養成講座の人間関係~日本人同士、大人同士であるということ~

日本語教師としてある程度経験を積み、次のステップとして日本語教師養成講座の仕事を考えている、またはデビューしたという方々もいらっしゃるでしょう。

日本語教師養成講座の仕事って、日本語教師の延長線上にあるので余計情報が少なくなりますよね。当たり前ですが、私が違う業界の方に「日本語教師養成講座の講師してます」と言っても、ほぼ通じません(笑) まず、「日本語教師って何?」ってところから入りますね。

これから養成講座の講師になりたい方は、この記事を読んでみてください。

既にデビューした方は、教える内容や教え方の難しさはさることながら、今までとはまた違う人間関係に戸惑うことはないでしょうか。特に、お若くして養成講座デビューされた方。

私は、日本語教師養成講座の仕事は今年で4年目になり、現在3つの機関を掛け持ちしています。日本語教師歴がまだ3年ないくらいで、30歳になるかならないかというときに養成講座講師デビューし、その後数年のブランクを経て再開して今に至ります。

最初に言っておきますが、養成講座は決して嫌な仕事ではありません。基本的にはとてもいい方々に囲まれて、日本語教師とはまた違った楽しさを味わうことができます。

でも、やはり人間関係で少し大変だなと思うことはあるものです。それは日本語教師として学生や同僚の教師と関わっていてもありますよね。

今回は養成講座の人間関係に焦点を当てて、お伝えします。

目次

養成講座の人間関係~養成講座講師が関わる人たちって誰?

まず、養成講座の講師が関わっている人たちは、受講生、運営スタッフ、同僚の教師です。

「受講生」は機関によって違う言い方をするかもしれませんし、「運営スタッフ」というのも、色々な立場の人がいてその方々をまとめて何と表現すればいいのかわからなかったのですが、とりあえずこの記事ではこう呼ぶことにしますね。

様々なバックグラウンドを持った受講生たち

私たちが教える相手は、日本語教師の資格を取ろうとしている人たちですから、母語が日本語である方、または日本語は母語じゃなくても、日本語で専門科目を勉強することができる程度の力をお持ちの方々です。

私は初回の授業でよく受講生に自己紹介をしていただきますが、本当に背景は様々です。

年齢は20代から60代くらいまで、国籍は日本以外の方もいらっしゃいますし、日本国内でも出身地や長く過ごした地域も違います。

仕事も様々で、学生、会社員、公務員、主婦、フリーター、自営業、フリーランス…、また、今もその仕事をしているのか、辞めて養成講座での勉強に専念しているのかも人によります。そして、前職が小中高や塾の先生で、「教育」に興味をお持ちの方々も多いです。

こんなに色んな人が、同じ教室で同じ勉強をしているのです。

運営スタッフ

養成講座を運営している学校や会社のスタッフも沢山います。まず、教師と受講生の間に「橋渡し役」を担っているスタッフの方が必ずいます。

その方は、教師、受講生の両方から何かあればすぐに相談されるので、忙しいはずです。また、その方がコーディネーター、受付や事務などの仕事を兼任している場合もあります。

このようなスタッフの方々は、多くの場合、日本語教師ではありません。普通は養成講座の授業にも入りません。日本語教師有資格者であり、だいたいすべての科目でどんなことを勉強しているのか把握している方もいるし、そうではない方もいます。

同僚の教師

他の先生はいるのですが、経験上、養成講座の講師同士はそこまで話す機会がありません。チームティーチングをしているわけでもないですし、授業後の採点等もないので、それぞれが自分の授業の直前に来て、終わったらすぐに帰ります。

運営スタッフは日本語教育についてあまり知らないかもしれない。同僚の教師との関りは薄い。

ですから、養成講座では基本的に自分で何とかするものと思っていたほうがいいと思います。日本語教師デビューしたときは、自分が教える項目やその教え方について、聞けば相談に乗ってくれたりアドバイスをくれる先輩教師が当たり前にいることが多いのですが…。養成講座ではそうはいきません。

