学習者を敬語好きにさせるコツがあるんです!謙譲語の導入と練習【みんなの日本語第50課】

学習者にとって、ハードルが高い敬語。

私は「敬語なんて使えなくても、自分の言いたいことは伝えられるし~」なんていう学習者に出合ったことも何回か…。

学習者を敬語好きにさせるにはどうしたらいいんでしょうか?どうしたら積極的に敬語を使ってくれるのでしょうか?

学習者を敬語好きにさせるために、私は授業中にちょっとしたトークを挟みます。このトークの内容が敬語好きにさせるコツなんです。

そこで、今回は私が行っているトーク内容とともに、学習者に好評だった謙譲語の導入&練習を一気にご紹介したいと思います~!!

これを読めば、学習者が敬語に興味を持ち、わかりやすい授業ができますよ!

目次

学習者を敬語好きにさせる!尊敬語と謙譲語に興味を持つ導入

学習者に敬語に興味を持ってもらうには、日本人が年齢差や顔見知り度によって使い分ける言葉遣いや非言語行動の話をすることです。

え?どういう話よ?!って思いますよね。今から具体例を述べます。

以前私が中国で教えていたときの話。(学習者は全員中国人)

  • クラスメイト同士の年齢が違っていても、話す中国語や態度に大きな違いはない
  • 中国では初対面のときに「恋人がいるの?」と聞かれるのはよくある話

だから、私は学習者に次のような話をしました。

★具体例1★

教師:日本では目上の人と話すとき、椅子の背もたれにもたれたまましゃべったり、足を組んだまま話をしないほうがいいですよ。そのような態度はあまり丁寧じゃないと思います

教師:〇〇さんは、クラスメイトの△△さんと、□□さんに話す中国語は同じですか?日本人は年上の△△さんと、同い年の□□さんに話す日本語は変える人が多いんですよ。

教師:中国では初対面の人に恋人がいるの?と聞くのは普通ですか?日本では初対面の人にプライベートなことは聞かないのが普通なんです…。私は恋人がいないのに、『恋人がいますか』なんて聞かれると、傷つきます…

日本では、年上の人と話すときに、椅子の背もたれにもたれ、足を組んだまま話をするなんてこと、あまりしませんよね?ましてや、初対面の人に恋人がいるかどうかを聞くことなんて…!

こんな感じで、日本人が年齢差や顔見知り度によって言葉遣いや態度を変えるという話をすると、学習者は必ずと言っていいほど、「えぇ~?!」とびっくりします。

この「えぇ~?!」の驚きが大きければ大きいほど敬語に対する印象が強く残り、興味を持ってくれるんです。

もちろん外国と日本の違いでなくても、言葉遣いに関する話でもいいんです。

★具体例2★

  • 例1)童顔だった高校時代。私が某ファストフード店で注文したら、店員がまるで小学生に話しかけるように話してきて、不快に思った。
  • 例2)初対面なのに敬語を使わず話す同僚がいて、腹立たしかった。
  • 例3)仲がいい友人がいるが、年上なので今でも敬語を使っている。

こんな話をすると学習者には「先生、めんどくさい性格やなぁ」「日本人とは付き合いにくい!」と言われますけどね(笑)。

でも、このような日本人の年齢差や顔見知り度によって使い分ける言葉遣いや非言語行動の話、学習者は結構興味をもってくれるんです。

この話を授業の合間合間に雑談のようすると、学習者が敬語の授業に食いついてくれるんです。ぜひ、お試しください♪

尊敬語と謙譲語の違いを分かりやすく説明するには?

敬語の勉強をするときには、尊敬語と謙譲語の違いをはっきりさせておく必要があります。みなさんはどうやって説明していますか?

学習者にとって分かりやすい説明はコレです!

  • 相手がすること→尊敬語
  • 自分がすること→謙譲語

と解説するのが一番です!もちろん、具体例を示すことを忘れずに。

★具体例★

  • 例1)社長が会議室にいらっしゃいました。⇒「いらっしゃった」のは「社長」で、相手がすることに敬語を使っている=尊敬語
  • 例2)私が会議室に参ります。⇒「参る」のは私。自分がすることに敬語を使っている=謙譲語

こんな感じで、いくつか尊敬語と謙譲語の例を挙げ、「誰がする(した)のか」を確認する練習をするとわかりやすさが増します。

私たちが国語の時間に勉強したような「尊敬語は『相手を上げる』、謙譲語は『自分を下げる』と言った説明の仕方をすると、学習者は「自分を上げるってどういうこと?」と考えてしまい、分かりにくいようですよ。

