに、きっと役に立つはずです!

目次

こんなときどうする?

※T=教師 S=学生

T:ではみなさん、見てください。これは・・・

S:Zzz…

(くすくす、ざわざわする教室)

T:Sさん、今日も寝ていますか。起きてください!

一度だけならまだしも、毎日のように繰り返されるやりとり。皆さん経験したことはありませんか?

一生懸命盛り上げようとしているのに、そんなにわたしの授業がつまらないのか…と悲しくなってしまったり、イライラしてしまったりすることもありますよね。

注意を繰り返すだけではなかなかなくならないのが、居眠り。実は教師だけではなく、学生も悩んでいるんです。

T:どうしてそんなに眠いんですか?

S:昨日あまり寝ませんでしたから。

T:だめですよ。ちゃんと早く寝てくださいね!

S:はい…

この学生はきっと、また居眠りしてしまうでしょう。どうして昨日寝られなかったのか、どうしたら早く寝られるようになるのか。学生自身がそれを理解しなければなりません。

居眠りの理由や解決法は、学生の数だけあります。皆さんが向き合っている学生は、どんな理由で居眠りをしてしまうのでしょうか?

学生が眠くなる理由とは

授業中に眠ってしまった学生を見て、皆さんは何を考えますか?

「また寝てる。いい加減にしてよ」と思うのか、「どうしてこの学生はいつも眠いのだろう?何か事情があるのかな」と思うのか。対応はだいぶ変わってくると思います。

皆さんの学生時代をちょっと振り返ってみましょう。先生の話を聞きながら眠くなってしまったこと、ありませんか?

まだ頭がぼーっとしている1限、昼食をとってお腹がいっぱいになった午後、天気がいい日のポカポカした窓際の席、体育で体を動かした後の授業…思い当たることってありますよね。

日本語学校の学生たちも、同じような時間帯や環境で眠くなってしまうことがあります。そんなときは、自分はどうやって乗り切ってきたのか考えてみてください。何事も、まず寄り添うことから、です。

ただ、学生たちを観察していると、単に時間帯や環境だけではない場合も見えてきます。ポカポカしているからついウトウト…なんてレベルではない爆睡、いくら声をかけても全く起きない学生もいるのです。

このような学生にはただ注意するだけでなく、別のケアが必要です。教育機関の方針や、立場によってできることは変わってくると思いますが、教師として知っておくに越したことはありません。

いくつか具体的に見ていきましょう。

アルバイトに疲れた学生たち

国籍にもよりますが、アルバイトをしている留学生は多いです。ある程度日本語が話せる学生であれば選択肢も増えますが、そうでない場合は肉体労働や深夜の仕事など、選べるものが限られてきます。

よく居眠りをしてしまう学生がアルバイトをしているのなら、その時間や内容を聞いてみてください。

・週に28時間を守っているか / アルバイト先が守ってくれているか
・何時から何時まで仕事をしているか
・どんな仕事をしているか
・一緒に働いている人はどんな人か
・宿題や勉強をする時間はとれているか

授業に対して働く時間帯が合っていなかったり、あまりにも肉体的にキツイのであれば、アルバイト先に相談したり、辞める・変えるといったことを勧めたほうがいいこともあります。

夜に眠れない学生たち

留学生に限りませんが、昼夜が逆転してしまい授業の時間帯に眠くなってしまうことがあります。理由は様々です。皆さんの教育機関では、どんな話が耳に入ってきますか?

これまでわたしが関わってきた学生たちの、夜眠れない理由は以下のようなものでした。

・深夜のアルバイト
   深夜から朝までアルバイトをしてそのまま登校
・ルームメイトとの生活習慣の違い
   ルームメイトが遅くまで起きているためうるさくて眠れない
・不眠症
   眠ろうとすればするほど眠れなくなってしまう
・インターネット依存
   時間を忘れてインターネットに没頭してしまう

特に最近気になるのが、インターネットに依存している学生です。オンラインゲームが多いように感じます。一晩中ゲームをしていても、親元を離れた学生には注意してくれる人がいません。いくらでもできてしまうのです。

ゲームをやりすぎることで日常生活に支障をきたしてしまう、いわゆるゲーム障害は、WHOに新しい病気であると認められています。(2019年 第72回WHO総会)

T:Sさん、起きて!

