物の授受表現を上手に教えよう!①―「あげる」と「もらう」の教え方

日本語教師のみなさん、物の授受表現ってどうやって教えていますか?「あげる」、「もらう」って、日本人ならすんなり分かるけど、外国人学習者にとっては使いこなすのが難しく、日本語教師にとっても教えづらい文型ですよね。

中級以降の学習者でもよく間違うイメージのある授受表現。N3以降の日本語能力試験対策教材にもたびたび登場する重要表現です。文法教材に出題されているのはもちろん、聴解教材や読解教材を解くキーポイントにもなっていることもあります。

そんな授受表現ですが、どうせなら初級の段階で効果的に、確実に導入しておきたいですよね?

そこで、今学期初級授業を担当し、先日日本語教師生活何度目かの授受表現の授業を終えたばかりの筆者が、試したてほやほやの情報をお教えします。

今回はまず、物の授受表現の中から、「あげる」と「もらう」の教え方を、そのポイントとともに見ていきましょう。効果的な練習方法もご紹介しちゃいますよ。

目次

「あげる」と「もらう」の教え方3つのポイント

「あげる」と「もらう」の教え方には3つのポイントがあります。

  • 助詞とセットで教えること
  • 「誰が」「誰に」あげる(またはもらう)のか矢印に気をつけること
  • 使い方の制約に気をつけること

この3つのポイントに気をつけるだけで、授業のクオリティーがアップ!分かりやすさがググっと高まりますよ!それではさっそく、3つのポイントを1つずつひもといていきましょう。

助詞もセットで教えよう

「あげる」と「もらう」の導入方法ですが、これはもう、「実際に学習者と教師の間で実際に物のやり取りを行う」!これに尽きます。定着しにくい文型だけに、実際のシチュエーションを学習者に体験してもらい、身をもって理解してもらいましょう。

筆者の場合は、きれいな包装紙で適当に紙を包み、リボンをかけた「偽プレゼント」を使用します。それを学習者に差し出しながら、「先生はAさんにプレゼントをあげます」と言って「あげる」を導入。

教え方1つ目のポイントは、ここで「あげる」という動詞だけではなく、「先生」「Aさん」と、助詞「は」「に」にも注目させること。「もらう」の場合は、「Aさん先生プレゼントをもらいます」。「先生」のかわりに「先生から」という言い方も可能です。

  • 「あげる」:「~あげます」
  • 「もらう」:「~から)もらいます」

導入の段階から助詞とセットで導入しておきましょう。

誰が?誰に?矢印に気をつけよう

中級以降になっても、学習者が「あげる」と「もらう」を逆に使ってしまう「迷える子羊」状態になってしまう理由、それは「誰が?」「誰に?」あげる(またはもらう)のかという「矢印」が分かりにくいからでしょう。

上の図を例に文を作ってみます。

  • 山田さんを主語にした場合:「山田さん佐藤さんプレゼントをあげます
  • 佐藤さんを主語にした場合:「佐藤さん山田さんから)プレゼントをもらいます

このように図を書き、「矢印」を使って物の移動を表すと、「誰が?」「誰に?」あげる(またはもらう)のかが一目瞭然ですね。

人の名前を変えたり、物をプレゼントから花やCDなど、いろいろな物に変えたりして、学習者にどんどん言わせる練習をしていきましょう。

「鈴木さんは私にプレゼントをあげました」は正しい?

