みなさん、こんにちは。鈴木コウジです。
作文指導の特集も今回で5回目です。第4回では説明しなかった『日本留学試験の記述問題』を取り上げます。
- 日本留学試験の記述問題をどう攻略するか?
- どう指導したら学生が高得点が取れるようになるか?
みなさん、気になりますし、悩むところですよね?
実は、ある一定の書き方をすれば、25〜30点を取ることは難しいことではありません。
日本留学試験の記述問題の答案が書けるようになれば、専門学校や大学の入試の作文は、どんな問題でもすらすらと答えられるようになります。
今回は、そんな記述問題の答え方、書き方をご紹介します。
第5回は、
- 『記述問題のルール』を外すな!
- 『問題パターンにあった攻略法』を外すな!
です。
上級レベルの作文には、「論理的な展開」が不可欠!
第4回で少し触れてありますが、記述問題を書くためには、高度な文法が必要になってきます。
そして、上級レベルの作文で求められるのは、作文全体の構成と言えるでしょう。具体的には、論理的に文章が展開されているということです。これは、成人として読むに足る文章を書けるか?ということだと思います。
このような文章は、日本語ネイティブであっても訓練をしないと簡単には書けるようになりません。第1回に「作文の勉強ができるのは学生の特権」と書きましたが、集中して練習できるのは、学校の授業だけだと思います。
日本留学試験の記述問題に答える練習をしながら、論理的に文章を書く練習をしていきましょう。
日本留学試験(EJU)の記述問題とは?形式を解説!
「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」ということで、問題形式について少し説明します。
配点について
日本留学試験(以下、EJU)の「日本語」の試験は、
記述問題 | 50点 | 30分 |
読解 | 200点 | 40分 |
聴解・聴読解 | 200点 | 55分 |
の4つの科目から成ります。
合計450点中、自分の取った得点を受験する大学へ提出しますが、大学によって得点の扱いが異なります。得点をそのまま使う大学、記述以外の得点を使う大学、記述以外の400点を独自の得点へ換算して使う大学など様々です。
EJUを利用する大学受験の場合、記述以外の部分(400点)で最低でも270点以上ないと合格の可能性は低いということが、暗黙の了解となっています。
記述問題の得点について
記述以外の部分(400点)で最低でも270点以上が必要なのはわかったけど、、記述問題の部分は?と思いますよね。残念ながら、記述の得点がどのような扱いをされているか、はっきりとしていません。
大学の合格基準の得点として扱われているのか?記述以外の得点が同点の学生がいた場合に記述問題の得点を参考にするのか?全く参考にしないのか?など考えられますが、私も明確な話を聞いたことがありません。
しかし、良い得点をとっておくに越したことはありません。
30分という短い制限時間で、論理的な文章を書き上げる方法を紹介していきましょう。
EJUの記述:どんな問題が出るの?
記述問題ではどんな問題が出るのかを知るためには、
- 『日本留学試験対策記述問題テーマ100[改訂版](基礎編)』(凡人社)
- 『日本留学試験対策記述問題テーマ100(完成編)』(凡人社)
の2冊をおすすめします。
記述問題対策の授業にたいへん役に立つ教科書です。
中でも、
「書き方」を身につける!
こう書けば50点!学生作文例&添削
というセクションが授業実施の参考になります。
この部分を参考に、授業を実施したものをまとめたものがこの記事といってよいでしょう。
そのぐらいよくまとまっていますので、記述問題対策をする先生は、一読をおすすめします。
問題のパターンは3つ
- 二つの意見…〈A〉と〈B〉どちらの意見に賛成か?
- 一つの意見…一つの意見に、その理由・原因を考えて、自分の意見・解決策を述べる
- 将来の予測…現代社会のトピックについて原因・理由を述べた上で、例えば50年後の未来を予測する問題
書く量は?