それでも、どうしても授業をするにあたり不安があれば、スタッフの方に相談してみるのもいいでしょう。

他の先生がこれまでどうしていたか教えてくれたり、他の先生が過去に作ったレジュメを見せてくれたりするかもしれません。

養成講座ならではの人間関係で大変なこと

色々な国籍の人が集まっている日本語のクラスのほうが、人間関係の大変さがそれなりに想像できるかもしれません。養成講座と聞くと「あ、日本人の方相手だから、良かった」と少し安心する人もいるのではないでしょうか。もちろん、それでやりやすい部分もありますが、大変なことはあります。

教師ー受講生

もし、ご自分も420時間の養成プログラムを修了したのであれば、まぁこんなものかと思えるところかもしれません。

一クラスの人数は3~30人以上と様々です。30人前後にもなってくると、やはりそれだけ色々なタイプの人がいて、まだクラスが団結していない初期の頃は特に、教師が何故か受講生から攻撃的な物言いをされたと感じることもあります。(とは言ってもそのような方はめったにいませんから、安心してくださいね(笑))

皆の前でイライラを出して自己主張をしているときはもう、相手(教師)の年齢や、強く言われることが大丈夫そうなキャラクターであるかどうかなどお構いなしですからね(笑) というか、免疫が無さそうな若い先生のほうが言われやすいのかもしれません。

そして、そういうのは教師よりずっと年上の方が多いです。(私はそうです(笑))それも、こちらにすれば、

  • 何故そんなにカリカリしなきゃいけないのだろう?
  • 何故そういう言葉選びをするのだろう?
  • 主張の意味がよくわからない
  • それは私に言われてもどうしようもないんだけどなぁ

というようなことが多いです。

何故このようなことが起こるのでしょう(笑)

人生経験を積んだ大人たちであるということ

先述の通り、養成講座では様々なバックグラウンドを持った人たちが一つの教室で一緒に勉強しています。年齢層は幅広いですが、私よりも年上の40代、50代かそれ以上の方が多いです。

教師も含め、その教室にいる人は全員これまでの長い期間、全く違う人生を歩んできたのですから、それはそれは、各々が持っている「常識」が噛み合わず、嫌な思いすることはあります。

”同士”であること

タイトルの通り、教師―受講生は年齢は違えど「大人同士」、そして多くの場合「日本人同士」です。

日本語のクラスだと教師が教える相手は、20歳前後の「学生」であり、「外国籍の人」です(日本人の帰国子女が学生のこともありますが)。これを聞いただけでも教師は(たぶん学生のほうも)、相手のことを「別世界の人」として最初から接するので、ある程度の摩擦は覚悟しているものなのかもしれません。

しかし、養成講座のような「大人同士」「日本人同士」という場所では、お互いに「”同士”なんだから、相手は自分のこと理解してくれて当然。思い通りに事が運んで当然。」とどこかで思っているのではないかと思います。

恋人や家族間など「近い人」であるほど喧嘩が増えますよね。

「異文化」というのは決して日本-外国間だけに存在するものではなく、同じ日本の中にもあります。

教師ー運営スタッフ

運営スタッフ、特に「橋渡し」の人はとても頼りになり、教師にとっても心強い存在になると思います。

ただ、受講生が授業で何かあれば当然この「橋渡し」の人に言うでしょう。

また、直接聞かなくても運営スタッフは、例えば定期的に行うアンケートだったり、サイトの受講者専用ページに書き込んだレビューだったりを見て、受講生が授業についてどう思っているのか把握しています。

そこにある受講生からの意見を、運営スタッフ(橋渡し)の方から教師に伝える、ということがあります。

私も1年に1回あるかないかぐらいの頻度で、そういうことがありました。「わざわざその意見を私に伝えるってことは、そんなに大問題になっているのか?!」と構えてしまいますが、ほとんどの場合、少し突っ込んで聞けば「何十人といる中で、その意見を言ったのは一人しかいない」とか、「(スタッフが)たまたま噂で聞いただけだから実はよくわからない」とかでした(笑)

