模擬授業ってだいたい20分くらいなのに、日本語学校の授業は50分×4コマとか5コマとか。いざ教案を書いてみると、時間配分に悩みませんか。授業中に「あれ?この時間配分あってる?あれ?予定通りに進まない…」と思うこともあったりなんかして…。今回は日本語学校の授業数や、授業の時間配分について、私が実践している方法をお伝えします。
これを読んで日本語学校で働きたい!という方が「日本語学校で授業をする自分」を想像できますように!
教師が1日に担当する授業数
教育機関によって、1週間・1日の授業時間には差がありますが、おおよそのイメージをお伝えします。
常勤の方なら、契約時に1週間の授業担当時間が決められているところが多いです。私は1週間に4日授業担当をすることが多いですが、新人のときは、1週間に2日授業担当でした。非常勤の方なら、事前に所属している教育機関に希望勤務日数などを伝える機会があります。私が非常勤で午前・午後・夜と異なる学校で授業したときは、楽しかったけど自分がどの授業で何をしゃべったか、記憶できなくなりました。あまりお勧めできない働き方です…。
1日に担当する授業時間は、日本語学校は「50分×4コマ」くらいが目安です。同じクラスで連続4コマ授業をするイメージをしてください。私は以前に勤務した学校が1コマが45分だったことも、1日に5コマだったこともあります。
授業の流れ
教科書の進め方
メインテキストは「Lesson1・Lesson2・Lesson3…」というような単元にわかれていて、各単元には新出語とその単元で学習する文法が3個ほどあります。そして、その文法を使った会話練習や作文練習などが掲載されています。オーソドックスな語学のテキストの形です。私たちが英語の勉強をしたときも、同じ感じでしたね。
各単元は
という流れで進みます。
しかし、注意してください。1日で、
を学習するわけではありません。1日で、
を勉強するかもしれないし、
を勉強するかもしれないのです。勉強を始める前には必ず今までの復習も必要です。つまりは、自分の担当前後の内容も把握しておく必要がある、ということですね。よく「導入が大切!」「いい導入とは?!」なんてことを聞きますが、
なんて流れを担当することもあるかもしれないのです。(作文についてはまた別の機会にお話を)学校によっては、予定表に「文法1」と書かれているのみで、会話や活動をするようにという指示がない場合もあります。そういった場合は、ますます授業内容や時間配分に悩んでしまいますね。
1日に担当する授業の進め方
授業はおおよそ
という流れで行います。
「活動」も「練習」の一種ではあるのですが、、「活動」のほうが応用力が必要になる練習です。ウォームアップには何分時間を使えばいいのか、導入・練習・活動に使う時間の比率はどのくらいがいいのか、とか、日本語教師向けのテキストにはいろいろ書かれていますが、私は「練習時間に一番時間を使う」のが一番いいと思っています。
ぶっちゃけ50分の授業の中で、ウォームアップ0分、導入10分、練習40分でも大きな問題はありません。ウォームアップや導入に時間を使いすぎて、練習時間が短くなるほうが大きな問題です。
ウォームアップに何をする?
1コマ50分の授業なら、ウォームアップに使用する時間は数分から5分。ウォームアップは授業に入る前の雰囲気づくりのための時間です。今までに学習した語彙や文法を使って会話をするのですが、毎回、ウォームアップで何を話すかを考えるのも、結構大変です。もし週に3日同じクラスで授業することになったら、話すネタも尽きてきますよね…。
授業開始と同時に出欠席を確認して、宿題を返却したりなんかしていたら、5分なんかあっという間に過ぎてしまったわ…ということも多々あると思います。
出欠席をとるだけで5分過ぎてしまったわ…という場合は、私はウォームアップは不要だ、という考えです。教師が笑顔で出欠席をとり、休んだ学生がいたら、「〇〇さんは、どうして休みなんですか?」なんて、聞いたらそれがウォームアップ代わりになるからです。
それに、やる気満々で教室に来てるから、1コマ目のクラスの雰囲気はいいけれど、集中力が切れた3コマ目や4コマ目のほうがクラスの雰囲気が悪い、ということもあるでしょう。そんなときは、1コマ目に使わなかったウォームアップの時間を3コマ目の始めに移すのもアリです。
導入に使う時間は?