S:先生すみません、眠いです…

T:きのう、ちゃんと寝ましたか?

S:いいえ、寝ませんでした。

T:どうして?

S:ゲーム…

T:たくさんゲームはだめです。寝てください!

上記のようなやりとりで済ませてはいけないところまで来てしまっているのではないでしょうか。明日のために寝なければいけないのはわかっている。でも、やめられない。

ひとりでは改善が難しいんですよね。早く誰かが気付いてあげて、場合によっては治療が必要なのです。学生が自分で病院を探して行くのは難しいので、一度連れて行くことも検討しなければなりません。不眠症も同様ですね。

授業についていけない学生たち

難しい話を長々と聞いていると眠くなってしまいますよね。それが外国語となれば、なおさら。授業中の先生の話がわからなくなると、うとうとしてきてしまうのです。

授業がわからないから寝る。寝てしまって授業を聞いていないから、もっとわからなくなる。そんな負のスパイラルは避けたいですね。

あまりにも学生がレベルに合っていないクラスにいるのであれば、クラス変更を検討しなければなりませんが、そうでない場合は、教師の腕の見せ所です。

わかりやすいのはもちろんですが、個々のレベルに合った質問や楽しい活動を取り入れたりして、授業についていこうという雰囲気を作ることを考えましょう。わからない学生を置いていくのではなく、引っ張っていくのです。

程よい緊張感と発話機会を多くすれば、眠る隙ができにくくなります。どうしたらできない学生でも授業に参加できるのか、配慮の仕方を考えてみましょう。授業の準備段階で、ついてくるのが難しい学生のことを常に考える癖をつけておくといいです。

授業中の注意の仕方

居眠りの原因は学生によって様々です。注意の仕方も、学生に合わせて変えていったほうが効果的なのではないかと思います。

ただ、授業中にほかの学生の前で注意するときは、できるだけ平等な言い方をしたほうがいいです。どんな事情があったとしても、居眠りは居眠り。学生によって教師が態度を変えてしまうと、不信感を持たれてしまうことがあるからです。

では具体的に、授業中に学生が居眠りをしてしまったらどうしたらいいでしょうか。担当している時間内に教師ができることを以下に挙げてみます。

  • ・学生の近くに行って小声で起こす
  • ・名前を呼んで起こす
  • ・隣の学生につついて起こしてもらう
  • ・休み時間に目が覚めることをさせる(飲み物を勧める、顔を洗いに行かせる、など)
  • ・眠そうな学生が複数いる場合、クラス全体で気分転換をする(体操やミニゲームなど)
  • ・定期的に席を替えてみる

皆さんはどう考えますか?他にもできることがあるかもしれません。もちろん、学生が居眠りをする隙を与えないような授業を行うことが大前提です!

学生との関係づくりができていれば、「Sさんが寝てしまいました。みんなで起こしてあげましょう!」と半ばイジるようにはなりますが、楽しみながら居眠りできない雰囲気にしていくこともできると思います。

授業時間は限られています。注意にかける時間はできるだけ短くしましょう。何度か注意し、どうしても起きない場合は授業を進めることを優先せざるを得ないと思います。

その学生には個別で話をすることになりますが、他の学生にも「Sさんは、あとでゆっくり先生と話します」など、指導する姿勢を見せましょう。

根本的な解決のためにできること

学生のプライバシーを守るためにも、アルバイトや生活習慣など、詳しい話を聞くのは授業外の時間をお勧めします。母国語が必要であったり、非常勤講師で授業以外に時間が取れなかったりする場合は、周りを頼りましょう。

たかが居眠り、と思わないでください。上記で見てきた通り、結構深刻な問題が隠れているかもしれません。

専任講師であれば、学校としてできるフォローを考える機会を作ってみませんか。非常勤講師であれば、専任講師に相談してみてください。

「わたしが担当している日だけ居眠りしてしまっているのではないか」とひとりで悩まずに、教育機関の中で情報共有をすることが、解決への近道になると思います。

皆さんの立場でできそうなこと、これを機会にぜひ考えていただけたら嬉しいです!

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