こんにちは!SenSee編集部のハルです!私は東京の日本語学校で非常勤講師をしながら、いろいろな会社と繋がって、フリーランス的に働いています。
皆様は「タスクベース教授法(Task-Based Language Teaching)」をご存知ですか?
私の勤務先では有志の勉強会があるのですが、今回のテーマが「タスクベース教授法」で、衝撃的でした!
今までのクラス授業とは全く違う教え方に、勉強会では「うーん」という唸り声がチラホラ聞こえるほど…。
タスクベース教授法ってなに?どんな授業?という方には、こちらの論文がおすすめです。分かりやすくて実践的!
小口悠紀子(2019) 「大学の初級クラスにおけるタスクベースの言語指導」『日本語教育174号』日本語教育学会
以下、タスクベース教授法について、私の感想と一考察です。ご一緒に見ていきましょう!
1.タスクベースの教え方とは?日本語クラス授業の大改革!
タスクベース教授法で私が驚いたのは、次の二点です。
従来の日本語学校の教え方と違っていて、日本語クラス授業の大改革かも?それでは詳しく見ていきましょう!
1-1.タスクベースの教え方:文型導入はあとで!
皆様は新しい文型を教える時、最初に文型を教えて、練習、活動という流れでしょうか。
タスクベース教授法では、文型を教えるのはあとで!形式に集中(Focus on Forms)しないで、まずは今ある学生の力で話してもらうんです。
例えば、「居酒屋で日本人があなたの隣に座りました、さあ、何を話しますか?話してみて!」とペアで話させます。
そして「どんなトピックで話した?どんな言葉を使った?」と学生に言わせます。上手に話せなかった学生は、どうやって会話すればいいか知りたくなってきます。
そこで講師はモデル会話を紹介して、学生自身が「このトピックで話せばいいのか!この言葉を使うのか!」と気づくわけです。文型導入はこのタイミングです。
この流れ、あっ!と思った方はすごいです。国際交流基金の教科書「まるごと中級1-Topic1」です。
私は「まるごと」って使いにくいな〜と思っていたのですが、実はタスクベース教授法だったんですね。知らずに文句言ってスミマセン(笑)。
1-2.タスクベースの教え方:Information Gapが会話力を伸ばす!
日本語学校、特に進学校では、会話練習は教科書のロールプレイをしておしまい、という学校が多いようです。でも実生活の会話は、書いてある通りに進まないので、ロールプレイで会話力はつきません。
そこでタスクベース教授法では、Information Gapがある状態で「タスク」を設定します。相手の考えていることが分からないので、実生活の会話に近い!
例えば、学生をペアにして、ロールカードを見えないように配布します。Aのカードは「カラオケが大好き。カラオケに行きたいから、相手を誘って日時を決める」、Bは「カラオケに行きたくない。嫌な思い出がある」です。
学生は今まで学習した文型を総動員して、なんとしてもタスクを達成しようと会話します。「まるごと中級1-Topic 3」で使役形・使役受身形を勉強した後ですが、無理に使わなくてもタスクが達成できればオッケーです。
教師は学生の会話のいい点を褒めます。「明日、時間ありますか」と切り出すのは自然な会話でいいね、「体調が悪い」は万能だね、「無料チケットがある」はいいアイデアだね、「歌わなくてもいいから来て」はすごいね、とか。
2.タスクベースの教え方:日本語クラス授業、今後の課題
タスクベース教授法の勉強会で私が感じたのは、次のような疑問です。
例えば「レストランでお水をもらう」というタスクの時、非言語(ジェスチャー)の使用も可能なので、「お水、お水」と飲むジェスチャーだけでも、お水がもらえてタスク達成です。
さらに評価をどうするかも気になります。文型に注目しない授業なのに、文型中心のテストをガンガンするのも変だし…。今後の課題ですね。
3.タスクベースの教え方:日本語初級クラスで実践!
実は私、新しい物好きで、タスクベース教授法をしたくなり、アメリカ人ティーンズの初級クラスでしてみました。
タスクは「日本人学生ゲストに聞きたいことをインタビューしよう!」で、文型は「どんなN」です。
どんな音楽が好きですか、日本の学生はどんなアルバイトをしますか、どんなスラングをよく言いますか、など自由に会話してもらいました。
ティーンズ達は楽しかったようで、1人の女子学生がやってきて「私こういうInteractionが好きだから、先生、もっと授業で企画してよね」と上から目線で授業の指図をされました。ティーンズ最強…(笑)。
気になったのが、コミュ障の学生です。ずっと立ったままで動かないので、私が日本人ゲストのところまで連れて行きました。
タスクベース教授法は、タスク遂行に必要な社交性が要求されるので、学生によっては教師のケアが必要かも?と思いました。
4.まとめ
今回は、タスクベース教授法についてお話しました。語学の教授法って、次から次へと新しい考え方が出て、ついていくのが大変ですよね。
でも私が日本語教師を始めてから、ずっと変わらず理想としている教え方があります。それはアレクサンダー大王が若かりし頃の家庭教師、アリストテレスです。
彼は最高の知識をアレクサンダーに授け、同じ年頃の若者を集めてディスカッションをさせ、インプットとアウトプットを同時にしていました。私の理想の教え方です。
私はただのオバちゃんですが、アリストテレスをいつも心において、学生の人生にいい影響を与えたいと思っています。そしていつか私の学生が、アレクサンダー大王のように世界制覇しないかな〜と夢見ています!(笑)
それでは、また別の機会に。
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