文法導入と文法の意味説明は非常に大切です。文法にもよりますが、1コマ50分の授業なら、私は文法説明込みで5~10分くらい時間をかけます。導入は学習者に文法の意味理解をさせる時間です。導入がわからなければ、その日の授業の意味がなくなります。どんなに焦っても、省略してはいけません。
練習には一番時間を使います
文法を理解したら、あとは練習です。多種多様の練習方法で、学習者に文法を使わせます。50分授業で、導入と練習をするなら、私は口頭練習のみで30~35分は練習に時間を使います。筆記練習に重点を置くなら、答えを書く時間と答え合わせの時間が必要となり、練習時間は30分以上必要になります。どんな口頭練習をしたらいいの?と悩んでらっしゃる方は、こちらも読んでみてください。
活動って、何をするの?ゲームのこと?
活動とは学習した文法がメインで使えるように設定された、応用的な練習のことです。学習した文法を使って、日本人にインタビューをする、とか日本語で新聞を作ってみる、なんてことが頻繁にできればいいですが、実際は授業時間や設備の都合上、クラス内で行うことがほとんどです。
こんなことを言うと、他の日本語教師の方々から反感をかってしまいそうですが…。教育機関から練習時間や活動時間に関しての指示がない場合、私は練習時間のほうを多くとるほうが意味があると考えています。
活動時間<練習時間 の理由
- クラスに1つの母国語を話す学習者が、2名以上いる場合、クラス活動をすると多少なりとも母国語を使ってしまう学習者が出てきます。(恥ずかしながら私が活動を実施したときは、日本語以外の言葉の使用があります…。)
- 数名のチームでクラス活動を行う場合、チーム内で学習者同士が話す日本語の間違いに教師が気付きにくいです。
(私が英語を学習していたとき、活動中に私が話した「通じるけど間違っている英語」を訂正してもらえないことが不満でした。) - 外国語の会話習得をするには「何回も口頭練習をして、口からスムーズに言葉が出てくる」必要があります。「何回も口頭練習して、口からスムーズに言葉が出てくる」には、クラス活動より、口頭練習のほうが役に立ちます。
(口頭練習がスムーズにできないのに、活動をしてもねぇ…。基礎ができないのに、応用はできません。)
以上の3点から、私は活動時間より、練習時間のほうに重点をおくべきだと思っています。ひとつの文法を50分×2コマで行うなら、私は2コマ目に活動を行います。そして、活動内容が間延びしてしまわないよう、ひとつの活動には10分程度しか使用しません。且つ、学習者の間違いが訂正しやすいように活動内容をアレンジします。
まとめ
まとめは授業の最後に、その日に学習した内容を再確認する時間です。学習項目を含んだ例文のディクテーションを2~3問行ったり、簡単な穴埋め問題を2~3問して動詞活用や接続を確認したりします。まとめをする方法は問いません。私なら5~10分未満で終わらせます。「まとめ」の時間では、その日の学習内容の「基本中の基本」を確認してください。
- ちょっと難しい問題
- プラスαで説明しておきたいこと
などは、ご法度です。こんなことを「まとめ」の時間に学習者に提示してしまうと、授業に疑問点を残してしまうことになりかねません。
まとめ
教育機関から時間配分の指示がない場合は、
- ウォームアップ10%(でも省略可)
- 導入20%(省略絶対不可)
- 練習60%
- 活動内容とまとめは時間を調節しながら行う
これが私のスタイルです。このスタイルで学習者からクレームをもらったことはないし、コース終了後に行われる学習者からの評価でも問題ありません。時間配分に悩んでいらっしゃる方がいたら、教案作成時に参考にしてみてください。
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