こちらにすれば、小さなことをわざわざ大袈裟に捉えられたと感じることもあると思いますが、スタッフの方も別に教師に対して「受講生がこう言ってるから、ちゃんとやってください」と怒っているわけではなく、立場上「とりあえず伝えなきゃ」ということなのかもしれません。

「橋渡し」の人は、受講生と教師双方の悩みを聞かなければならない立場でもあり、時に板挟み状態に陥り、大変ではないかと思います。

受講生ー受講生、受講生ー運営スタッフ

受講生同士でも何かもやっとしたり、時には言い合いに発展したりする場面も何度も見てきました。これまで書いてきた通り、色々な人がいる空間であり、さらに、それぞれが家事や仕事をしながら休む暇もなく勉強しているので、ストレスも溜まっているでしょう。

スタッフー受講生間でもストレスが1つもないとは限りません。

ただ、プログラムの後半のほうになると毎回、受講生同士が徐々に仲良くなり、笑いが増えていくのを感じます。それに伴い、教師とも運営スタッフとも関係が良くなっていくような気がします。

実習など大変なことを一緒に頑張った戦友という意識が芽生えているのかもしれません。

養成講座で、できるだけ人間関係のストレスなく働くには?

「受講生に感情的な様子で何か言われた」「スタッフ経由で受講生の意見を伝えられた」

言われることを全て大真面目に受け止めていては、身が持ちません。

これだけ人が沢山いれば、色々な意見がありますし、教師も人間ですから、中には宇宙人ですか?と言いたくなるくらいやることなすこと理解できない人に出会うこともあるでしょう。(私も宇宙人だと思われてるのかもしれませんが)

何か言われても貴方自身が否定されたわけではないのですから、教師としても人としても自信を無くす必要は全くありません。

何か言われたとき、

  • 真面目に改善する
  • 言い分を伝える
  • スタッフに相談する
  • 気にしない(笑)

などその時その時で対処法はあると思います。ただ、やはり民間の教師養成スクールは、日本語学校や大学などと比べても、より「顧客満足度が大切」というのはあると思います。対処法で私が一番採用しているかもしれないのは、

・とりあえず文句が出ない程度にやる

ということです。何か意見があったら、「あ、そういうふうに捉える人もいるのか」と考え、これからはその点に関して「文句が出ない程度に少し配慮する」のです。

「いや、そんなことで文句言うのはおかしいだろ」と思ったのであれば、心の中ではずっと「おかしい」と思い続けていても結構ですから(笑) 無理やり「相手が正しくて自分がおかしい」というふうに考え方を変える必要はありません。とりあえず「ほら、これで文句ないよね?」という気持ちでやってみてください(笑)

本当に少しの配慮でだいぶ変わることも多いものです。例えば、

  • レジュメに茶々を入れてくるタイプの人がいる
    • 「何か言われるかな?」と思う内容はレジュメに載せない(笑) または、「これは参考までに載せただけですが」という前置きをつけて(重要ではないというアピールをさりげなくして)、説明する。ダメでしょうか、こういうこと言っては。
  • 「講義中に先生が水を飲んだ」と言われた
    • 水を飲む前に「ちょっと失礼します」と言う。または、「私はずっと話していたら水分を取らないと声が出なくなるので」という当たり前のことでも初回の授業のときに伝えておく。
  • テスト実施前に自習の時間を与えたら、「他の先生は自習じゃなくて一緒に復習して、大事なポイントを教えてくれた」と言われた
    • 次回からは要望通り「一緒に復習してます」的な雰囲気を出す。または、「自習」とは言わずに、「一度ご自分の頭の中を整理する時間にしてください」などという言い方に変える。

参考にしてください(笑)

日本語の学生にアンケートで辛辣なことを書かれた場合の対処法について知りたければこちらも読んでみてください。

まとめ

冒頭にも書きましたが、養成講座の仕事は楽しいのです。人間関係で大変なことはありますが、日本語教師としての仕事も含めて、人間関係で全く悩まない仕事なんてないですよね。

ぜひ、日本語教師として数年経験積んだ後は、養成講座の仕事にも挑戦して、これまでの日本語のクラスとはまた違う楽しさを味わってみてください。

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