【鉄は熱いうちに打て!】第1回  「コーピー」「コーピ」「コーヒ」が無くなる!

このシリーズは、日本語の勉強を始めたらすぐ、学期が始まったらすぐに始めると良いこと、何か区切りの良いときに始めると良いことをご紹介するシリーズです。

「コーピー」「コーピ」「コーヒ」「コヒー」、全部よく目にする間違いですね。これって、「コーヒー」と言いたいのか?「コピー」と言いたいのか?

ある程度会話も上手になって、漢字語彙も増えて、文章も日本語で書くことにも慣れている学生が、この例のように、カタカナの表記を間違えると、なんだか残念な気持ちになりますよね。

これは、発音と表記が固まらないままに勉強を続けてしまった結果です。ほとんどの学習者は自分の発音を元に書きます。上記の例のように書く学習者は、発音も間違えている可能性が高いです。

これを取り戻すのはなかなか難しいかもしれませんが、今からでも遅くありません!今回取り上げる方法を試してください。今回取り上げる「カタカナ・ひらがなの表記を間違えずに覚えるためのトレーニング」をすれば、しっかりとした表記を身につけることができ、結果、JLPTの漢字の表記の問題や記述問題にも自信がもてるようになるはずです。

目次

視覚からの情報が重要

私が授業でよく言うフレーズ。それは、「よく見て!」です。学生もよくこのフレーズを使って私のモノマネをするほどです。なぜ「よく見て!」を口癖のように言うのか?それは、学生が教科書や板書などを見ていないことに由来します。

ほとんどの学生は、日本で勉強していれば(住んでいれば)、日本語での会話は自然とできるようになります。しかし、読むと書くは勉強しなければ絶対にできるようになりません

読むも書くも、どちらも圧倒的に視覚からの情報が必要になります。特に書く場合は、「お手本があって、それを見て、まねて、書く」というプロセスを経ます。

書き順は別にしても、文字を同じ形に書けないという場合の多くは、お手本を見ていないからです。

  • 先生が見せる書き順を見ていない。
  • 教科書のお手本の形を見ていない。
  • 自分が書いた文字を、お手本と見比べていない。

「見ていない」だらけです。とにかく書く練習は、「書くこと」と「見ること」です。

幼稚と思われても

みなさんは、ディクテーションをどのように行っているでしょうか?紙を配って、先生が言うことを、学生が書きとる。この流れが普通でしょう。また、ディクテーション用紙を作成し、使っているクラスもあるでしょう。

工夫する部分は、ここにあります。用紙を変えましょう。幼稚と思われてもいいので、ディクテーションでも漢字でも、マス目を使った用紙にしましょう。

ディクテーションでマス目用紙を使う理由

その理由を想像してください。ヒントは、ここまでの内容の中にあります。…はい、その通りです!文字数を意識することが、マス目を使う最大の理由です。意識するとは、具体的に「見ること」です。

コーヒーは4文字。コピーは3文字。正しい文字表記の情報を目で覚えるということです。私の感覚だと、このような意識を持った学生は意外と少ないです。特に勉強を始めた頃の学生は、教師の発音を聞いてなんとなく覚えて、教科書をなんとなく見て覚えているので、曖昧な発音の記憶を頼りになんとなく書いています。

「じゃあ、コーピーやコービーの間違いはいつ指摘すの?清音と濁音と半濁音の違いを後回しにしているのか?」と思う方もいると思います。

答えは「YES」です。私は、清音と濁音と半濁音の違いを直すことのほうが、文字数を意識させるより簡単だと考えるからです。繰り返しになりますが、話すと聞くは自然にできるようになります。しかし、読むと書くは勉強しないと簡単には直りません。

私は、「コーヒー」を「コヒ」と書く間違いのほうが、「コーヒー」を「コービー」と書くよりも、重大な間違いと捉えます。この「コーヒー」の場合を考えてみても、発音を「コヒ」と2音で発音している学生はほとんどいないと思います。つまり、発音と文字がリンクしていないというわけです。

ディクテーショントレーニングの大きな流れ

ディクテーションを下線しかひっぱっていない用紙にいきなり書かせるのは、厳しいと思います。語彙レベルであればまだいいですが、文章となると厳しいと言わざるを得ません。

ディクテーションのやり方

準備)「漢字練習 マス Excel」などで検索すると、Excelのフリー素材が見つかるので、それを少し加工すると使いやすいです。

STEP
マス目の数に合わせた語彙を教師が発音→学生が書き取り(単語レベルでやるのがポイント!)

例)◻◻→「タイ」、◻◻◻→「インド」、◻◻◻◻→「あさって」

STEP
教師が短文を言って、マス目+下線の用紙に学生が書く。

→マス目にあわせて書く必要がある語彙を指示をする。(画像3は記入例)

STEP
下線のみが書いてあるものに、教師が短文を言って、学生が書く。

→いわゆる普通のディクテーション。全文を書く。

以上のように難易度をあげていくことで、表記が固まっていきます。

教師は予め、マス目にあった文字数の語彙、文章を準備しておく必要がありますが、学生は、マス目があることで書いてみたが「マス目が余る、マス目が足りない」と気づき、間違えて覚えていることを気にするようになります。

学校やクラスのルールに合わせて、効果的なディクテーションを実践する方法

「やり方はわかったけど、学校やクラスのルールがあるからできないよ。」ということもあるでしょう。

マス目の用紙を使えない場合(学校・クラス指定の用紙がある場合など)は、普段のディクテーションで、上記の1)〜3)の語彙を言うところを少し変えましょう。

簡易バージョン

やり方は簡単です。

  • 例1:「コーヒー」「カタカナ4つです。カタカナ4つで書きましょう」
  • 例2:「おじいさん」「ひらがな5つです。」

ヒントを出すことが幼稚に思えたり、学生の勉強にならないと感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、将来的に見て、やったほうが効果が大きいと思います。少なくとも学生の(書いたり読み取ったりする)意識が変わります。

実施にあたって:効果を信じて突き進むべし!

このように書いてきましたが、このやり方を実施するとき、もしかしたらチームティーチングの中で他の先生が賛同しないこともあると思います。自分が担任をやっていて、他の先生にこのやり方でやってくださいと言える立場の可能性もあります。

たとえ自分一人であっても、実施してみてください。必ず学生の意識が変わりますし、他の先生に波及します。なぜかというと、学生のクチコミがある(学生の口に戸は立てられない)からです。少し想像してみてください。

ディクテーション(マス目用紙を不使用でもいいです)で、みなさん(自分一人)が、表記をしっかり覚えてほしいひらがなやカタカナの語彙に対して、毎回、その文字数をヒントとして出したとします。他の先生はヒントを出さないとします。

この状態が続くと、「◯◯先生はヒント(文字数)を言ってくれた。どうして今日のXX先生は言ってくれないの?」と学生は良くも悪くも口にするようになります。そうなると、ヒントぐらい出してもいいかな?と思う先生が増えるかもしれません。一方で、ヒントを言わないXX先生が、「◯◯先生、どうしてヒントを出すんですか?」あなたに訊いてくるかもしれません。(訊いてきたら、この記事を見せてください。)

しかし、結局、学生ができるようになれば(意識が変わってくれば)、他の先生もやるようになりますし、文句も言われなくなります。

担任などをやっている先生も、自信を持って、結果を信じて、実施してみてください。他の先生の協力があれば1か月ぐらいで結果が出ます。結果として、見る習慣・見る能力が養われて、ディクテーションや漢字の書き方が変わってきます。字がきれいになったり、漢字の形が整ってきたりします。

学生の成長のために、勇気をもって実践してみてください!

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