3つのパターンとも、400〜600字を書くことが求められます。EJUの問題集の記述問題では、600字の横書き原稿用紙のページが印刷されています。
EJU記述問題の攻略法
3つの問題パターンについて、攻略法を詳しく見ていきます。
ちょっとその前に、3つの問題パターンに共通することがありますので、それを先に書いておきます。
3つの問題に共通すること
それは、採点についてです。50点満点で採点基準が決まっています。
JASSOホームページ
- 日本留学試験(日本語「記述」問題について)https://www.jasso.go.jp/ryugaku/study_j/eju/about/score/writing.html
上記のページを見ると、点数は5点きざみであることがわかります。つまり37点とか18点という点が無いということです。
書いている内容が、(適度な文字数で)問題に即していれば5点が入るということです。
3つの問題パターンを把握し、書かなければならないことを抑えていれば、5点10点と点を重ねることが可能です。
攻略のポイントはずばり、「パラグラフ・ライティング」
攻略するための方法は、ずばり!パラグラフ・ライティング!
記述問題は、パラグラフ・ライティングで練習すれば、簡単に書けるようになりますし、得点もしやすくなります。
第2回で、パラグラフ・ライティングは、「あるテーマに関して、複数の段落に分けて、論理を展開し説明していく書き方のこと」と書きました。
3つの問題のパターンに対して、パラグラフ・ライティングでたくさん練習をすれば攻略できます。
練習に用意するもの
練習には、3つの問題パターンに合わせた解答用紙を使います。はじめは原稿用紙は使用せずに、練習用の解答用紙を使用しましょう。(EJUの本番が近づいてきたら、原稿用紙の使い方とともに練習すればOKです。)
以下が解答用紙です。
1)二つの意見
2)一つの意見
3)将来の予測(画像)
練習での採点について
JASSOの採点基準は、解答の全体を通しての基準となっています。
しかし、以下の攻略法で、私は各パートに分けて採点をしています。これは、JASSOの採点基準とは異なります。私がつけた得点は、記述問題50点満点における得点の比重と思ってください。
パラグラフ・ライティングで書けば、採点基準に書いてある「課題に沿って」という部分を確実にクリアできます。そして、問題パターンに対して、各パートで外さないように書けば、実際の試験でも加点されていくはずと考えています。
それでは、具体的に攻略法を紹介します。(それぞれの画像も参考にしてください。)
「二つの意見」攻略法
二つの意見とは、〈A〉と〈B〉どちらの意見に賛成か?という問題形式です。
【問題例】
〈A〉お金を借りるなら友だちに借りるという意見と、〈B〉友だちに借りるのは良くないという意見があります。あなたはどう思いますか。あなたの意見を書きなさい。
1)自分の意見(40字ぐらい)…5点
[文章例]
私は、〈A〉(または〈B〉)の意見に賛成です。
→これが書けていないと採点されない。
2)その理由(60~100字ぐらい)…10点
[文章例]
なぜなら、〜〜〜〜だからです。/〜〜〜〜なので、私は〈A〉(または〈B〉)の意見に賛成です。
→最低限、この形式で書けていること。
3)その説明・例(200~260字ぐらい)…15点
[文章例]
私の国では〜〜〜〜/以前、私は〜〜〜〜
→具体的な例を挙げて、自分の意見を補強する内容が書けていること。
4)もう一つの意見について書く(=否定する)(80字ぐらい)…15点
[文章例]
私の考え〈A〉に対して、〈B〉という意見もあります。しかし〈B〉は〜〜という点が問題です。
→自分とは違う考えにも触れている。違っている点を指摘して考察している。これが具体的に書かれていることが重要。このパートを書けない学生がとても多い。
5)結論(60字ぐらい)…5点
[文章例]
以上のような理由から、私は、〈A〉(または〈B〉)の意見に賛成です。
→本文をまとめながら、再度、自分の意見を書く。
「一つの意見」攻略法
一つの意見とは、一つの意見に、その理由・原因を考えて、自分の意見・解決策を述べる問題形式です。
