【特集】作文指導のコレは外すな!(2)『やさしい作文』からの卒業

みなさん、こんにちは。鈴木コウジです。

作文指導のコレは外すな!の第2回です。

今回は、初級レベルでの作文授業でよく使われている『みんなの日本語やさしい作文』をとりあげます。

『やさしい作文』って便利ですよね?

パラグラフ・ライティングなので、誰でも簡単にテーマに沿った文章が書けるようになります。

しかし、これってマイナスの部分もあるって知っていましたか?

そこで、今回は『やさしい作文』を例にとりながら、作文の書き方のレベルアップ方法をご紹介します。

第2回のコレは外すな!は…

  • 『パラグラフ・ライティング』を外すな!
  • 『脱パラグラフ・ライティング』を外すな!

です。

目次

『みんなの日本語 やさしい作文』のメリット・デメリット

初級レベルで作文の授業といえば、おそらく多くの学校で、授業で『みんなの日本語 やさしい作文』(スリーエーネットワーク)が使われているでしょう。

使い方としては、みんなの日本語本冊がある程度進んだ時点で、作文を書くというものです。みんなの日本語本冊が第6課まで進んだら作文のユニット1へ、第10課まで進んだら作文のユニット2へと、そこまでに勉強した文法や語彙を使って作文を書くというワークブックです。

『みんなの日本語 やさしい作文』のメリット:パラグラフライティング

このワークブックの特徴は、なんといっても『パラグラフライティング』でしょう。

パラグラフライティングとは、

あるテーマに関して、複数の段落に分けて、論理を展開し説明していく書き方のことです。

具体的に『やさしい作文』では、

ユニットごとにテーマが決まっており、このテーマに関して、第1段落では主題や主張を書く。第2段落では具体例だったり、理由を書いたりします。そして最後の段落でまとめを書きます。モデル文というお手本も書いてあるので、どんな文を書けばいいのか、学生もすぐに理解ができ、作文を完成させることができます。

このワークブックでは、決められたテーマについて、習った文法や語彙で書くこと、そして、作文全体の構造を理解することが主となっています。

しかし、その弊害はとても大きいと感じています。

ワークブック使用の弊害

私が感じた弊害。それは…

学生はとりあえず形に沿って書いて、作文を提出することだけを目指し、多くのユニットで「うそ」を書いていました。
実際には存在しないのにあると書いてある自分の部屋の様子や、もらってもいないプレゼントの話や、夢の話などなど。

いろいろな国の学生に『やさしい作文』を使いましたが、多くの学生が提出するため、完成させるためだけの「うそ」を書きます。

他にも、モデル文をそのまま書き、語彙のみを入れ替えるという作文を書いたりします。

このような話には、みなさん思い当たるふしがあるのではないでしょうか?

私も日本語教師になりたてのころは、他のやり方がわからず、『やさしい作文』をそのままやるだけでした。うそを書いたり、語彙だけ変えたりする文を学生が書いても、ダメな学生だと思うだけでした。

しかし、この特集を書けるだけの経験やアイディアが豊富になったきっかけがあります。

作文指導を変えたきっかけ

作文指導に変化が生まれたのには、2つのきっかけあります。

ある学生の作文と、ある学校で作文指導を担当したことです。

ある学生の作文

私が日本語教師として働き始めて3か月で、4月入学の担任クラスを受け持ったときの話です。

4月入学のクラスで、教科書は『みんなの日本語初級1』を使っていました。数週間もすると、もちろん作文を扱う時期が来ます。当時の校長先生に作文授業のやり方を教わり、『やさしい作文』を使って授業を行っていました。

4〜5回目の作文授業が過ぎたころでしょうか、ある学生の作文に目がいきました。『やさしい作文』のプリントにびっしり日本語で書き込んだ作文でした。文法の変換や語彙の選択に間違いがとにかく多かった作文だったことを覚えています。

間違いはあっても、あるテーマに関して自分は書きたいことがたくさんあるんだ!という熱意が伝わってきました。モデル文をコピーしたような作文が多い中、書くことがたくさんある学生がいることに驚かされました。

もともと書くことが得意な学生だったのかもしれませんが、書きたいことがたくさんある学生をもっと書けるようにしたい、こういう学生を増やしていきたいと思い、何か作文授業を変えたほうがいいなあと考えるようになりました。

ある学校での作文指導を担当したこと

ある学校で働き始めて半年ほどで、週1回2コマ(90分)の作文授業の担当をしたときのことです。この学校の作文授業は、はじめの3回で『やさしい作文』を使います。しかし、それ以降はパラグラフライティングではあるものの、テーマ設定や書かせる内容の指定も独自のもので、学生が作文自体オリジナルのものを書かなければなりませんでした。

この学校の学生は、テーマに沿って自分が思うことを、自分の日本語知識を使って、書き上げていました。たくさん書く学生も少ししか書けない学生もいましたが、自分の言葉で書いている作文は、何にも代えがたいことだと思います。