失敗しない!「お~します」&「ご~します」の謙譲語の導入&練習

「お~します」&「ご~します」がどんな謙譲語かは、日本語教師の皆さまはもうご存知ですよね?一応確認しておくと…。

1グループ・2グループの動詞は「お+ます形+します」になり、3グループの動詞は「ご+ます形+します」になります。

★具体例★

  • おかばんを持ちします。(1グループの動詞)
  • エアコンをつけしましょうか。(2グループの動詞)
  • 会議室まで案内します。(3グループの動詞)

この敬語は簡単そうだけど、学習者が間違った使い方をすることが多いので、導入するときには注意が必要なのです。

「お~します」&「ご~します」の謙譲語を導入するときの注意

「お~します」&「ご~します」の謙譲語を使うときの注意点。

■相手のためにする行為に謙譲語を使うこと

  • 私は昨晩お勉強しました。
  • 私は来年ご結婚します。

このように自分のためにする行為に対しては謙譲語を使わない。

■「ご+ます形+します」にならない3グループがある。

  • お客様がいないときに、ご掃除します。
  • 明日社長にご電話します。

これ以外に「洗濯します」も「ご洗濯します」になりません。

学習者に尊敬語と謙譲語を使って自由に会話練習させると、このような間違った敬語を使う可能性があるので、事前に注意しておくといいですよ。

謙譲語の失敗しない導入と練習

失敗せず、わかりやすい導入と練習に必要なもの。それは!!

  • シチュエーションを明確にすること
  • 誰が誰に何をするのか、学習者に理解させること

この2点です。この2点を導入や練習のときに学習者に意識させるのです。

単純な変換練習よりも、シチュエーションを理解させ、自分が相手のために何をするのか、を考えさせる練習が効果的です。

具体例①

教師:母国から先生が日本にいらっしゃいます。〇〇さんは先生に何をしますか?

学習者:東京の町をご案内します。

具体例②

教師:母国からいらっしゃった先生の荷物が多かったら、どうしますか?

学習者:荷物をお持ちします

具体例③

教師が雨が降る中、上司が傘を持っていなくて困っているイラストを見せる

学習者:傘をお貸ししましょうか。

聴解力が弱いクラスの場合は、イラストなどの視覚教材でシチュエーションを確認するところからスタート。
聴解力が十分あるクラスでは、口頭のみでシチュエーションを述べるのもいいでしょう。

他にも、上司が会議室で「少し暑いですね」と言ったら自分(学習者)は何て言う?と言った会話を考えるのもおもしろいですよ。学習者のコンテクストによって、返答が違うかもしれませんね。

「暑いですね」…「ええ、暑いですね」と会話作成する学習者もいれば、

「暑いですね」…「窓をお開けしましょうか?」と会話作成する学習者もいるかもしれません。

特別な謙譲語は授業中に覚えきる!ゲーム感覚の導入&練習

「行きます」が「参ります」、「います」が「おります」というように、今までに学習した動詞に対応する謙譲語があります。これを特別な謙譲語と呼ぶことにします。

特別な謙譲語は次のようなものがあります。

今までに勉強した動詞特別な謙譲語
行きます来ます参ります
いますおります
食べます飲みますもらいます頂きます
言います申します
します致します
知っています存じております
知りません存じません
見ます拝見します
行きます(友達のうちへ行きます)伺います
会いますお目にかかります

尊敬語を覚えたあとに、この特別な謙譲語を勉強するのは結構大変です。

特別な謙譲語が覚えきれていないのに、練習に進んでしまうのが一番危険。
各自で単語が覚えられない学習者がいるクラスでは、授業内で覚える時間を書くをしてみてください。
(カリキュラムがキツイとは思いますが…)

授業内でいつ覚えるの?と思うかもしれませんが…

  • 新出語の導入&練習時に覚える
  • 特別な謙譲語を勉強する前日に覚える
  • 授業前にフラッシュカードで覚える
  • 特別な尊敬語も一緒に神経衰弱ゲームをして覚える

などなど…。覚える時間を長時間取るより、短時間で何回も覚えるチャンスがあったほうが定着します。「特別な謙譲語を小出しにして覚えさせる」を意識してみてください。

まとめ

敬語って、学習者に「覚えろ!覚えろ!」って言っても、なかなか覚えられません。

「敬語は必要ですよ~」と言ったところで、学習者は敬語を使わなくても日本語が通じているので、敬語が必要だと実感しないのかもしれません。

だからこそ、敬語を使わない人に会ったときの不快感、初対面の人と話すときは、適度に敬語を使い、お互いの距離感を保つことを学習者に伝えてください。学習者の驚きが、学習意欲に繋がるはずです。

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