ところで、「あげる」と「もらう」はいつでも無制限に使えるわけではありません。使い方には制約があることを、例文を作る際には覚えておきましょう。

次の例文を見てください。

例)鈴木さんは私にチョコレートをあげました。

実際に学習者が言いがちな例文ですが、何か変ですね。何がおかしいのでしょう?正しくは「鈴木さんは私にプレゼントをくれました。」ですね。「あげました」ではなく「くれました」を使うのが正しいです。

  • 「あげる」は「私」を受け手にして使うことはできない。
    (=「○○さんは私に~をあげる」とは言えない。)
  • 「私」を受け手にする場合は、「あげる」ではなく「くれる」を使う。

「あげる」に関しては、以上2点を押さえておきましょう。では、次の例文はどうでしょうか。

例)鈴木さんは私に(から)花束をもらいました。

これも学習者がおかしがちな誤りです。こういうときは、私を主語にして「私は鈴木さんに花束をあげました。」というのが正解ですね。

  • 「○○さんは私に~をもらう」という言い方は不可能。
  • そういう場合は、私を主語にして「私は○○さんに~をあげる」と言う。

「もらう」の場合は、上の2点を押さえておきましょう。

「あげる」と「もらう」どんな練習方法が効果的?

「あげる」と「もらう」の教え方3つのポイントは、お分かりいただけたでしょうか。それでは、どうやって練習したら、より効果的に、確実に、学習者が「あげる」、「もらう」を使えるようになるのでしょうか。

答えは簡単、上で挙げた3つのポイントを押さえた練習を考えていけばいいのです。ここからは、「あげる」と「もらう」を使った練習例をご紹介していきます。

実物を使って覚えよう

導入のときも、実際に学習者にプレゼントを渡しながら導入すると言いました。「あげる」と「もらう」は初級でも1位2位を争う山場だけに、学習者に実際のシチュエーションを体験してもらうのがいちばん効果的です。

プレゼント、花、CD、お菓子などいろいろ準備して、「あげます・もらいますゲーム」をしてみましょう。

やり方は例えば、こんな感じです。

  1. AさんからBさんに花を渡しながら
    A:「私はBさんに花をあげます」
  2. Bさんは花を受け取りながら
    「私はAさんに花をもらいます」
  3. 続けて今度はBさんがCさんに花を渡しながら
    「私はCさんに花をあげます」
  4. Cさんは花を受け取りながら
    「私はBさんに花をもらいます」

これを学習者の数だけ繰り返します。

実際に教室内に「矢印」を作り出して、「あげる」、「もらう」を体で体験しながら覚えようという練習です。「私Bさん」、「私Aさん」と助詞も省略せずに、きちんと言えるようにしましょう。

学習者全員まで言い終わったら、今度は最後の人から反対向きにAさんまで同じ練習を繰り返すと、「矢印」の方向も変えて練習することができますね。

毎日の授業の中で使っていこう

繰り返しになりますが、授受表現は初級の中でも特に使いこなすのが難しい文型です。その日の授業で終わらせるのではなく、学習後も実際に使うチャンスを積極的に作っていきましょう。

例えば、学習者に授業プリントを渡すときに毎回、「先生は○○さんにプリントをあげます」と言ってみるのはいかがでしょうか。その際、学習者は教師からプリントを受け取りながら、「私は先生にプリントをもらいます」。

日常のプリントを渡すという何気ない行為ですが、「あげる」と「もらう」を使う絶好のチャンスです。そのまま流してしまってはもったいない!普段から学習者の前で「あげる」、「もらう」をどんどん使って、定着させちゃいましょう。

ただし、くれぐれも「先生は私にプリントをあげます」にはならないように気をつけてくださいね。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

高木 伸子のアバター 高木 伸子 ことばのゼネラリスト

日本語教師11年目。日本語教師養成講座講師。幼少時、ベルリンに住んだことをきっかけに、国際社会の架け橋になることを夢見る。

学生時代はドイツ文学を専攻。フランス語、イタリア語なども学んだ語学オタク。ドラマをきっかけに韓国語にハマり、ソウルに語学留学。韓国語で韓国語を勉強した経験から、直接法に興味を持つ。

帰国後は国内の日本語学校で入門から応用クラスまで幅広く担当。10か国以上の学生に教える。授業のモットーは「説明はシンプルに、例文は効果的に」。

韓国語講師、ドイツ語講師、翻訳家としての顔も持つ。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる