日本語教育って何ぞや!?パート4  ~日本語教師はボランティア?~

こんにちは!SenSee編集部のいのっちです!

前回は、日本語教育って何ぞや!?パート3として日本語を勉強している外国人の方々がどこで日本語を勉強しているかお話しました。本日は日本語教育って何ぞや!?パート4です。日本語教育を語る上で欠かせないのが①学習者と②日本語教師です。

①学習者(日本語を勉強している人々)は前回までで色々お話しました。気になる方はぜひ「日本語教育って何ぞや!?」のパート1~パート3までご覧ください!

本日は②日本語教師です。みなさんの周りに日本語教師の方はいますか。今、日本語教師を目指している方、ちょっと興味がある方、実際に日本語教師の方とお話したことありますか。

私が日本語教師の勉強をしていた頃、実際に働いている日本語教師の方とお話する機会がなかなかありませんでした。学校で習っていた先生以外は。

地方で働いている今、やっぱりなかなか日本語教師の方に会えません。そこで、疑問に思いました。日本語教師ってやっぱり東京以外はいないのか!?(偏見です)

日本語教師は、全国各地のどこにいるの?地域によって常勤講師とボランティアの多さは違うの?この辺をパート3に続き、なかなか目にすることのない数字から見ていきたいと思います。

目次

日本語教師の世界を数字で見てみよう

いきなりですが、これは何の数字でしょう?

平成2年度 8,329人 令和元年度 46,411人

これは日本国内の日本語教師の数です。パート3で日本語教育機関も日本語学習者も平成2年度からめちゃくちゃ増えていますよとお話をしました。文化庁の調査を見ると、日本語教師も5倍以上増えています

ちなみに法務省告示機関(日本語学校)で教えている方が12,933人(27.9%)で一番です。
出典:文化庁「令和元年度国内の日本語教育の概要」

そうです。この数字を見ると全国にたくさんいるはず・・・の日本語教師の方々。みなさん出会ったことはありますか。日本語教師はどこにたくさん潜んでいる!?んでしょうか。

潜んでいるとは失礼しました。地方にいるとなかなか出会えません。日本語教師の方々。日本語教師はどこにいるのか、都道府県別の数字で見たら意外なことが見えるかもしれません。日本語教師が多い場所、少ない場所に加えて私が教えていた学生たちの生の声も一緒に紹介したいと思います。なぜ留学生がその地域を選ぶのかが見えてきますよ。

勉強するのも働くのもやっぱり東京?

法務省告示機関(日本語学校)における日本語学習者数と日本語教師の数を数字で見てみました。

  • 日本語学習者数:平成2年度 60,601人 令和元年度 277,857人
    法務省告示機関(日本語学校)の比率40.9%
  • 日本語教師の数:平成2年度 8,329人 令和元年度 46,411人
    法務省告示機関(日本語学校)の比率27.9%

この数字は日本語学校に限ったものです。

個人でオンラインレッスンに通ったり、地域の日本語教室に通ったりしている人もいるので、日本語学習者数も日本語教師数もまだまだたくさんいます。えっ!?うちの地域にはそんなにいないって!?

外国人がいっぱいいるイメージってやっぱり東京・・・・ですかね。それでは都道府県別、数字でのぞいてみましょう。

数字で見る日本語教育:日本語学習者が多い地域・少ない地域

日本語学習者数

多いのは・・・・・

  • 1位:東京都 95,830人
  • 2位:大阪府 23,450人
  • 3位:愛知県 15,978人

やはり東京が一番でしたね。見事に期待を裏切りません。

理由としては、日本語学校の数が圧倒的に多いこと、大都市と言う利便性、アルバイトの豊富さ、外国人コミュニティなどがあげられます。

少ないのは・・・・・

  • 1位:和歌山県 312人
  • 2位:宮崎県 430人
  • 3位:青森県 608人

出典:文化庁「令和元年度国内の日本語教育の概要」

私がいる北海道もなかなか少ないと思っていましたが、少ない県の人数を見ると多いほうなのね・・・としみじみです。ちなみに北海道の学習者数は、3,570人です。

日本で就職を目指す北海道で勉強している留学生にこの数字を提示すると「少ない!!」反応が返ってきます。そして北海道の日本語学習者数はまだまだ少ないからライバルも少ないよ!と鼓舞します。実際には就職先も少ないという厳しい現実もあるのですが・・・(このお話はまた今度)

北海道の日本語学校学生に聞いてみた!地方に日本語学習者が少ない理由

学生に北海道の日本語学習者数数字を見せました。そしてどうして東京に比べてこんなに少ないのか、生の声を聞いてみたところ、返ってきたのは…

  1. 日本語学校がない、少ない (=ビザがもらえない)
  2. アルバイトがない、少ない (=学費や生活費、自由なお金などが入らない)
  3. (同じ国の)先輩がいない (=先輩から学校やアルバイトの情報を聞くことが多数)
  4. 利便性         (=せっかく日本に来たのに観光に行きにくい、生活が不便)

だから選ぶのは東京や大阪とのことでした。

ではなぜ北海道を選んだのか、と聞いたところ多数派は学費が安い、生活費が安いと思った(そんなことはないような・・・)、北海道が好き、先輩に紹介されたなどでした。

少数派には冬は毎日スキーができる(というイメージですね)、北海道を観光したい、気候が好きなどの声がありました。また一番の理由ではないにしろ、多くの学生が雪を実際に見て触ってみたかったということもあげてくれました。

その夢が叶ってうれしいか、楽しいかと聞くとほとんどの学生が数か月後には「寒いのでもういいです」、「歩くのが大変です」と生活者の視点に変わります(笑)

数字で見る日本語教育:日本語教師数が多い地域・少ない地域

それでは、日本語教師数はどうでしょうか。こちらもやはり東京でしょうか。上位3位、下位3位を一気に見てみましょう。

日本語教師数多いのは・・・・・

  • 1位:東京都 12,009人
  • 2位:大阪府 4,554人
  • 3位:愛知県 3,216人

少ないのは・・・・・

  • 1位:和歌山県 80人
  • 2位:宮崎県 82人
  • 3位:青森県 83人

出典:文化庁「令和元年度国内の日本語教育の概要」

やっぱり東京です。そして・・・学習者数と同じ都府県で同じ順位なんかーい!!!そうなんです。日本語学習者がいるところに日本語教師の仕事ありですまぁ日本語教師に限らず大都市あるあるでしょうか。

東京、大阪などの大都市は日本語学校が多く、日本語教師の需要も高いです。専任講師と呼ばれるフルタイムの先生だけではなく、非常勤講師と呼ばれる授業を主として教える先生が多数います。(日本語教師の働き方についてはまた今度)

そんな非常勤講師の先生方は、掛け持ちと言って二つ、三つの学校で教えている場合がよくあります。私が以前勤めていた学校前の学校は、都心に近かったため、二つの学校で教えている先生がたくさんいました。その場合、移動が便利で学校の距離があまり離れていないほうが働きやすいですよね。

例えば私が今働いている北海道の学校、北海道の中でも日本語学校が多い札幌市まで2時間もかかります。うーん、、、掛け持ちは到底できませんよね。

地方は日本語学校を探すのも一苦労です。通勤で満員電車に乗らなくていい、自然が多くてのんびりできるなど、他の面でいい面もありますがね。

このように見ると、学習者もいて(=需要がある)、多様な働き方もできる(=選択肢が多い)大都市に日本語教師が多いのも納得です。

数字からみる日本語教師の働き方

やはり日本語教師が東京や大阪などの大都市に多いのが分かりましたね。そして日本語学習者が集まりやすい理由も。さて大都市に多い日本語教師ですが、日本国内での働き方にも色々あります。ざっくりと分けると下の三つになります。

  1. 常勤講師
  2. 非常勤講師
  3. ボランティア

この働き方、数字で見てみると都道府県によって全然違うんです。働き方はもちろん個人個人の生活スタイルや望む働き方によって違うものですよね。

でもそれだけではなくて、その地域に日本語学校がどのくらいあるか、大学があるのか、ボランティアの教室が多いのかなどによっても変わってくるようです。それが数字に出ています。

これから日本語教師を目指す方は、どの地域で働くのが自分に合っているかなど考えながら見てみると面白いですよ。

国内での日本語教師の働き方3パターン

国内で働く場合、日本語教師はざっくりと三つの働き方に分けられます。もっと細かく働く場所はありますが、ここでは分かりやすく三つにしました。

常勤講師 

専任講師とも言われますが、日本語学校、大学などでフルタイムで働きます。授業はもちろん、運営や管理なども仕事に含まれます。月給制です。

非常勤講師

日本語学校や大学などで主に授業を教えます。授業時間は学校によって違います。1授業は1コマと呼ばれ、4コマで午前中、4コマで午後と分かれている学校が多いです。給料は時給制で、企業などで教える場合も非常勤講師として募集を見かけます。

ボランティア

地域の日本語教室で教えます。対象は大人から子どもまで様々です。無償の場合がほとんどですが、有償の場合もあります。日本語教師が多い東京都・大阪府・愛知県でも、上の三つの働き方をデータで見てみると、大きな違いがあります。

その違いは、常勤・非常勤とボランティアの比率を比べてみれば一目瞭然です。分かりやすく言うと①②はお給料をもらっている、③はほとんどはお給料は発生しないという分け方での比率ですね。

都会でも働き方の違いがはっきりと!?都市別の常勤・非常勤・ボランティアの比率

【常勤・非常勤:ボランティアの比率】
東京都 7:3   ・常勤、非常勤が多い!
大阪府 4.5:5.5  ・同じぐらい!?
愛知県 3:7   ・圧倒的にボランティアが多い!

東京都と愛知県では、比率が逆転しています!大阪府はその中間といったところでしょうか。どうしてこのようなデータになるのでしょうか。

東京都で常勤・非常勤の日本語教師が多い理由は簡単です。大学や専門学校、日本語学校の数が多いから=留学生が多いということですね。前述したとおり、大都市に留学生の需要ありですからね。

一方、愛知県では定住する外国人やその家族が多く住んでいます。トヨタなどの工場があるのが大きな理由でしょう。その方々が生活に必要な日本語を身に着けるため、県内各地で日本語教室が数多く設けられています。そこで教えている方々がボランティアの日本語教師です。

愛知県は、外国人が多く住んでいる市町村が多く、愛知県国際交流協会(AIA)や行政が日本語教育に力を入れています。愛知県国際交流協会(AIA)のサイトで調べたところ、愛知県内には日本語教室が110か所以上あるみたいです!ちなみに、隣の静岡県も同じ理由で、ボランティアの日本語教師が多いですね。

日本語教師はボランティアが多数?

こう見てくると、日本語教師数第1位は大都市・東京だし、日本語教師の働き方は常勤講師・非常勤講師が多いんでしょ、と思いますよね!?文化庁が出している令和元年度国内の日本語教育の概要を見ていくと・・・

日本語教師で最も多いのは、意外にもボランティアなんです。

令和元年を例に見てみましょう。

常勤講師  :14.3% (6,635人)
非常勤講師 :32.4% (15,031人)
ボランティア:53.3% (24,745人)

しかも半数を占めています。平成23年度以降から現在までボランティアが全体の50~60%を占めている状況です。都道府県別で見てみると・・・講師のうち、常勤講師・非常勤講師の割合が高いのは、

  • 1位:沖縄県  94.6%
  • 2位:青森県  85.4%
  • 3位:鹿児島県 70.1%

講師のうち、ボランティアの割合が高いのは、

  • 1位:島根県 92.4%
  • 2位:滋賀県 80.2%
  • 3位:鳥取県 80.1%

意外な県が並んでいますよね。みなさんの出身の県は入っていますか。ここで一つ疑問があります。ボランティアの日本語教師が多い都道府県=日本語学校が少ない都道府県なのでしょうか。

ボランティアの割合が高い3県の日本語学校(告示校)の数は次のとおりです。

島根県 3校
滋賀県 1校
鳥取県 4校
(出典:平成二年法務省告示第百四十五号)

それほど多いわけではありませんが、ゼロではないんですね。

一方で常勤講師・非常勤講師の割合が高いランキング2位だった青森県は、日本語学習者数が少ない県でも日本語教師数が少ない県でもどちらも堂々の第3位です。おまけに日本語学校(告示校)の数が現時点では0なんです。

これはどういうことなんでしょうか。不思議ですね…

調べてみると弘前大学や青森中央学院大学といった大学で留学生を受け入れているようです。

プライベートレッスンや企業での非常勤日本語教師の募集もありました。数字では見えないそういったところで需要がああり、人数は少なくても割合としては高くなっているのかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたか。パート3に続き、パート4も数字を見ながら日本語教育の世界をのぞいてみました。実は私、数字が大の苦手です。あぁ・・・お恥ずかしい。

文化庁や国際交流基金など多数の機関が出している報告書など細かな数字やグラフが出ています。私の場合は「よしっ!見るぞっ!」って気持ちを入れないとダメです。でもそんな数字も細かく見ていくと普段知らないようなこと、気づかないようなことを発見できて面白いものです。

日本語教師が多い2トップが東京、大阪なのは分かるけど3位は愛知なのー?と予想外なことがあったり。日本語教師が少ない県は予想もつかなくて初めて知ったり。なんと日本語教師の働き方も数字で見ると、全体の50~60%がボランティア!

日本国内の外国人の方々をたくさんのボランティアの方々が支えているんですね。

日本語教育セミナーなどに参加すると、日本語学校で教えている方、常勤講師の方、非常勤講師の方、ボランティア教室プライベートやオンラインで教えている方、様々な日本語教師の方に会います。日本語教師の働き方は多様だなと肌で感じます。

それでも全体のことは分からないことも多いもので、今回の数字で見たように意外なこともたくさんあります。たまには苦手な数字をのぞいてみるのもありですね。時間がないし、専門的な報告書などはなかなか見る気にはならないなんて方。

いのっちの記事を通して「日本語教育の数字」を気軽に読んで知ってもらえると嬉しいです。それでは次回もお会いできるのをお楽しみに!!

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