第1回 養成講座で習ったとおりの教案なのに、うまく授業が進まない。よくある3つの問題と解決策 

日本語教師の資格を取り、いざ教壇に立ったけれどうまくいかない。

  • 養成講座で習ったとおりに教えている
  • 教案は養成講座の先生にもチェックしてもらった

なのに問題多発。このような新人教師の方は意外に多いんです。私も約20年日本語教師を続けていますが、毎回壁にぶつかります。

私がよく耳にする問題は次の3つ。

  • 学習者が授業中に母語でおしゃべりをしてしまう
  • 授業にメリハリがなくて、“ダラ~”っとしてしまう
  • 用意した問題が予定通りできない

というものです。今回は私が20年ほどの教師生活で身につけた解決策の中から、すぐにでも取り入れられるものをご紹介したいと思います!

目次

授業中の母語使用が目立つ

母語が飛び交いすぎて授業がうまく進まないとき、教師は「なぜ母語が飛び交うのか」を考えてみてください。

飛び交う理由を知ることが先決です。

母語が飛び交う理由

今、あなたのクラスで母語が飛び交っている理由は何ですか?学習者が母語を使うシチュエーションは3つ考えられます。

  1. 学習者は導入や練習方法が理解できず、内容を母語でクラスメイトに尋ねた
  2. 学習者同士がある話題について盛り上がり、つい母語で話してしまった
  3. 学習者は忘れてしまった語彙や文法の意味を母語でクラスメイトに尋ねた

この3つのうち、

  • 1学習者は導入や練習方法が理解できず、内容を母語でクラスメイトに尋ねた
  • 2学習者同士がある話題について盛り上がり、つい母語で話してしまった

が対処方法を考えるべき問題です。

学習者が教師が用意した導入や練習が理解できていないなんて、かなり重大な問題ですよね。学習者同士が母語で盛り上がり、授業時間が奪われてるのも困ります。

では、どうやって解決するのか?!解決方法は次からです!

母語が飛び交うときの対処法

問題1 学習者は導入や練習方法が理解できず、内容を母語でクラスメイトに尋ねた

教師が導入したあと(または導入の最中)に母語でクラスがざわざわ。教師が今から練習しますよ~と言ったら、学習者同士が母語を使い始める。

これは大変です。あなたの導入や練習方法が学習者に通じていません。教師は学習者に通じる日本語で導入と練習内容の指示を行わなければなりません。

対処法①

学習者は教師が話す日本語の中に未習語や未習文法があるから、日本語が聞き取れないのかもしれません。

教師は導入と練習内容を指示するときに話している日本語を書き出し、未習語や未習文法がないことを確認してみてください。授業を録画(録音)して、実際に話している日本語をチェックしてみる、というのもおすすめです。

対処法②(対処法①をクリアしている場合)

学習者の聴解力が弱く、教師の日本語が聞き取れていない可能性もあります。

導入や練習のときに使う日本語を、学習者が聞き取れる日本語に変更しましょう。学習者の日本語レベルより1段階低いレベルの日本語に置き換えてみてください。

教師は学習した内容をすぐに使いたがります。そして、学習者も習った内容を身につけたいです。でも、新しい内容は「目で見たらわかるけど、聞いたときはわからない」ってことがあるんです。

聴解能力って四技能(聞く・話す・読む・書く)の中でも、苦手な学習者が多いです。

だから私は新しい内容を口にしたときは、すぐに1段階低いレベルの日本語に置き換えて言い直します。例えば、教師が

日本語で作文を書くのはあまり気が進まない(新出語)

と言ったら、その後に

作文をあまり書きたくない

と違う言葉で言い換えます。

対処法③(対処法①②をクリアしている場合)

導入内容が学習者の生活状況とかけ離れているのかもしれません。再度、学習者の生活スタイルを調べ、学習者の生活の中で起こりうる内容の導入に変更してみてください。

問題2学習者同士がある話題について盛り上がり、つい母語で話してしまった

授業そっちのけで、学習者が私語で盛りあがるとき、私語をしているのは数人ですか?それともクラス全体ですか?私は私語をしている人数によって、対処方法を変えています。

私語をしているのが数人の場合
対処法①

教師が学習者Aと学習者Bの間に立ち、授業をすすめる。学習者は視野を教師にさえぎられたことによって「あ、私たち、注意されてる」と気づき、私語を止める可能性あり。

対処法②

授業を聞いている学習者と教師とで、私語をしている学習者を見つめる。教師の「静かにしなさーい!」という注意よりも、見つめて注意をするタイプのほうが効果的だったりしますよ。

私語でクラス全体が盛り上がっている場合
対処法

少し自由に私語で話させて、最後にまとめてどんな内容で盛り上がっていたのかを日本語で話させる。

盛り上がるくらいおもしろい話だから、一生懸命日本語で伝えてくれるはず?!です。

問題にならない母語使用

学習者は忘れてしまった語彙や文法の意味を母語でクラスメイトに尋ねた

教師は「わからない言葉があっても、文脈から意味を判断する能力も身につけて欲しい」と思っています。しかし「どうしても今母語で意味が知りたい!」という学習者もいるのです。

それに、

学習者A「〇△ってどういう意味?」

学習者B「□□だよ」

これだけの母語使用が授業に影響することは少ないですよね。逆に言えば、母語の使用が授業の邪魔になっているということは、コレ以上の会話をしているということですね。

メリハリがない授業からの脱出方法

授業にメリハリがないと練習がだらけてしまったり、発話練習の声がなぜか小さくなって終わってしまったりします。

授業に強弱があると、学習者の集中力も持続しやすくなるので、授業にメリハリをつけることは大切です。

では、今すぐにできる授業のメリハリのつけ方をご紹介します!