【問題例】N高等学校というインターネットで100%学べる高校ができました。このように通学しなくてもよい高校について、あなたはどう考えますか。
1)課題についての事実関係
2)その原因・理由(1+2→100字ぐらい)…10点
[文章例]
この高校の話は知りませんでした。
→自分が知っている/知らないなど、問題との事実関係に触れる。また、知っているなら、何によって知ったのかなどが書いてあるのが良い。
3)課題の意見に対する自分の意見(80~120字ぐらい)…10点
[文章例]
この高校は良くないと思います。
→自分の意見を述べる。賛成・反対や、良いと思う・悪いと思うなど。はっきりしない意見は書かないこと。
4)その原因・説明(160~260字ぐらい)…15点
[文章例]
なぜなら、友達が作れないからです。
→自分の意見を強化する具体例などを書く。「ので・から」「なぜなら」など原因理由や、「まず」「次に」など順序立てて説明する言い方なども使うとよい。
5)自分が賛成のとき→(=反対意見を否定する)(80字ぐらい)…15点
[文章例]
通学時間がなくなるから時間的にも経済的にも良いという面があります。しかし……云々。
→相手の立場や意見を考慮していることを書く。そこにさらに、自分の意見を加えて、文章をまとめていく。
「将来の予測」攻略法
将来の予測とは、現代社会のトピックについて原因・理由を述べた上で、例えば50年後の未来を予測する問題形式です。
【問題例】50年後の自動車を使う生活はどのように変わっていると思いますか。
1)課題についての事実関係(40~60字ぐらい)
[文章例]
最近は、電気自動車がを買う人が増えてきています。
→テーマに関することで自分が知っていること述べる。
2)その原因(60~100字ぐらい)
[文章例]
電気自動車には補助金も出ます。石油が減ってきているというニュースを聞きました。
→自分が書いたことの原因や理由になることを書く。
3)あなたの予測(80~120字ぐらい)
[文章例]
ガソリンの車はなくなって、電気自動車だけになると思います。
→正しい答えは無い問題なので、自分の考えを簡潔にまとめて書く。
4)その予測の理由
[文章例]
石油は枯渇していくと思います。
→自分の予想の理由になることを述べる。
5)その予測の説明(4+5→160~260字ぐらい)
[文章例]
石油が出る場所が限られています。
→4)に合わせて、具体例などを盛り込む。
6) 結論(60字ぐらい)
[文章例]
以上のような理由から、私はガソリンの車はなくなって、電気自動車だけになると思います。
→最後にもう一度、自分の意見をまとめて書く。
まとめ
ここまでいかがだったでしょうか?
今回のまとめは、以下の通りです。
『記述問題のルール』
→問題パターンは3つ。
→5点刻みの50点満点。
→書かなければいけないこと(訊かれること)は決まっている。
『問題パターンにあった攻略法』
→攻略法は、パラグラフ・ライティング。
→問題パターンごとの質問内容に沿って、書くべきことを書けば、得点できる。
やはり、記述問題で高得点をとるには、N2合格以上のレベルの文型や語彙知識があることはもちろんのこと、それに加えて、攻略法を練習して、論理的な文章の書き方を学ぶことが必要になってきます。そして、攻略法を何度も練習するしかありません。
N2合格以上のレベルの学生なら、何度か練習をすれば、すぐに問題に取りかかれるようになると思います。
補足
N2合格レベルに満たない学生に、記述問題対策の授業をする場合。EJUの記述問題となると、問題自体も難しくなってきており、N3レベルぐらいの学生は、すぐに書き始められないと思います。
私は、記述対策の授業は2コマ続きだったので、まず1コマを問題について話し合う時間に使っていました。
問題パターンがどのパターンなのか、書かなければいけないことは何かということを口頭で質問して、学生にどんな考えがあるのか、とにかく出させて、自分以外の意見を聞いて、その後、解答を書かせました。
みんなで話し合いをすることで、考えがまとまり、書き始めるきっかけを作ることができ、作文を書かなければいけないというハードルを低くすることができるのでオススメです。
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