以上のような学生や学校での経験が、自分の作文指導に変化をもたらしました。

脱ワークブック!超簡単なやり方紹介

初級レベルの作文授業や作文指導について、1つ目として、できればテンプレートには頼らないことを提案します。使うとしても数回に留めることをおすすめします。

作文授業を終わらせるだけの内容(提出モデル文のコピーや語彙を変えただけの文章、うそを書いた作文)から、学生の自分だけの作文を書かせるためにも、早めにテンプレートを卒業させましょう。

パラグラフライティングは便利です。しかし、モデル文を渡してしまうと学生はコピーをしてしまいます。

やり方

STEP
パラグラフだけ分けたプリントを配布。
STEP
『やさしい作文』のように、各パラグラフに書いてほしいことを説明。
STEP
各パラグラフでどんなことが書けそうか、クラスで話し合う。
STEP
ある程度まとまってきたら、書く時間をとる。

『やさしい作文』でやっていた学生個人の作業ではなく、クラスで情報を共有しながら、作文を書く雰囲気に持っていくことが重要です。

学生同士で情報共有することで、書く内容がぼんやりと見えてきて、自分が書くべきことがまとまってきます。

書かなきゃとか、作文って嫌だなというようなストレスも、情報共有することで、いつの間にか無くなってきているでしょう。

ここに、第1回でふれた文型や語彙の復習などをまぜれば、もう書き終わったも同然。

このようなやり方が、担当しているクラスでは、まだ難しいなあという場合は、『やさしい作文』の「モデル文」を配らない、読まないところから始めましょう。あとの部分は、『やさしい作文』を使ってください。まずモデル文のコピーをなくすことから始めましょう。

作文=書くだけか?作文返却でやりたい一工夫活動

作文は、書いて提出したら、終わりではありません。

教師は、作文を読んで、添削したり感想を書いたりして、返却します。

作文の授業で返却したら、終わりではなく、返却した時に、やっておくと良いことがいくつかあります。それをご紹介します。

おすすめ1:読み合わせ

これは、よく書けている学生の作文をコピーして配り、クラス全員で読むことです。全員で音読するのがおすすめですが、選ばれた学生が恥ずかしがったりすることもあります。クラスの雰囲気、選ばれた学生のキャラクターによって、選ばれた学生による音読や全員で黙読など、やり方を変えてみてください。

よく書けている作文を読んでみることは、とても勉強になります。他の学生がどんなことを書いているのか?どんなことを考えているのか?を知ることで、自分の作文を意識することになり、次回からの作文に影響が出てきます。

みなさん、マイナスの影響を考えるかもしれませんが、

私の経験では、他の学生が萎縮して書けなくなったりことはありませんでした。

おすすめ2:発表

もう一つおすすめなのが、発表することです。返却した時に、適当な学生2、3名を選んで作文を読んでもらいます。そして、聞いた学生は質問をします。

質疑応答をすることで、読んだ学生は、書き足りなかった部分を意識するようになります聞いた学生たちは、作文の書き方や聞きながら理解することを学ぶことができます。

学生からの質問が全然出ないときもあるでしょう。そんなときは、教師が質問しましょう。しかし、これは読んだ学生への質問ではなく、聞いている学生への質問です。

読んだ学生がどんなことを書いていたのかを訊くことが大切です。ちゃんと作文の内容を聞けているかをチェックして、読んだ学生への質問を促しましょう。

こうした上で、教師が読んだ学生へ質問をすれば、聞いている学生も質問のしかたがわかってくると思います。

おすすめ3:コピーをとっておく

これは、返却の際に教師がすることのおすすめですが、学生の全作文のコピーをしておくことです。毎回の作文の記録としてとっておくことをおすすめします。

いわゆる学生のポートフォリオになります。その後の評価に役に立ちますし、なによりも学生一人一人の作文能力の成長を確認することができます。

やり方は簡単。教師が添削したら、返却するときに1部ずつコピーをとっておきます。そして、作文の授業ごとにコピーをとっておき、学生ごとに保存しておきます。

コピーを保存しておくことは、教師の負担になります。デジタルの時代ですから、全て写真にとって保存してもいいですが、学期中はなるべく紙で保存しておきましょう。これも経験上のことですが、紙のほうが探しやすいです。学校にロッカーなどがあれば入れっぱなしでもいいと思います。

まとめ

ここまでいかがだったでしょうか?

どうしても『やさしい作文』のやり方でないと学生が書けない。しかし、モデル文のコピーのような作文ばかりで、学生自身のことばが出てこない。

そんな作文の授業をできるだけ早く卒業できるように、今回は『やさしい作文』とそれを卒業する方法を紹介しました。

今回のまとめです!

『パラグラフ・ライティング』を外すな!

→『やさしい作文』は便利。
→便利だけど、同じような作文が出来上がってしまう弊害もある。

『脱パラグラフ・ライティング』を外すな!

→早いうちに『やさしい作文』を卒業するようなやり方に変える必要がある。
→モデル文を提示しない。
→書くべき内容は、みんなで話し合って、情報共有する。
→情報共有することは、作文の書き方を理解したり、ストレスを取り除くことができる。

次回は、

いつまでたっても書き始められない学生を、どうやって書き始められるようにするか?

を紹介します。

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