メリハリのつけかた 7パターン

①ひとつの練習量を減らし、練習パターンを増やす

同じレベルの練習問題を10題するより、レベルが同じでも、5題ずつ違う問題をするほうが、気分が変わりますよ。

例えば、カードを使って「て形」への動詞変換の練習をするとき。

「食べます」→「食べて」

このように「ます形」から「て形」変換への練習を10題するよりも、「ます形」から「て形」を5題、「て形」から「ます形」への変換を5題するほうが気分が変わります。

少し難易度はあがりますが、文字カードで5題、動詞のイラストカードで5題するのも、いいですね。

たくさん練習方法が浮かばないという方はSenSeeMediaの別記事、

単調な練習方法から脱出!発話中心の教科書問題を解くだけじゃない練習方法とは!?

で練習方法を紹介しているので、参考にしてみてください。

②授業内容が変わるとき(導入から練習に移るときや、練習1から練習2に移るとき)

「はい!今から〇〇をします」とはっきりと大きな声で知らせる。
手を「パンッ!」と叩きながら言うのもアリ

私たちもチャイムがあるから、オンとオフが切り替わることってありますよね。着ている服でオンオフが切り替わるときもあります。そんな感じで授業中にもちょっとした掛け声や音を取り入れてみてはどうでしょうか?

③今している活動内容を黒板やスクリーンに表示する

黒板やスクリーンに活動内容を表示すると、学習者は教室の前を見るだけで、何をしているのかがわかります。「え?今、何をしているの?」と戸惑う時間がないだけで、テキパキ動けます。

それに、活動内容を視覚でも知らせることによって、ぼーっとしていて授業に取り残されてしまった学習者を救出することもできます。

④場面によって、教師の声の大きさやトーンを変える

教師が小さい声で話すと、なぜか静かに話を聞いてくれる確率が高いのです。お試しください。声があまり大きくない、声が通らないといった教師の方には特にいいんじゃないかなと思います。

⑤視覚教材を増やす

ずっと下を向いて外国語を見ていると、高確率で眠くなります。眠くなり、だらける…という悪循環を取り除きましょう!

「外国語(日本語)を見る」より、視覚教材のほうが刺激的ですよ。

⑥教師の動きを増やす

教室の前を左右に行動きながら話したり、机と机の間を歩きながら指示を出したりしてみてください。

この方法、私の授業を見学した同僚の方から好評でした。

教師の教室内での動き方については別記事でも取り上げるので、興味のある方はチェックしてみてください。

⑦笑いを取り入れる

学習者がだら~っとしてきたなぁ、というときに1・2分でも気分転換できる活動。ちょっとした話題があると、集中力を取り戻すことができますよ。

どんな活動がいいのかわからない、という方はこちらの記事もチェックしてみてくださいね。

用意した練習ができないときの対処法

同じレベルのクラスでも、AクラスではうまくできたのにBクラスではうまくできない。そんなことはよくあることです。そんなときに考えられる原因は2つ。

  • 練習レベルが学習者に合っていない
  • 練習内容が学習者に合っていない

練習ができない理由はこの2つであることがほとんど。

練習レベルが学習者に合っていない」ときは、学習レベルを1ランク低くしたり、学習者の得意分野の練習から始めてみるとうまくいくことが多いです。

具体例としては

・中級レベルの筆記能力があるなら、初中級レベルくらいの筆記練習から始めてみる。
・口頭練習がうまくいかないなら、文字を目で追いながら発話練習をしてから、口頭練習をしてみる

といった感じです。

練習内容が学習者に合っていない」ときは、学習者が求めている日本語能力や例文を考え直し、練習に取り入れると効果的です。

日本企業で働くことを目的としている学習者には、会社でありそうなシチュエーションでの練習。趣味で日本語を勉強しているなら、学習者の趣味に合わせた例文などを用意してみてください。

まとめ

今回は

  • 学習者の授業中の母語使用
  • 授業にメリハリがない
  • 用意した問題がうまくできない

以上の3つの問題の解決策をご紹介しました。

個人的には教師が知らない言語を勉強してみるのも、教師としてのスキルアップになると思っています。

自分が外国語を勉強しているときに、母語を使ってしまうときってどんなときでしょう?勉強していても、“ダラ~”としてしまうときや、うまく練習できないとき。そんな状況を実際に体験してみるのも、貴重な体験になりますよ。

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