こんにちは、鈴木コウジです。第2回は、第1回で紹介したマス目用紙の応用編をご紹介します。
マス目用紙を使うことは、ディクテーション(ひらがな、カタカナの語彙の表記)や、漢字の読み方表記に限ったものではなく、発音と表記が違ってしまうものに対して、それを直すのに応用がきくでしょう。
ひと工夫で効果バツグン!?「て形」の導入、練習方法
第1回に、書く練習とは「書く力」と「見る力」を養うことだと書きました。これは、つまり、見る習慣と見る能力を養うことが重要ということです。
みなさん、中学生で英語の不規則動詞の活用や、人称代名詞のセットなどを何度も口に出しながら覚えたと思います。正確にスペルまで意識しながら、口に出していたでしょうか?
例えば、ブリング、ブロート、ブロート。ブリングはbringですが、ブロートの綴りは正確に覚えていますか?書けますか?
bringの過去形、過去分詞、正しいのはどれ?
1)braught 2)brought 3)breught
2)が正解です。
theyの所有格は?
1)thair 2)thier 3)their
3)が正解です。
私たちの母語、日本語でも同様です。例えば、「しょうゆ」「ばら」「ゆううつ」って漢字で書けますか?おそらく、醤油も薔薇も憂鬱も、読めても書けない人が多いのではないでしょうか。
このように口に出せても、綴り(=書く)と言われると自信がなくなってしまうかもしれません。正しいものを覚えるためには、口に出しながら、なおかつ、正しい綴りを見ながら、書く練習しなければならないでしょう。
ゲーム感覚!「て形」習得に必須な見る習慣と見る能力を養う導入
私は、初級クラスで漢字の第1回授業に、幼稚園児がやるような、間違い探し(右と左のイラストの違いを探すもの)を必ずやります。漢字授業の3、4回目ぐらいまでは、始めに3〜5分ぐらい時間をとって、この間違い探しを実施します。(漢字圏の学生には遊びを楽しんでいてもらいます。)
※間違い探しは、インターネット上に子供向けのフリー素材がたくさんあります。
この遊びをやった後に、学生にこの練習の意味を説明します。つまり、見る習慣・見る能力を養うことが漢字や文字を正しく覚えるのに大切。やっていることは、この間違い探しゲームと同じ、ということです。
間違い探しをやって、見比べるということを繰り返します。これによって、漢字の教科書と自分の書いた文字を見比べる習慣がつきます。この習慣がつくことで、漢字の形なども気にするようになり、丁寧に書くようになっていきます。
見る習慣、見る能力を養う「て形」の変換練習方法
それでは、本題です。ここでは、従来の口頭で行う動詞の変換練習を、マス目を使った練習に変えることをご紹介します。
- 従来の練習
-
(従来)すみませんが、この漢字の読み方を(教えます)→( )ください。
- 変化例(マス目あり)
-
(難易度1)すみませんが、この漢字の読み方を(おしえます)→(◻◻◻)てください。
(難易度2)すみませんが、この漢字の読み方を(教えます)→(教◻)てください。
(難易度3)すみませんが、この漢字の読み方を(教えます)→(教◻◻)ください。 -
↓
↓(ここからマス目なし) -
(難易度4)すみませんが、この漢字の読み方を(教えます)→( )てください。
(難易度5)すみませんが、この漢字の読み方を(教えます)→( )ください。
親切すぎる、易しすぎると思いますが、このように難易度をあげていけばいいと思います。できる学生が多いなら、教師が難易度を調整をすれば問題ありません。このような練習を経ていれば、テスト中にの中で、(上記の)難易度5の形の形で出題があっても、学生は「できる!わかる!」と自信をもって答えられるでしょう。
補足:マス目の準備が面倒なら○○で代用できる!
Wordなどでマス目(図形の挿入や、空欄を四角で囲うやり方)などが面倒な場合は、下線でもいいと思います。
(例)すみませんが、この漢字の読み方を(おしえます)→( )てください。
(例)すみませんが、この漢字の読み方を(教えます)→(教 )ください。
下線を使う場合は、下線と下線の間にスペース(空欄)を入れるのがミソです。文字数をしっかりと意識させるためです。
「て形」の練習:さらに定着度を高めるためにはここに気を付けるべし!
