この記事を読んでくださっているみなさんは、いつもどんな授業をしていますか?教科書を前から順に進めるだけで終わっていませんか?
私たち教師は学習者の学習目的によって、授業内容や授業方法を変えなければなりませんよね。学習者の数だけ、授業パターンがあると言っても過言ではありません。
しかし、日本語教師を始めたばかりの頃は、その授業パターンがわかりません。いいアイデアが浮かばないんです…。ですので、今回はそんな皆さんへ代表的な授業パターンを2種類ご紹介します。
たった2種類?と思わないでください。アレンジ次第でどんどん幅が広がりますからご安心を!
日本語教師初心者のために、本文の途中に日本語教育でよく使われている語彙説明を付け加えました。
今はボランティアだけど、ゆくゆくは日本語教師の勉強を本格的にしたい、という人の参考になれば幸いです!
授業は学習者の立場になって考える
「授業は学習者の立場になって考える」これ、基本です。
日本留学が目的なら、文法ひとつひとつを理解し、使えるようになることが大切。試験で点数が取れることも重要です。
趣味で日本語を学習しているなら、学習者は趣味に関する語彙も身につけたいと思っていることでしょう。
仕事で日本語を勉強しているなら、仕事で出くわす場面に対応できる能力が必要。
こんな感じで学習者の学習目的や学習内容は多種多様。目的が異なれば、目的に達する道も多種多様。だから、授業パターンがいろいろあるんです。
もし、学習者の学習目的を知らないのであれば、授業を始める前や、授業中の何気ない会話の中で学習目的を確認してみてください。そして、その都度、学習者にとって、よりよい授業パターンを考えることが大切です。
語彙や文法がメインの授業
下記のような目的を持った学習者にはどんな授業パターンがいいと思いますか?
- 日本留学が目的
- 日本語能力試験や日本留学試験(EJU)などの受験を視野に入れている
- 今は初級レベルだけれど、ゆくゆくは日本語4技能(聞く・話す・読む・書く)をマスターしたい
このような学習者には動詞・現在形・過去形など、文法項目別に勉強する授業。または、「~は…です」「~なければなりません」など、文型ごとに勉強する授業が向いています。
語彙や文法をひとつひとつ覚える。階段を一段一段のぼっていくイメージですね。
みなさんは「みんなの日本語 初級Ⅰ」「みんなの日本語 初級Ⅱ」というテキストはご存知でしょうか?多くの日本語学校が採用しているテキストですが、これは語彙や文法がメインの教科書です。
SenSeeMediaには語彙や導入、練習方法に関する記事も掲載しています。ご興味がある方は、見てみてくださいね。
ロールプレイがメインの授業
では、次のような学習者にはどんな授業が向いているでしょうか?
- すでに日本語が話せる
- 独学で勉強した日本語をとにかく使いたい
- 仕事で日本語を使っているが、スムーズに使えないときがある
このような学習者に、文法をひとつひとつ教えていると、「この文法はもう知っているし~」「簡単でつまらない」などと、思われる可能性があります。
刺激的な授業にするために必要なことは2つ。
- 日本語が使える満足感
- あれ?日本語ができない!!という学習者自身のレベルより少し高いハードルを用意すること
この2つを同時に叶えるためにはロールプレイがおススメです。ロールプレイはロール・プレーィングのことで、実際の場面を想定して、さまざまな役を演じながら問題解決する学習法です。
例1)学習者が日本在住の場合
シチュエーション:レストランで注文する
学習者A:ウエイターとして注文を聞く
学習者B:客。メニューを見て注文する。
例2)学習者が海外在住の場合
シチュエーション:出張で来た日本人を空港へ迎えに行く
学習者A:通訳者。空港で日本人社員を迎える。
学習者B:日本人として、通訳者と話す。
こんな感じでシチュエーションを与え、それに応じて、学習者が会話を進めていきます。
その後、学習者同士が行った会話の中で不自然だったところや、実際の場面でよく使う文法や語彙を導入・練習していくという流れです。
数ある日本語教材の中に「できる日本語 初級」というテキストがありますが、これは学習者にシチュエーションを与えてから語彙や文法の学習をする、というタイプの教科書です。
ロールプレイのアレンジ方法
このロールプレイの練習方法は一見、日本語レベルが高いように思いますが、アレンジ次第で、初級から上級の学習者まで対応できます。
例えば下記ロールプレイの場合。
例1)学習者が日本在住の場合
シチュエーション:レストランで注文する
学習者A:ウエイター
学習者B:客
初級の学習者にはこの内容のみで実施。レストランに入るところからスタートしてもいいですね。レストランに入るところからスタートすると、食事をする人の人数を述べたり、テーブル席か座敷かの希望を言う、なんて練習もできます。
中級の学習者には、下記条件を提示して、少しレベルアップ。
北海道へ旅行に行きました。レストランでおすすめのメニューを聞いてください。
できるだけ現地の食べ物が食べたいです。
上級の学習者には下記条件を提示して更にハードルを上げてみるのはどうでしょうか。
私が注文したものは海鮮丼セットだったが、実際に来たメニューは海鮮丼の単品だった。
店の人にクレームを言ってください。
どうでしょう?同じ「レストラン」での会話練習でも、アレンジ次第でレベルの変更ができます。
人前で話すのが苦手な学習者ばかりで、発表したがらないという学習者が多いクラスでは、先に台詞を考えさせる、というのもアリですね。
まとめ
どんな授業方法にも長所と短所があります。日本語の授業を1つのパターンだけで進める、ということはありません。授業パターンの組み合わせが大切なのです。
今回ご紹介した授業パターンを参考に、いろいろな授業方法にチャレンジしてみてください。
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