小さな練習だからと、侮るなかれ!定着しなかったのにはワケがある!押さえるポイントは、たったの2つ!
学生の間違いを絞って学習効果を高めるる
ほとんどの授業で、動詞の変換練習は、表のような用紙(列に動詞、行にて形、ない形などを書く)を使って練習していると思います。もちろん、このような用紙を使っても良いと思います。しかし、書き方について学生に何も指示がないままの場合がほとんど。漢字圏の学生は漢字を使いますし、非漢字圏の学生ならひらがなで書く学生もいます。頑張って漢字を使って書いても、漢字を間違える学生もいます。
このような書き方の違いによって、間違いの種類が違ってきます。
〈漢字圏の学生〉= 送り仮名を間違え → バツ
〈非漢字圏の学生〉= 変換は合っているが、漢字を間違え → バツ
〈非漢字圏の学生〉= 漢字は合っているが、変換を間違え → バツ
〈非漢字圏の学生〉= ひらがなは合っているが、変換を間違え → バツ
〈非漢字圏の学生〉= ひらがなも変換も間違え → バツ
これ以外にも色々な間違いがあるでしょう。
こうなってしまうと、教師は、どの学生がどの変換をどう間違えて覚えているのかわからなくなってしまいます。学生も返却されたものの間違いをしっかり見直す習慣はほとんどないと言えるでしょう。「あ〜バツが3つあった。」「漢字間違えた〜」というような感想しかないでしょう。
こうならないためにも、教師が学生に絶対に覚えてほしい点(ここでは動詞の変換を正確に覚えること)に絞ったもので練習する必要があります。そのため、まずは親切すぎる、易しすぎるもので練習する必要があるというわけです。これによって、間違いは、て形の変換の部分だけに絞られます。学生も返却されたものを見れば、自分の間違いが一目瞭然です。
以下のようなやり方で、練習レベルをあげていくと学習効果が上がっていくのが実感できると思います。
1)ひらがなで練習する。教師がます形を言って、学生にます形・て形を書かせる。
(マス目だけの用紙を配る。)
2)漢字の部分は書いておき、送り仮名の部分(ここでは、て形)を書かせる。
(漢字の部分を書いた用紙を配る。漢字には、ふりがなを振ってもよい。)
3)漢字を含めて、て形全てを書かせる。
(学生のレベルに応じて、動詞が書かれたものを配るか、全部書かせるか、決める。)
五感をフル活用して記憶の定着を強化
変換練習はどうしても口頭練習を重視しがちです。「書きて」「持ちて」というような間違った変換を訂正するために、さらに口頭練習をするというのは、効果が薄いと考えます。
その理由は、学生の記憶が音という非常に短い記憶に頼っていて、音という一つの記憶方法しか使っていないからです。記憶(知識)を定着させていくには、多くの感覚を使った方が良いということは聞いたことがあると思います。聞いて覚えるというのは、耳の感覚だけです。
学生が耳からだけの記憶で間違えていたのだから、また耳だけを使うわけにはいきません。目で見て、読んで、書いて、と練習すれば目、口、耳、手と四つの感覚を使います。(今回の例には、音読は入れませんでしたが、音読すれば、口と耳をいっぺんに使えます。)これによって、今まで以上に記憶の定着が進みます。
まとめ
今回は「て形」の「口頭での変換練習」に変わる練習として、『書く変換練習』をご紹介しました。授業中に口頭での変換練習をたくさんして、音として記憶している学生の多くが、
始めのうちは、自分の発音を頼りに「書きて」「持ちて」などを書いてしまうでしょう。教師がそれを直して返却することを続けることで、学生が目で見て、間違いに気がつくようになり、間違いは自然と直っていきます。
変換の間違いは、教師がすぐ口頭で注意してしまうものです。もちろんそれも必要ですが、今回のように、文字を使って、印象付けることも、間違いを直す方法の一つとして、ぜひ使ってみてください。
今回のように、文字を使って、印象付けることも、間違いを直す方法の一つとして、ぜひ使ってみてください。
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